〔Side:Shino〕29. I wanna be a cat.
飼われてもいい。
むしろ飼われたい。
でも、ウチなんかを飼ってくれる人がいるのかな?
そもそもウチは誰に飼われたい?
答えは決まっていて、彼女以外には飼われたいとは思えない。
目が覚めたらご主人の膝の上で眠っていた。
温かい日差しがポカポカと照り、背中を滑るご主人の手と交互にウチを温めて、またすぐにでも瞼が落ちてきそうになる。
ご主人も時々手が止まって、それから少しするとまた動く。
午後の日差しは1人と1匹に微睡みをもたらす穏やかな時間。
ご主人様は毎日とっても忙しくて、たまの休みにも家事に追われたりしてガチャガチャと音を立てながら大変そう。
やっと一息つける時にはこうしてソファーでウトウトとしている。
ウチはその眠りを妨げないようにそーっとそーっと膝の上に丸くなる。
初めはどちらかといえば冷たい場所なのだけれど、背中をご主人の手が滑り始めるとそのうちじんわりと下からも温まってきて、そうなるとついついウチも眠くなってくる。
視界にあるキャットタワーと数々の遊び道具。それで遊ぶよりももっといいもの。たまにしかやってこない贅沢な時間。
もしも、ウチが来なければご主人はどうなっていたのかな?
もしもウチが猫じゃなかったら、ウチはこうして膝の上で寝ることなんてできないのかな?
わからない。わからないけど、ご主人なら大丈夫。
だってご主人だもん。
あれ?
でも、ウチが最初にここに来た時はどうだったっけ……
……たくさん……服やゴミが散らかっていて……
……水周りもギリギリで……
……休みの日は寝てばかりいたっけ……
それでウチが全部片付けて、整理して……掃除して綺麗に……
あれ?
ウチは猫?
違った。ウチは猫じゃなくて、ジュリもご主人じゃない。
これは夢?
どうしてこんな夢をみたのかな?
心当たり……
ジュリとはルームメイトで、友達以上のキスをしてしまう関係。
ジュリに一番と言ってもらえて、誰にも今のポジションを奪われたくなくて、どうしたらいいかわからなくて、友達や先輩に相談してダブルデートにいって……猫語の罰ゲーム、どうしてそれがご褒美?
とにかくそれでカラオケルームで膝枕をしてもらった。
猫の気持ちでジュリに甘えていたら、ジュリが「可愛い」と一言漏らしたのだった。
びっくりした。
ウチはジュリよりもずっと背も高いし、声も低いし、服もメイクもそれほど可愛らしくもできない。
可愛いなんて言葉とは無縁な人生を送ってきた。たまに言われたとしてもお世辞か嘲笑の可愛いだった。
そんなウチのことを可愛いなんて思ってくれる人は一人もいなかったし、言われて嬉しい事だとも思っていなかった。
猫語のウチのこと、ジュリは可愛いって思ってもらえたのが嬉しくて、その後の夕食でもたくさんお酒を飲んで、へろへろに酔っていたのもあってこんな夢を見たのかもしれない。
――
温かい布団の中で目が覚めた。
たくさん眠った気はするけれど、まだ酔いが覚めていないのかな?
なんだか見覚えのない広い部屋。
広いベッドの上にいる。
背中には温かくて柔らかい感触があって、腰に何か巻きついているような、まるで後ろから誰かにハグでもされているかのような。そして布団の中は何も着ていない。
ああ、まだ夢の中らしい。
猫から目覚めて次はどんな夢なのかな?
とりあえず、腰の巻きついたものを外さないと身動きも取れな――
ぎゅー……
身動ぎしようとしたら、腰に巻きついたものが少しだけきつくなって、後ろにある柔らかい感触も密着度合いが増していった。
その感触に覚えはなくとも、本能的に知っている似たようなものがあった。赤子がお母さんに抱かれる時の感触、今のウチは大きすぎる赤子のようなもの。
久しい感覚、本能的な安心感がもう少しこのままでいいかもと思わせる。
けれど、大人になって誰かがいる所で裸になるというのは同時に落ち着かないもので、例えその誰かが明らかに同性であったとしても安心しきれるわけもない。
というか……後ろの女性も……どうして??
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