第23話


それからしばらく進んでいると、デニスが首をかしげ、魔鉱石を確認しながら言った。



「ところでレイド?かなり魔力を流したみたいだけど、身体のほうは大丈夫?」



「え?別に大丈夫だけど...どうしたんだ?」



するとデニスは不思議そうに言った。



「いやぁ、装置を発動してから結構経つのに光が全然収まらないからレイドの魔力量が気になってね...。」



俺も魔鉱石に目をやると、魔力を流した時と同様に眩しいほど光っている。



(これって光の強さで発動の残り時間が分かるようになっているのか...。)



「魔力はまだまだあるから心配ないよデニス。それよりも魔力を流し過ぎたみたいでごめん...。」



するとデニスは笑いながら言った。



「別に謝ることないよレイド!おかげで僕は魔力を温存できるし、それにまだまだ先は長いから、魔力切れになってないならそれでいいんだ。」




「ありがとう。俺はこの通り!全然平気だから、心配ないよ!」



俺が笑顔で言うと、デニスが言った。



「にしても、レイドは魔力量が多いんだね!」



(まぁ...俺の場合は魔素=魔力だからな...。)



俺はせっかくなのでデニスに聞いてみることにした。



「そうなのかな...?ちなみに普通の人ってどのくらいなんだ?」



「うーんと...そうだなぁ...。あ!そうだ!ちょっとこれ持ってて!」



デニスはそう言って俺に手綱を渡すと、後ろの荷台へ移動して木箱を探り始めた...。



「確かここに...っ。あった!!」



するとデニスは木箱から透明な水晶玉を取り出し、御者台へと戻ってきた...。



「それは...?」



「これは、触れた者の魔力量を光の大きさで量る魔水晶って言う商品だよ!見てて...」



するとデニスの手のひらの上にある魔水晶の中に小さな光の玉が現れた...。



「おぉ!中心に光の玉が出てきた!!」



「これが僕の魔力量で...大体街に住んでいる普通の人達と同じくらいかな!これより一回り大きい人は冒険者や騎士なんかを目指す人が多いって聞くよ!一応、冒険者ギルドでも触ると思うけどせっかくだし、レイドも量ってみる?」



(これは、いい機会だ...!街で浮いた存在にならないように今の内に魔力量の調整ができる...!!)



「やりたい!触れるだけでいいんだよな?」



「そうだよ!手の平に乗せてみて!」



俺はデニスに手綱を返し、魔水晶を受け取った。



(よし、一度体内の魔力を空にして...。光の具合を確認しながら魔素を魔力に変換っと...。)



すると、魔水晶はゆっくりと光始めた...。



(いいぞ...。後はデニスの光の2倍の大きさを目指してっと...。)



魔力量を調整していくと、光は少しづつ大きくなっていった...。



(よし。こんなもんかな...。)



するとデニスが驚きながら言った...。



「凄いやレイド!あれだけ魔力を使った後なのに、まだ僕の2倍の魔力が残っているだなんて...!!」




「え...?」




どうやらこの魔水晶と言うものは、触れた者の現時点の魔力量を量るらしく、俺はそんな事を知らずにただデニスの2倍を目指していたのだった...。




「これなら冒険者にはすぐなれちゃうし、もしかしたらランクも最初から上げてくれるかもしれないね!」




「へ、へぇ...そうなんだ。や、やったー」




こうして、少し予想外のこともありはしたが、おかげで俺は一般的で普通の魔力量がどれくらいなのかを知ることが出来たのである...。




それからも竜車は走り続け、気づけば太陽は真上まで来ていた...。



「あ、レイド見て!ようやく君の流した魔力が尽きそうだよ!」



そう言われて魔鉱石を見ると、光がだんだんと弱くなり浮いていた車輪がゆっくりと地面に当たりはじめた...。



「ちょうどいいから、この辺りで休憩にしようレイド!」



「分かった!」



そう言うとデニスは走竜たちに合図を送り、速度を落とした。



(やっと休める...!流石に座りっぱなしで身体が硬いな...。)



デニスは道の外れに竜車を止めた。



俺は張りっぱなしだった結界を解除し、竜車から降りて固まった身体をほぐした。



「あ、レイド!僕は荷台から食料を取って来るから、これを使って先に水をこの子たちにお願いできないかな?」



「もちろん構わないよ!」



俺はデニスから渡された容器を2頭の前に置いて魔法で水を出してあげた。



「2頭共、お疲れ様...この後も引き続きよろしくな!」



すると2頭は返事をするように鳴き声を一つあげてから仲良く水を飲みはじめた。



するとデニスが荷台から少し重そうな布袋を出してきた。



「下ろすの手伝うよデニス!」



「ありがとうレイド、少し重たいから気をつけてね...!」



俺は袋を受け取り、地面に下ろした。



「この中には何があるんだ?」



するとデニスが荷台から降りてから言った。



「これはこの子たちと僕たちの食料だよ!」



そう言って袋を開けると、中には沢山の干し肉が入っていた...。



それから俺はデニスの指示で袋を走竜の前まで移動させ、2人で干し肉を食べながら2頭にも食べさせた。



その後、俺たちは食後の休憩を取っていた。



「デニス、今ってどの辺なんだ?」



俺が地図を眺めながら聞くと、デニスが隣から覗き込んで言った。



「えーっとね...ここがこうでこうだから...」



そう言うと、デニスは喜びながら指を差した。



「今、僕たちが居るのはここだよレイド...!それにしても凄いや...レイドとこの子たちのお陰で予定よりかなり早く進んでるよ!!」




「そうなのか...?」




「うん!この調子なら、明日の夜には目的地に着くと思うよ!!」




「本当か...!あ、でも走竜たちの負担とか大丈夫なのか...?」




「この子たちは大丈夫だよレイド!むしろ普段は僕の魔力が少ないばかりに、あまり走らせてあげれてなかったんだけど...ほら、この子たちを見てごらんよ!」



そう言われ2頭に目をやると、2頭ともやる気に満ちた眼差しをしながら鼻息を鳴らしてこちらを見ている...。



「......よし。ならここからも行けるだけ行ってみようか!」



「そうだね!なら、そろそろ出発しようか!頼んだよレイド!」



「任せてくれ!」



こうして俺達は出発しようと竜車に乗り込もうとした...。


すると突然、走竜たちが辺りを警戒しだした。



「待ってレイド......何か聞こえる...!!」



それと同時に、デニスも何かに警戒し始めた。



(なんだ...!?なにが起こってるんだ...?)



俺もすぐに警戒態勢に入り、いつでも剣を抜けるように構えながら、スキル:空間把握サーチを発動した...。



(この魔力の形は......人だ...!!!数は...5人...。マズイ...囲まれてるな...。)



その謎の5人は、竜車を挟み込むように茂みに隠れている事が分かった...。



「まずいデニス!すぐに御者台へ!」



そう言うとデニスは直ぐに御者台へ上った...。



「結界発動...!」



そして直ぐに、俺は竜車と走竜たちを守る為に結界魔法を発動させた...。



その瞬間、風を切る音と共に1本の矢が正確に俺を狙って飛んできた。


しかし、間一髪のところで結界魔法を発動できたお陰で、矢は弾かれ砕けながら地面に落ちた...。


すると、不意打ちに失敗した奴らが茂みから姿を現した...。



「おいおい...まさか今のを凌ぐとはな。」



その声を皮切りに、気色の悪い笑い声を垂らしながら出てきたのは見るからに柄の悪い5人だった...。


すると、そいつらを見たデニスが俺に言った...。



「気をつけてレイド、あいつら盗賊団だよ...!!」



「えっ...!?盗賊団って、あの山に拠点があるとか言ってたやつか...?」



「多分そう...あの正面に居る奴の恰好...。商会の仲間達から聞いたことがあるんだ...。」



「そうなのか...他に情報はないのかデニス?」



「えーっと...。そうだ、確か盗賊団は魔法を使うのが苦手って聞いたことがあるよ...!」



(魔法が苦手か...。つまり魔力量は少ないから、近接のスキル重視ってとこか...。)


「わかった...!竜車には俺の結界魔法を発動しているからこの範囲からは出ない様にしてくれ。後は俺がどうにかしてみるから、念のためいつでも走らせられるよう準備はしていてくれ。」



そう言うと、デニスは緊張した表情で言った...。



「うん...気を付けてねレイド...。」



俺はまず、竜車を囲んでいるやつらを引き付ける為に結界から出てリーダーらしき人物の正面側に立った。



「あん?よく見たらまだガキじゃねぇーかよ、なんだお前?冒険者か?」



「いや、俺はまだ冒険者じゃない。これからなる予定ではあるけど...。」



すると隣の仲間Aが寄ってきて言った。



「へへっ、最近獲物が少なくて遠くまで来てみたけど俺ら幸運でしたね兄貴!」



「ふっ、そうだな。まさか竜車も付いてしかもありゃ獣人だ...こりゃボスが大喜びするぜ。」



すると仲間Bもリーダーの側に寄ってきた。



「けどよ兄貴...この竜車なんか変ですぜ、なんか膜みてぇなのに覆われてて回り込んでたやつらもほら...」




Bがそう言うと、竜車の後ろの方から声が聞こえた...。



「なんだこれ!?剣で叩いてもビクともしねぇぞ!!」



「あぁ?んなわけねぇだろ馬鹿が......ってあれ?本当じゃねぇか。兄貴っ...兄貴ーー!!どうなってんすかねーこれ!!」




すると、正面にいるリーダー達が俺に近寄りながら言った。



「ハッ、なかなかやるようだなガキ。あれ...お前がやったんだろ?」



俺はあえて挑発するように言った。



「そうだと言ったらどうするんだ?言っておくけどあの結界はお前らの魔法でも突破は出来ないと思うけど?」



するとリーダーは大声で笑ってから言った。



「ハッハッハ!舐められたもんだな俺達も、ならこう言うのはどうだクソガキ...。おーい!!!お前らもこっちに来い!!!!」



そう言うと、竜車の後ろに居た残りの2人が返事をしてリーダーの元に来た...。



(よし、これで竜車の包囲は解けたな...。後はこいつらをどうするかだけど...。)



「さてクソガキ...今、大人しくあの獣人と竜車を渡すなら命は助けてやる...。金に困ってるってんならあいつを帝国の奴隷商に売り飛ばした後に少し金だって分けてやるぞ?」



リーダーはそう言って仲間に顎で合図を出し、俺は5人に囲まれた...。



「..................。」



俺はこのクズ共の言葉に怒りが沸いてきた...。



「なぁ...冒険者じゃねぇってんなら別に護衛として雇われたわけでもねぇんだろ?商人なんて金のことしか頭にねぇ...ましてやあいつは獣人だ、どうせ俺ら人間族とは対等にもなれねぇ存在、それに見てみろよ...現に今だってお前がピンチなのに助けにも来やしねぇ...。」



「..................。」



俺は込み上げてくる殺意を抑えながら黙ったまま魔素を集め始めた...。



「そうだ坊主、なんなら俺らの一味に入らねぇか?お前のあの魔法があれば、俺らの団は最強になれるぜ...。ボスには俺から紹介してやるからよ、どうだ?」




俺はゆっくり口を開いた。



「それで?.........そのボスはどこに居るんだ?」



すると盗賊団は喜びながらリーダーが言った。



「おぉそうか、分かってくれたか兄弟!俺らのボスはこっから西のベルディオンの国境近くの山の麓の拠点に居る。さぁ、あいつらと持ち物を手土産にして一緒にボスんとこ行こうじゃねぇか!」




「そうか......わかった。」



そう言って、俺はゆっくりと剣を抜いた。



するとそれを見たリーダーが慌てて言った。



「おい、こりゃどう言う事だ...!?」



「お前...!兄貴の仲間になるんじゃなかったのかよ...!?!?」



Aがそう言うと、俺を囲む残りの奴らが一斉に武器を構えた。









































































































































































































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