第22話・2006/4/28 (Fri.) 15:10:49

今日は熱も下がったから、張り切って学校に行った。教室に入ると紺野がいなくて、思わず俺はブルーになる。他のやつらから、『大丈夫?』って声かけられて嬉しくて「もう大丈夫だよ」ってこたえたら「よかったな」って斉藤が笑った。


5分ほどして、紺野が教室に来た。「おはよー」って言って、俺に手を振る。俺はすぐさまに紺野に飛びついて「ありがとな!昨日はありがとな!」って言った。引っ付いたらもう離れるもんか。


「・・重いよお前・・・」俺を引きずりながら席に向かう紺野。「ケーキ超うまかった。天国みたかった」って俺がこたえると、紺野は、どうでもよさそうに笑って「天国みたいな味って何」っていう。



そして、イスに座ろうとしたけれど、俺が邪魔で座れやしないのだ。センキュー。


「離れろよ。自縛霊かおまえ」

「一生お前に取り憑いてやる~」

「まじで除霊ボム食らわせるよ?」



けらけらと笑っていちゃつく俺らをみて、周りの奴らもゲラゲラ笑う。『やっぱ幸村と紺野はそうじゃなきゃ。』クラスとやつらにそういわれた。


好き勝手やってることを、全部受け止めてもらえるってすごいね。人の弱みとか、些細な言葉のあやに、つけこむやつがこのクラスには一人もいない。俺は4月にやったテストで、毎回ぶっちぎり一位をとった。でもみんなそれを聞いたって、嫌な顔ひとつしないんだ。『さすがユッキー』『毎度頑張るなー、えらいよ。』って、ちゃんと努力を認めてくれんだよ。



そして、そんなほめ言葉の後には、お決まりの紺野バッシング。『それに引き換え紺野比呂・・。』『知能指数でこぼこコンビ』『同じ人類とは思えない格差』クラスのやつがそれを言ったとき、俺はヒヤっとしたんだけど、比呂はふざけたように怒って『俺は、大器晩成型なんですーっ!』って反論してたんだよ。


笑顔の中心に紺野がいる。


クラスに足がちょっとだけ不自由な奴がいて、そいつ、走るの遅いんだけど、先週だかの昼休みのときに、そいつがそのことについてクラスで話をしたんだよ。みんなで真剣に聞いてたんだけど、かける言葉が見つからなくて『でも、紺野みたいに足だけ異常に早いのもどうかと思う。』っていう答えに達したんだよね。なんかとばっちり的な感じもしたんだけど。


自分の欠点を他人に明かすのは、実はとても勇気もいることだ。でも俺らのクラスはなんとなく、そういうことを言いやすい環境にあるとおもう。紺野だって事情を知らない人が見たら、あの話すスピードの遅さはおかしく見えると思う。でもね、大事なのは伝わることじゃん。話し方がどうだろうとさ。


走るのが遅い奴の足の不自由は中学の頃の怪我が原因で、リハビリすればよくなるんだって。それを聞いた紺野が、毎日そいつの足をストレッチしたり、リハビリしてやってる。紺野は中学の時に、全国まで行った陸上選手だったんだってさ。



一生懸命頑張ってきたことが、どこでどう生きるかは、わかんないんだよな。

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