第5話・2006.4.20(thu)『紺野が遊びにきた』
今日は先生の研修だかなんだかで、午前授業だけで部活もなかったから、帰りに紺野と飯を食いに行こうかって話になった。「何食う? 」って訊かれたから「マックでいい」って言ったんだけど「そんなら買って俺んちで食おう」って言われて全身緊張。
友達の家に遊びにいくなんて何年ぶり?まだ友達になって間もないのに・・・って言うか家族の人とかいたらどうすんの?
・・やっぱ無理だ・・・俺はこう見えてすごく人見知りなんだよーーー!!
だから俺、間髪いれずに「なら俺んち来なよ!』っていった。そしたら紺野は「ん?」っていう。考えてみたら紺野だって立場は同じ。嫌がられるかなって焦ったんだけど「・・お前んち、どのへん?」って聞かれたから「光が丘商店街から自転車で15分くらいのとこ」って、あわあわしながらざっくり答えた。
「へ~・・。俺、あの商店街の真ん中らへんのサボテン屋でバイトしてんだよ」
「えー?まじで?知ってる。結構有名じゃん?」
「有名かどうかはしらないんだけど、今日バイトなんだよ。お前んちから直接行っていい?」
「いいよ!全然いいし 」
「・・じゃ・・いく 」
俺と紺野は自転車で、マック経由で俺んちにいった。途中で紺野がケーキ屋に寄ってクッキー的なものを買うから、何かとおもったら土産だって。
家につくと、パートにでてるはずの母親がいたからびびった。っていうか、母親の方がびびってた。紺野の事を軽く紹介して、紺野が俺の母親に手土産渡して、そんで俺らは二階にあがった。
「あんな簡単な紹介でいいのかよ。名前言っただけじゃん」小声で言う紺野。「いいんだよ。そのへん座って」そういって俺は制服脱いで私服に着替えた。
そしたらさあバタバタしながら母親が菓子だのなんだのを持ってくるじゃん。明らかに対応になれてない俺の母親。『紺野君、那央をよろしく』って、何度も言うから恥ずかしかった。
親が出てくと紺野は「・・幸村すげえな・・。いきなり来ても、こんなに片付いてんだ・・・」とかいう。部屋の片付けは基本だろ。尊敬のまなざしで見るのやめろよ。マック飯食った後、兄ちゃんの部屋からゲーム持ってきて二人で遊んだ。遊んでたらなんかおもしろくってさ、ゲラゲラ笑って、呼吸困難寸前だった。
で、ちょっと眠くなったから、座布団半分に折ってマクラにして、昼寝して目が覚めたら俺らにはそれぞれに毛布が掛けられていた。いきなり静かになった俺らを心配して母親が見に来て、かけたらしい・・・。
時間が来て、紺野は帰っていった・・・というか、バイトに出かけていったんだけど、帰り際、俺の母親に何度も何度もお礼を言うから、なんか心の底がくすぐったかったよ。
「じゃあね」といって俺にヒラヒラと手をふり自転車に乗ると、紺野はペコって俺の母親に頭を下げた。そして自転車をこいでいく後姿が角を曲がって見えなくなったとき、俺の母親が泣き出した。
・・・いじめにあったり勝手に志望校のランク下げたり・・頭をぴんくいろにした息子をもって、きっと気苦労が耐えなかったんだろうな・・・。俺は家族に何の断りもなく勝手に人生を彷徨って・・でも、たどりつけたよ。
ちゃんとみつけた。俺の居場所。
部屋に戻ると携帯にメールが入ってた。紺野からだった。俺と遊ばなかったら、バイトまで一人でゆっくり昼寝できたんだろうに・・。俺、あいつに、色々なことを打ち明けちゃったから・・きっと気を使わせたんだとおもう。
正直言うと、俺はまだ友達への接し方がわからない。ただ、紺野といると安心をする。それが何故なのかはわからない。
いい一日だった。夕飯の時、母親が家族にニコニコ顔で「今日は、那央のお友達がきたのよー!!」とはしゃいでるような口調で話してた。
勘弁しろよ・・とおもいつつ・・、俺は飯を頬張って
今度は紺野の家に行ってみようって、小さな覚悟を決めたんだ。
post at 23:39
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