第21話・2006.4.27(thurs)21:15『ケーキ』


紺野が見舞いに来てくれた。うまそうなケーキ沢山持って。「・・・大丈夫?」って紺野に言われた時、俺、風邪ひいてよかったーって思った。


「・・先生からプリント預かった・・・あと・・ノートコピーしてきた」

「ありがとう・・ごめんな。なんか」

「・・・・声かすれてるね。咳とか平気なの?」

「うん。熱も下がってきたし、明日はいけると思う」

「ふーん・・」



ふーんっていいながら紺野は、プリントやノートをリュックから出して、俺の机の上に置く。


「ねえ」

「え?」

「お前って野球やってたんだって?」

「・・・ああ。うん。中学までね」

「斉藤が、今日そんな話しててさ。ユッキー上手なんだよって」

「上手ってほどじゃねえけど・・ピッチャーやってたよ」

「へえ・・。じゃあ、その時に考えたの?ユッキー魔球」



ユッキー魔球っていうのは、紺野と俺の中で流行ってる雑巾野球で俺が投げる魔球。


「ちがうよ。だって投げてるものが違うじゃん」

「ああそうかっ。だよな」

「そうだよ。魔球は比呂との対決の中で編み出した」

「へ~」


へーだのふーんだの、気の抜けたヤツ。


そんな話してたら、紺野が俺の本棚に向かって、一冊の本を手に取った。

「・・・ユッキー・・宇宙好きなの?」


その本は天文学の本だ。もともと兄貴の本だったんだけど、見た目がかっこいいから、俺が兄貴からもらったんだ。まさか紺野が興味示すなんて・・。


「宇宙は好きだけど、それは兄貴の本。比呂こそ宇宙好きなの?」

「うん。好き。写真とか見ると楽しいよね」

「だね」


目をあわせて、なんとなくふふっと笑った。俺、今日一日休んだけど、友情には何も変化はなかった。見舞ってもらえて嬉しかったし・・今日も紺野と会話ができたや。



紺野が帰った後ケーキを食った。なんか全部のケーキに果物が宝石みたくのっかってて豪華だった。こんなのあいつが選ぶなんて意外だなあって思ったけど、紺野が俺に手渡してくれたんだから、間違いなくこれは紺野が買って来てくれたものだ。


俺のために・・・。うれしいね。

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