斎建大

古代魚の背骨のように菜の花の聳えたままで巡る季のなかで


火を知る 胎の双子が向かいあうまま瞑る目の 青い火を知る


憑きものや肩の桜を落としつつあなたが巡り会う河がある


仙人掌は陽を浴びながら窓の桟の幽霊になって夏を咲く


いつかあなたが飼い殺した白鯨はいつか喜劇の眩しさだった


便箋の封をし終えた小指にもいまだ揚羽のような陶酔


死者ときに雁として来る夕暮れを言葉は砂になるというのに


暮らすならひととき斧を立てかけた白樺が此岸を暮れるなら


火の精、水の精が眩みだす葦の野に足跡のいくつかを沈めて


風邪に研がれた喉を揺らして淋しさを、あなたの名を噴きこぼした

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斎建大 @itsuki_takehiro

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