第14話
そして翌日、俺は昨日同様の修行メニューをこなしている。
もちろんだが、今回も師匠に煽られ俺はそれにあえて全力で挑んだ。
そして昨日同様に限界まで身体を使い、師匠の背中で帰り、イリアに回復魔法を掛けてもらってから朝食を摂る。
その後はお昼まで師匠に体術の稽古をつけてもらい、またボロボロになって昼食前にイリアに治療してもらった。
そして昼食後はイリアと一緒に魔法の誤爆がないよう家から離れた場所で特訓し、日が暮れる頃に一緒に家に戻る。
今回は、師匠が湖で魚を取ってきてくれていたので、夕食は3人で食べた。
ちなみにイリアは魚は大丈夫だと言っていた。
なぜ肉は食べないのかと聞いたところ、どうやら臭いからだそうだ...。
それから約1週間...1か月...3ヶ月...と月日は流れた。
今のところ変化と言えば、体術の修行でそれなりに動けるようになってきたからと言うことで、次は反射神経を鍛える為に、師匠が指で弾く小石をひたすら避けるメニューが追加された。
しかしこれが指で弾いたとは思えないスピードで、俺は何度も当たってしまっては血を流しそのたびにイリアに回復魔法をかけてもらっていた...。
そして俺の体質の問題は未だ解決されてない...。
イリアと話し合った結果、問題は魔力を留められないことではないかと言うことになり、今はイリアに流してもらっている魔力を内側に留める訓練をしている。だが、これが思っていた以上に上手くいかない。と言うのも、イリア曰く...魔力を留めることなんて、まだお腹の中に居る赤ん坊ですら無意識に出来る事で...。簡単に言うと息をしているのと同じこと、しかしそれにコツがあるのかと言われれば説明に困るように簡単そうで実は簡単ではなかったのだ...。
そして当然、俺には未だにソレを出来る気配はなく、それでも諦めずに試行錯誤している状況だ。
イリアに関しても、こればっかりは教えようにも教えられないと嘆いていた。
そしてさらに月日は流れあれから半年...。
これと言って大きな変化はないが...。デニスが来た際に俺の身長が少し伸びていて、筋肉も少しずつ付いて来ていると言った。
確かに筋肉は自分でも少し付いたなとは思っていたが、まさか身長が伸びているとは思いもしなかった。
しかし、身長が伸び始めたと言うことは、おそらく俺の身体は成長期に入っているはず...。
となれば、今の自分の年齢は大体10~12才くらいだと予想できる。
それから、これは小さな変化だと思うが、日課の早朝水泳が終わった後、俺は歩いて帰れるくらいには体力が着いている...さすがに水から上がるとまだ身体は重いが、前に比べるとマシにはなった。
だが、朝食に遅れるとその後の修行や訓練に差し支えるので、こっちの方が早い!と結局のところ師匠に家まで背負われている...。
あぁでも、ちなみにではあるが、乗り物酔いならぬ師匠酔いは完全に克服できたので今では師匠の背中はかなり快適にはなった。
そして師匠の小石避けだが、前よりも感覚と瞬発力が上がったおかげで、半分くらいは避けられるようにはなった。
それにこれまで当たりすぎていたせいか、多少の傷くらいならすぐに治療しなくても平気という感覚も手に入れる事が出来た。
そして気づけばこの世界に転生して1年が経とうとしていた...。
「おはようございます賢者様!そして剣聖様にレイドも!」
今日は毎週恒例の『デニスの日』である。
「あぁ、おはよう。」
「おぉデニス!今日も元気があって良いな!ハッハッハ!」
「デニスおはよう!」
「皆様いつもありがとうございます!では商品の方下ろしますね!」
デニスはそう言うと、すぐに荷台の方へ行った。
「手伝うよデニス。」
俺もいつも通り、デニスと他愛もない会話をしながら一緒に荷物を下ろした。
(あれ...なんだろうこの違和感...。)
いつも通りのはずなのに、俺はなんだか体に違和感を感じていた...。
そして荷物を全て下ろし、いつも通り走竜たちに水を与えた。
(あれ?前に居た走竜...だよな?)
俺はこの些細な違和感の答えが分からず、少しずつモヤモヤし始めていた...。
そして、イリアとオベロンが商品の確認を終わらせたところで、走竜たちも水を飲み終わり、俺は2つの桶を持ってみんなのいる場所へと戻った。
それから俺たちは商品を囲むように輪になりながら談笑していると、デニスが俺の顔をじーっと見上げながら言った。
「そう言えばですが、レイドはまた大きくなりましたよね...。」
「え...?そうかな?」
俺は自分の身体を確認してデニスに言った。
「まぁ、確かに師匠との修行で筋肉はかなり付いてきたかも...。」
少し照れながらそう言うと、デニスは嬉しそうに言った。
「それだけじゃないですよ!お二方を見てみて気づきませんか?」
(ん?二人がどうかしたのか...?)
俺は言われるままに、両隣に立っているイリアとオベロンを交互に見た。
(特に変わりは......あ。)
俺はこの時、初めて自分が感じていた違和感の正体に気付いた...。
「あ、あれ?イリアさん少し小さくなりましたか...?」
そう、出会った頃のイリアは俺を見下ろしていた筈なのに、今では俺と同じ目線に居たのだ...。
するとイリアはなんだか嬉しそうに笑って言った。
「馬鹿者、私が縮むわけないだろう?お前が大きくなったんだよ...全く、子供の成長と言うのは早いものだな。」
(確かに...前にデニスから身長が...とか言われてたけども...案外自分では気づかないもんだな...。)
すると、師匠がイリアに応える様に言った...。
「ハッハッハ!全くその通りだな!しかし弟子よ、変化に気付けないのは関心せんぞ?己を知ると言うのは可能性を広げることに繋がるからな!ハッハッハ!」
「すみません。俺言われて初めて気づきました...。」
すると、イリアが笑いながらフォローしてくれた...。
「まぁ無理もないさレイドよ、毎日この無駄に大きいだけのこいつと一緒にいたら身長が伸びたことに気付く方が難しいってものだ。」
「なっ...!?」
師匠は予想に飛んできた見えないボディーブローにやられ、ほんの少し小さくなった。
俺達3人は、大男がシュンとなる姿がなんだか可笑しくて笑った。
それから、デニスとイリアの提案で、俺の服も一式サイズアップする事になり、今回は師匠も参加してデニスと3人で俺の服を選んでくれたのだった...。
それからデニスが帰った後、俺たちはいつものように3人で朝食を摂った。
「服の具合はどうだレイド?」
「はい!前の物よりも動きやすくなりました!」
「ハッハッハ!それだけじゃないぞ?その服は素材にもこだわっていてな!耐久性もかなりあるとデニスが言っていたわ!」
「そうなんですね...。ところで師匠?耐久性と動きやすさを重視したのには何か訳が...?」
(どうやら今回は師匠が選んでくれたみたいだな...。)
すると師匠は、ニヤリと笑ってから言った。
「あぁ必要だぞ。なにせ今日から木剣を使った稽古に移行するからな!ハッハッハ!」
「いいんですか師匠っ!?」
「あぁいいぞ弟子よ!体力もそれなりに付いてきたようだし、身体も出来上がりつつある!これでやっと剣の扱いを教えることができるわ!ハッハッハ!」
「よっしゃー!!」
俺はこの日を待っていた、これでようやく『旅に出る』目標が近づいてくるのだ。
「良かったじゃないかレイド。だが、あまり無理はしてくれるなよ?」
「はいイリアさん!なるべく怪我には気をつけます!」
すると、これを聞いた師匠が闘志を燃やした...。
「ほほぅ...剣聖を相手に怪我なんぞで済むと思っているとは...フッハッハ。鍛え甲斐があるじゃないか、なぁ弟子よ。」
(ヤベ...なんかスイッチ入っている...。)
「し、師匠...?その...お手柔らかにお願いします...はい...。」
こうして俺は、体術の稽古から木剣を使った稽古へ移行した。
もちろん、この後はみっちりとしごかれたのは言うまでもない...。
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