第24話


俺はリーダーに剣を構えながら言った...。


「何言ってるんだお前ら?俺はただ、お前らのボスがどこに居るのか聞いただけだけど?」



するとリーダーは顔を真っ赤にしながら叫んだ。



「このクソガキがぁ!!お前ら!こいつも奴隷商行きだ!やっちまえ!!」



そう言うと、盗賊団5人は一斉に俺に襲いかかってきた...。



(そう...俺が決めた事は、こいつら盗賊団を根絶やしにすること...。そして俺の大事な友達をあんな風に言った事を必ず後悔させてやるっ...!!)



俺はスキル:空間把握サーチで奴らの動きを読み、一気に身体を回転させて、全員の手に持っていた武器を破壊した...。



「クッ......こいつ...!!!」



5人は衝撃で少し怯み、後ろへ下がった。



(にしてもこいつら、俺も奴隷商行きとか言ってたけど...。まさか剣聖の弟子を生け捕りにしようなんてな...。)



「お前らごときに剣はいらないな...。それに、俺の友達を侮辱したらどうなるか...その体に教えてやるよ。」



俺はリーダーを挑発しながら剣を納めた。



(さすがに殺しはしないが、少し痛い目は見てもらうぞ。)



「......クッソ!!舐めるなよクソガキがぁ!!!おい、お前ら!」



そう言うとリーダーはナイフを取り出して後ろに下がり、4人は拳を構えて一斉に襲い掛かってきた...。



(魔法はなしか...それとも至近距離じゃ使えないのか?)



俺は4人の攻撃をかわしながらリーダーの様子を見た。



(なるほど...どうやら、俺の生け捕りはあきらめて、結界を消す為に確実に俺を仕留めようってことか...。恐らく、こいつらの誰かに俺を捕まえさせて、その隙にあのナイフで刺すってところか...)



「それなら...。」



「このっ......!!!!」



俺は殴り掛かって来た一人をすれすれでかわしながら足をかけ転ばせた...。



「クソッ......!!!」



(よし、次のが来ないうちに...!!)



『スキル:ラッシュステップ』



俺は瞬発力をスキルで上げ、同時に襲い掛かって来た3人を体術で流れるように倒した。



(あと二人...)



「このっ...!!!」



俺がリーダーに振り向いた瞬間、体勢を立て直していた1人に後ろからホールドされた...。



(受け身を取られてたのか...。)



「いいぞぉ!!!そのまま捕まえてろっ...!!!」



リーダーはそう言うと、ナイフを構えたまま突っ込んできた...。



(まるであの時みたいだ...。だが...)



「しねえぇぇぇええ!!!!!!!」



(今の俺には、イリアさん達のお陰で身に付けることが出来た力がある...。だから...次こそは、誰かだけじゃなく...自分自信も!しっかり守らないとな...!!)



『スキル:ビルドアップ』



俺はナイフで突進してくるリーダーが自分の間合いに入ったところで頭を後ろに振り、背後の奴の顎に後頭部で頭突きを食らわせながら、前方のリーダーの腹側をそのまま駆け上がり、顔面を踏み込んで後方宙返りを決めた...。



「うがっ...!!!!」



その後、ホールドしていた奴の背後を取った俺は、すかさず男の最大の急所である場所を背後から蹴り上げ、そいつを沈めた...。



そして、一度怯みはしたものの、尚も正面からナイフで突っ込んでくるリーダーに、俺は重く強烈な前蹴りをお見舞いした...。



「ふんっ...!!!!」




「どっわぁぁぁっ......!!!!」



リーダーは俺の足がめり込んだ衝撃でナイフを離し、そのまま勢いよくふっ飛ぶと、背後にあった木々のうちの1本に背中を強く打ち付けて止まった...。




「ふぅーっ、こんなもんかな...。」




俺はスキルを解いて周りに倒れている奴らを見渡した...。



(一応かなり手加減はしたけども.........。うん!誰も死んでいないようだな...。いや~師匠と以外の戦闘は初めてだったから正直心配だったけど...まぁ、俺もデニスも無事だったし、よしとしますか!!)



すると、御者台にいるデニスが興奮気味に言った。



「さすがはレイドだよ...!あの2人に鍛えてもらってたのは知ってたけども...まさか

魔法を使わなくてもこんなに強いなんて...!!」



「あはは、ありがとうデニス...実はオベロン...いや、師匠には剣以外に体術も教わっててさ。」



そう言うと、デニスは御者台から降りて俺の側に来た。



「そうだったんだ...!あ、そうだ...。それはそうと、ありがとねレイド。その...僕を庇ってくれて...。」



どうやら、さっきのやりとりはデニスに筒抜けだったらしい...。



「やっぱり...人間族とは対等になろうとしちゃいけないのかもしれないね...。」



デニスは、少し暗い表情で申し訳なさそうにしている...。



(そりゃあんな風に他人から言われたらこうなっちゃうよな......。)



俺は俯くデニスの肩に手を置いて、励ますように言った。



「気にするなよデニス、俺達はもう対等な関係じゃないか!それに俺は、人間族だけども...他の種族とも仲良くしたいと思ってるよ。」



そう言って軽く方を叩くと、デニスは嬉しそうに頷いた。



「そうだね...!僕らは対等な『友達』だもんね!僕、レイドが友達で本当に良かったよ!」



「あぁ...。俺も初めての友達がデニスで良かったと心から思っているよ!」



「うん、ありがとう!」



(どうやら元気を取り戻したみたいだな...。にしても、こいつらどうしようか...。)



俺はデニスに聞いてみることにした。



「なぁデニス?こいつらってこのまま放置しててもいいものなのかな?」



するとデニスは不安そうな表情で言った...。



「そうだね...。もし、こいつらに国から懸賞金が掛かっていれば、その国まで連行して引き渡せばいいんだけど...。」



「その為には一度街で懸賞金が掛けられてないか確認しないとか...。」



「うん...。それに正直連れていくにしても、数が多いから僕の荷車には入れられないし...縄で縛って歩かせるにしても、その分街につくまで時間がかかっちゃうよ...。」



(うーん、俺的には街でやりくりするお金も欲しいではあるけども...。デニスも商人の仕事で街には早く着きたい筈だしな...。)



俺はしばらく考えてから、一応デニスに確認してみた。



「デニス、一応聞きたいんだけど...こいつらってこのまま見逃しても大丈夫なのかな...?」



するとデニスは少し考えてから言った。



「そうだね......まぁ、もう僕たちを襲って来ることはないだろうし、この道を使う人は少ないと思うよ!」




すると、気を失っていたリーダーが目を覚ました。



「うっ......うう......。」




(と言う事は、このまま見逃しても俺達以外の人がまた襲われる可能性があるのか...。)



俺は何か丸く収まる手はないかと考えてみた...。

すると、デニスが爪を出してから俺に言った。



「まぁ、最終手段としては殺して動物達の食事になってもらうのが一番だけど...?」




「えっ...?ちょ...!待って、待ってくれデニス...!!」



俺は驚きながらもとりあえずデニスを止めた。



「あはは、冗談だよレイド!これはあくまでも最終手段だから!」



そう言うと、デニスは爪を引っ込めてくれた...。



(デニスもこんなこと考えるんだな...って、今は驚いてる場合じゃない!早く良い手を考えないと...。)



すると、俺はふとさっきのやり取りを思い出した...。



(そう言えば、こいつらのアジトってベルディオンの国境の近くって言ってたよな...。)



俺はその情報を元に、こいつらがここで悪さが出来なくなる策を思いついた...。



「よし、閃いたぞデニス!!」



「一体こいつらをどうするのレイド?」



俺は自信満々な表情でデニスに言った。



「フッフッフ...。こいつらにはこの辺りで誰も襲わないように釘を打っておこう...。」



そう言うと、俺は早速リーダーの元へと向かった。



「うっ...ううぅ...。」



「どうやら意識が戻ったみたいだな。」



俺が声を掛けると、リーダーは目を見開いて恐怖の表情で震えた。



「お、おお、お前...一体何者なんだ!?」



そう言って慌てるリーダーに俺は冷静に答えた。



「俺か?俺は賢者と剣聖オベロンの弟子だ。」



するとリーダーは一瞬固まった後に、さらに恐怖で顔を歪めた...。



「う、嘘だろ...。じゃあ、あの噂は本当だったのかよ...。」



(ん...?噂......?)



俺は少し気になったのでリーダーを問いただしてみた。



「おい、噂ってなんだ?」



するとリーダーはあっさり答えてくれた...。



「あ、あぁ...デオルトって街で獲物の情報を集めているときに、冒険者どもが話してるの偶然聞いちまったんだよ、『あの剣聖が弟子を取って街から出て行った。』って...。」



「何、師匠が!?一体どっからそんな情報が...。」



(師匠は確かデニスと一緒に来た筈...。それにセルロン商会は王都にあるからデオルトには...。って、あれ...?そう言えば師匠と初めて会ったとき、ついでに拾ってもらったとか言ってたような......。)



俺は一応デニスに確認してみた。



「デニス?師匠ってデニスが竜車で拾って来たんだったよな...?」



するとデニスは不思議そうな顔で言った。



「え?あ、うんそうだよ!賢者様の手紙をギルドに渡した後、剣聖様から僕宛に手紙が届いてね。『俺は今デオルトに居るから、イリアの所に行く途中でついでに拾ってくれ。』って。」



(あれ...。もしかして...。)



するとボロボロのリーダーが言った。



「そんで俺達も剣聖が街から離れるならチャンスだと思って、確かな情報を得るために仲間のこいつらを使って確かめたんだよ...。そしたら剣聖は、ギルドで手紙を読んだ後に、周りの奴に『弟子が出来るから街を離れる!』って嬉しそうに言い回ってたって......。」



(クソっあのおっさん...!!確かイリアが手紙を渡す時に『極秘』って言ってたのにっ...!!!)



「なるほどそう言うことか......。」



(つまり、街で俺が剣聖の弟子とバレたら、周りから変な注目が集まって、目立ってしまうと言う事か...。)




俺がため息をつくと、リーダーが言った。



「それで...?お、俺達はどうなるんだ...!?」



(まぁ、このことを先に聞けて良かったではあるか...変に注目されると今後の旅にも影響が出そうだし...。)



俺は気を取り直してリーダーに言った。



「あぁ...。お前には2つの道がある。」



「そ、それは一体...?」



リーダーは固唾をのんだ...。



「ここで死んで、仲間もろとも森に住む動物達の餌になるか、俺の出す条件を飲んで仲間たちとここから帰るかだ...。」




するとリーダーは慌てて待ったをかけた...。



「待ってくれ...!それだと条件を飲んだとしても、俺達はこの怪我じゃここからは動けねぇ...!!それじゃどの道死んじまうじゃねぇか...!!!」



(む...。確かにそれもそうだ......なら。)



「心配するな、ほれ。『治癒ヒール』」




俺はとりあえず、リーダーにヒールをかけた。



「こ、これは......!!!!」



リーダーはみるみる癒える傷を眺めたあと、元気になった体を確認して驚いていた...。



「どうだ?これなら問題ないだろう?もちろん条件を飲むなら他のやつの傷も治してやる。」



俺がそう言うと、リーダーは俺の顔を見て言った。



「わかった...。俺達の命が助かるってんなら、どんな条件でも飲ませてくれっ...!」



そう言うと、リーダーは俺達の前で土下座した...。



(なんだ...こいつ仲間の為に土下座もできる男じゃないか...。案外、根は悪くはないのかもしれないな。)



「分かった、なら条件を話す前に全員を治そう。」



(まぁ、こいつの説明漏れも心配だし、それに誠意は受け取ったんだ、ここは全員起こして聞いてもらう方がいいだろう...。)




と言う訳で、俺は気を失っている他の奴にヒールをかけて起こし、リーダーの元へ集めた...。



「ではお前たち。これから条件を話すからよく聞けよ。」



俺はまず、こいつらのボスが国境近くの山に居る事、そして俺が剣聖の弟子である事を話した...。

そして、そのうえでもし条件を破った場合、こいつらのボスとアジトを必ず潰しにいくと念を押したうえで、2つの条件を出した。


まず1つは、この道を通る商人や街の人などの力のない一般人を襲わないこと...。

そして2つ目は、俺が剣聖の弟子であることをこいつらの一味以外に決して漏らさないこと...。


「以上だ、必ず守るように...もし、俺の耳にこの条件を破ったととれる事が入れば、俺は直ぐにでもアジトに出向くからそのつもりで...。」



そう言って俺が全員を睨むと、盗賊団は怯えながら返事をした。



「よし、ならもう行っていいよ!もう会わないことを祈ってるよ。」



俺が笑顔で言うと、盗賊団は謝罪の言葉を吐いて一目散に帰って行った...。




「お疲れ様レイド!これでもう安心だね!」



「そうだ...な。」



(まぁ、あれだけ釘を刺したんだし、もし破ったらマジで潰しに行こうっと...。)



「さぁ、レイド!僕たちも行こうか!」



デニスは笑顔でそう言うと、軽い足取りで御者台に乗り込んだ。



「あぁ、午後も装置は任せてくれ!」



こうして俺達は、竜車に乗り込み目的地に向け出発したのだった。





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(仮)どこにでもあるありふれた異世界転生物語。 74。 @roki_roki

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