第21話
「よし...!荷物はこれで最後だなっ...。」
俺は最後の荷物を運び、走竜たちに上げる為の水を汲みに行った。
「おはよう2頭共。」
走竜たちにあいさつをしてから桶を2つ置いた...。
「実は今日からしばらく荷台に乗せてもらうことになったんだ。だから少しの間よろしくな2頭とも!」
俺はそう言って2頭の額を優しくなでた。
すると2頭は互いに顔を合わせ、俺が言ったことを理解したかのように嬉しそうに鳴いてくれた。
こうして水を飲む2頭の様子を見ながら振り返ると、2人はデニスと一緒に荷台の方へと周っていた。
「おぉ、良いじゃないかデニス...」
「うむ!問題ない!さすがデニスだ!」
「いえいえ!これからもどうぞ贔屓にっ!」
すると後ろの荷台の方から3人の声が微かに聞こえて来た。
(そう言えば師匠が旅立つ前に贈り物があるって言ってたけど...。)
俺は2頭が飲み終わった桶を持って、井戸へと向かった。
桶を片付け終わると、ちょうど師匠が俺を呼んだ。
「おーいレイド!こっちに来てくれ!」
「あ、はい!今行きます!」
こうして3人が居る荷台の後ろへ行くと、師匠が新しい剣とナイフベルト。そしてイリアは見るからに良い素材で作られただろうフード付きのロングコートを手に持っていた。
「待たせて悪かったなレイド。これは俺からの贈り物だ受け取ってくれ!」
「ありがとうございます師匠!早速付けてみますね!」
俺は手早く装備を付けた。
「ベルトも硬すぎずしっくりくる...。剣も重すぎず丁度いいです師匠!」
すると師匠は申し訳なさそうに言った。
「すまんなレイドよ...本当は俺が昔使ってた剣を贈ろうと思ったのだが...あれはちと目立つし剣目当てでお前が盗賊に襲われても嫌だったのでな...だが心配するな!その剣だって見た目は地味だが、素材は良い物を使っているからな!旅の役には立てるだろう。」
「いえ!とんでもありません師匠!いただいた剣は、俺の相棒として大事に使わせてもらいます!」
礼を言うと、イリアはコートを広げ俺の後ろに周って言った。
「私からはこれを贈ろう。さぁ、着てみてくれ。」
俺は流れるままに袖を通した。
「すごい...ほとんど重さを感じないのに、生地はしっかり厚みがあって......あれ...?かすかに良い匂いがする...。」
するとイリアは少し恥ずかしそうに言った。
「あぁ、これは50年程前...まだこいつと出会う前に私がドワーフ族の者に作らせた装備なんだよ...。」
「え、えぇー!!!これ、イリアさんが使ってたやつなんですか!?あぁ!す、すいません俺!失礼なことを...。」
俺はすぐに匂いを嗅ぐのを止めた。
するとイリアは咳払いを一つしてから言った。
「いや、構わないさレイド。確かこの装備は魔力を通しやすく、傷も付きにくいとドワーフは言っていたぞ。私もそれなりに使っていたが、あいつが言っていたことは嘘ではなかったからな、是非ともお前の旅に役立ててくれ。」
「ドワーフ族が作った装備...。こんな貴重な物まで...本当にありがとうございますイリアさん。」
俺はイリアに深々と頭を下げた。
「よせレイド、私にはもう使わない物だ。」
するとイリアは思い出した様に言った...。
「そうだレイド、忘れるとこだったがこの手紙をギルドに持っていくといい...。」
そう言うと、イリアは俺に手紙を渡した。
「あ、はい!ありがとうございます...。」
するとイリアは手紙について教えてくれた。
「いいかレイド、この手紙は言わばギルドへの紹介状だ...さらに、念のためにレイドの身元は私が保証するとも書いてある。だから絶対に無くさずに持っておいてくれ...それともし街に入るときに兵士に怪しまれたときもこの手紙をみせるといい。」
「はい!分かりました...!」
俺はどこか安全にしまえる場所はないかとポケットを探し、装備の胸の後ろにあった内ポケットを見つけ、大事な手紙をそこへしまった。
すると、軽く鞭を打つ音が聞こえデニスが竜車を旋回させた...。
「レイドー!そろそろ出発しますよー!」
そう言ってデニスは御者台に座ったまま手を振っている...。
「達者でなレイド。何かあれば私はここに居るからいつでも帰って来い。」
イリアはそう言って、俺の肩に優しく手を置いた。
「はい。それでは...行って来ます!イリアさん!」
こうして、俺は二人に見送られながら旅に出たのだった。
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