第18話
家についてからは昼食まで、各自好きに時間を使った。
俺は部屋に戻り、旅に思いを馳せながらデニスからもらった地図を机に広げて座った...。
(旅か...まずはどこを目指そうかな...。)
俺はデニスから教えてもらった国々の特徴を思い出しながら考えてみた。
(やっぱまずは仕事だよな...けど、旅の妨げになるのは嫌だけど、装備や消耗品を考えるとお金は安定して欲しいよな。)
俺は地図の上の国を見た...。
(となると、『冒険者』になるのが安定だな...。一度登録してしまえば、世界中にある『冒険者ギルド』から依頼を受けれるし、前世で言うところの日雇いや短期バイトみたいなものだよな...。)
「自由国家ベルディオンか...。確か冒険者の街もあるし、王都には冒険者ギルドの本部もあるって聞いたな...。」
俺は現在地から、ベルディオンの冒険者の街を探した...。
「......お、あった!冒険者の街『デオルト』」
(冒険者か...そう言えば師匠が前に「荒くれ者も多い」って言ってたっけ...。)
俺が元々別の世界から来た事を2人に話した後、2人は俺が居た世界のことが気になったようで、俺はこの世界との違いを教えた。
そして、話の中で2人はこの世界との違いも色々と教えてくれたのだった。
(しかも前の世界とは違って、実力主義の弱肉強食...。強い者は崇められ弱い者は虐げられる...。まぁ、前の世界も似たようなところはあったけど、なんせこの世界では他人の命が軽すぎるんだよな...)
(強盗、脅迫、殺人、暗殺...暴力なんて日常茶飯事みたいだし...もちろん警察なんていないしな。自分の身はしっかり自分で守らないと...)
俺の心は楽しみ半分不安半分と言った感じになっていた...。
すると師匠の呼ぶ声が聞こえて来た。
「おーいレイド!イリアが昼飯だとよ!」
「はーい!今行きます!」
俺は地図を片付け、2人の元へと向かった。
昼食後...3人で雑談していると、ふと師匠が言った。
「そういえばレイド、旅立ちはいつにするか決まったのか?」
「いえ、最初に目指す場所は決まったんですけど、まだいつ発つかまではまだ...。」
そう言うと、イリアが言った。
「ほう?それでどこを目指すんだ?」
「えっと、まずはベルディオンの冒険者の街に行こうかと。」
すると師匠が言った。
「おぉ!デオルトを目指すのか!あそこは活気もあるし、色んな種族も多い!」
すると今度はイリアが言った。
「デオルトを目指すってことは、冒険者になるのかレイド?」
「あ、はいそうです。今後色んな国を旅したいので収入源になればなと...。」
「そうか、それは良い考えだな...。ふむ、ならばギルドに行った際に円滑に登録ができるよう手紙を用意しておこう。」
「え、そんないいんですか?」
「あぁ、あそこのギルドマスターとは面識があるからな。」
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
すると師匠が言った...。
「それならレイド、俺からも何か贈り物を用意しようじゃないか!」
「え!?師匠まで...!?」
「なに、可愛い弟子の門出なんだ、これは師匠としての責務でもあるからな!遠慮は失礼に値するぞ?ハッハッハ!」
(まぁ、旅に出たらしばらくは2人と会えなくなるからな...いいか...。)
「わかりました師匠!弟子としてしっかり頂きたいと思います!」
すると師匠は喜びながら言った。
「よし!それなら来週のデニスが来る日まで待ってくれ!それまでには用意しよう!」
(それなら、その次の日には旅立つとしますか!)
「わかりました!では俺はその次の日に旅立ちたいと思います!」
こうして俺の旅立つ日が決まったのだった...。
そして午後、2人からはもう教えることは全て教えたからと、旅立つまでの間自由に過ごせば良いと言われたので、今日はゆっくりと過ごすことにしたのだが...。
(うーん、暇だな...。)
俺はベットに横になり天井を見ていた...。
(旅か...。あ、そうだ!今のうちに、旅で役に立ちそうな魔法でも考えてみるか...!)
そう閃いた俺は早速外へ向かった。
(水は大丈夫で...火も起こせる...あと必要なのは...。)
俺は旅をしている自分を想像し、これまで学んだ魔法を生かしていくつかの『オリジナル魔法』を編み出した...。
(まぁ、旅とは言え街に着くまでは実際サバイバルだしな...。でもそれはそれで楽しみなのも事実なんだよなぁ...前世の俺じゃ絶対嫌がったはずなのに。)
前世とは明らかに変化しつつある自分に『成長』を感じ、俺はなんだか久々に『自己肯定感』に包まれた気がした...。
(そうだ、イリアさんに『回復魔法』と『結界魔法』の仕組みを聞きに行ってみよう...!もし習得出来ればこの世界でのサバイバルも安心して楽しめそうだ!)
俺は早速、家へと戻りイリアの仕事部屋をノックした...。
「イリアさん居ますか?レイドです!」
すると中からイリアの声がした。
「あぁレイドか、入っていいぞ。」
俺は扉を開け中に入った。
「どうしたんだ?何か用か?」
「はい、実は教えて欲しい事があって...」
俺はイリアを訪ねた理由を話した...。
「なるほど、先を見越して動けるその姿勢...偉いじゃないかレイド。よし、いいだろう。」
そう言うと、イリアは椅子から立ち上がり、本棚から2冊の本を取り出した...。
「仕組みについては、前に教えた『魔法陣』を紐解けば理解できるはずだ。」
そう言って1冊の本を開いて俺に渡した。
「まずは結界魔法からいこう...」
こうして俺はイリアから『結界魔法』の基本を学んだ。
ちなみに以前の座学でも『魔法陣』について少し教わったことがある。
魔法陣の基本は円...これは魔力を安定して巡らせる意味があるらしい。
そしてその内側は一つの魔法につかう魔力にいくつ変化を加えるかで図形が変わると言っていた...簡単に言うと、3つの変化なら三角形...4つなら四角形と言った感じだ。
そしてさらにその内側は魔法の属性に決められた図形を当てはめ、最後は留める、飛ばす、拡散させる等の事象にまつわる図形を当てはめればこの世界の一般的な魔法は完成するんだとか。
しかし、無詠唱魔法を使える俺からすると、これらはきっと...魔法を確実に具現させるために当たり前化されたイメージの形なのだろうと思っている...。
「とまぁ、こんな感じなのだがどうだ?理解できそうか?」
イリアは説明を終え、少し心配そうに俺を見ている。
(なるほど...洞窟で見た魔法陣はこれをベースに...。でも、それをあれだけ複雑化できるってことはやっぱりイリアさんは凄いんだな...。)
「はい!理解できました。さっそく試してみます!」
そう聞くと、イリアは頷き俺から少し離れて見守った。
(まずは魔素をとりこんで魔力に変換...。そして魔力を俺の半径1メートルにドーム状に展開...。そして外からの魔法と物理干渉を拒否することを強くイメージすれば...!!)
すると俺の周りにイメージ通りの結界ドームが完成した...。
「よし、出来たっ!!」
「おぉ、やったなレイド。どれ...」
イリアは俺の結界に近づき、軽くノックをした...。
「ふむ...強度も私のと同等はありそうだ...。これなら大抵の動物や人間は手をだせまい。」
こうして、イリアからのお墨付きを貰ったところで、いよいよ『回復魔法』について学ぶことになった。
「さて、次は回復魔法だが...これはここでは難しいと思うから外で教える事にしよう。」
「わかりました!よろしくお願いします!」
と言う訳で、俺達は外へと移動した...。
「よし、まずは『回復魔法』についてだが...」
イリアはまず、回復魔法について教えてくれた...。
まず、傷を治すには怪我の状態を把握しなければならないらしく、確かめるには自分の魔力を相手の身体に流し、骨、筋肉、血管、神経などを調べる必要があるそうだ...。
そして異常を発見したら、そこに魔力を集中させ細胞を活性化、もし細胞が足りないようならば相手の細胞を魔力にコピーし代用させ傷などを塞ぐらしい。
そして気を付けなければいけないのは外から塞ぐのではなく、内側から塞ぐことだそうだ...。
理由を聞くと、内側から細胞を活性化させて塞いでいくことによって、木や石、さらに魔物や魔獣などの攻防によって入ってしまった相手の欠片などが体外へと押し出され予期せぬ事態を減らしてくれるのだそうだ。
(なるほど...これなら菌が入るのも防げるな...。)
「とまぁ、これが基本の流れとなるのだが...これだと治すのに時間が掛かりすぎて正直実戦では役にたたん...。」
(た、確かに...魔物に「待った!」も通用するはずないしな...。)
「そこで、まずはこれらの工程を短縮し、さらに使い方次第では常に敵よりも先手をとれる便利な『スキル』を教えるとしよう。」
(えっ...スキル!?)
「魔法ではなくてですか...?」
てっきり魔法を教えてくれるとばかり思っていた俺は、まさかイリアの口から『スキル』という言葉が出て来たことに驚きを隠せなかった...。
「なんだレイド?私にだって『スキル』の一つや二つ使えるぞ?」
「あぁ...いえ、すいません。イリアさんがスキルを使ってるところを見たことがなかったのでつい...。」
俺が正直にそう言うと、イリアはまるで師匠みたいに笑った後言った...。
「そうか、気づいていなかったのか。まぁ無理もない...それにスキルに詠唱はいらないからな。」
(そう言えば師匠との手合わせの時、使って来るスキルは動きで予想するしかなかったもんなぁ...)
俺は手合わせの時に、師匠が教えてくれ事を思い出した...。
(確かあの時師匠が......ってあれ?もしかしてイリアさんが俺に教えようとしてるスキルって...!!)
俺は興奮を抑えながらイリアに尋ねた。
「イリアさん!もしかしてこれから教えてくれるスキルって、イリアさんが独自で編み出したスキルですか...!?」
するとイリアは関心した様子で言った。
「感がいいじゃないかレイド。お前の言う通りこれから教えるのは私が編み出した『スキル:
「サーチ...。」
「うむ。これはオベロンがお前に教えた基礎的なスキルよりかなり繊細で複雑だと言える...。まぁ、常人であればそもそも一生を掛けても習得は出来ないだろう。」
俺の心は早く教えて欲しいとウズウズしだしている...。
「だが、無詠唱魔法を扱える君の能力なら、必ず理解し習得できると私は思っているぞ。」
イリアはそう言って俺に微笑んだ。
(イリアさん...!)
「はい!その信頼、必ず応えて見せます!」
俺が自信満々に言うと、イリアは笑顔で頷いて言った。
「では、『スキル:
こうして、俺はイリアから回復魔法の要になる『スキル:
まず、このスキルの肝となるのは、魔力を捉えそして文字通り『見る』ことだ。
そしてそれを可能にするには、魔力を脳と目に同時に集める必要があり、さらに認知機能、視覚機能を魔力で強化し、また脳と目に同時に『魔力』を認識させなければならないと言うかなり難しいものになっていた...。
(『魔力』を認識か...。ここが一番難しいんだよな...。)
もちろん、魔力の濃ゆさで強化の質も変わるが、そこは俺にとってはさほど問題ではなかった。
(魔力か...。例えば、魔素が空気だとするなら...魔力は...自分の細胞!?)
俺は試しにイメージしてみた...。
(魔力は細胞...。細胞は小さい...。小さいは...粒?)
少しだけ自信はなかったが、そのままのイメージで試しに発動してみることにした。
(失敗したって、出来るまで試行錯誤すればいいか...!!)
「よし...!『
すると、脳で何かのスイッチが切り替わる感覚がしたと同時に、イリアの中に無数の光る粒が見えた...。
「こ...これが魔力...。」
するとイリアが言った...。
「おぉ、ものにしたかレイドよ。」
(この光の砂粒みたいなのが魔力...なのか...?)
「は、はい恐らく...。」
俺が自信なくそう言うと、イリアは片手を前に突き出し、おれに手のひらを向けてから言った...。
「うむ。では試してみよう...。」
すると。イリアの中の光の粒が突き出した手の方へと流れだし、すぐに手のひらから外へと出て行くのが見える...。
「どうだレイド?今、私は魔力を外に放出しているが分かるか?」
俺は見ているものが魔力だと確信し、少し興奮気味に言った。
「はい!見えます!イリアさん...俺、魔力が見えますっ!!」
すると、イリアは少し嬉しそうに言った。
「うむ。よく習得できたな。しかし、これはあくまで通過点だぞレイドよ。」
「はい!引き続きよろしくお願いします!」
こうして俺は無事に『スキル:
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