〔Side:Shino〕28. 罰ゲーム→ご褒美


「紫乃、初めてにしてはやるじゃん」


「そうですよ月岡さん。初めて投げたのにBullブルに当てられたのはすごい」


「私はシノンとペアで投げるの楽しかったわよ。シノンは楽しかった?」


「……うん。楽しかった……けど、負けちゃった」


 ダーツは結局リオ先輩と笹原さんの勝利に終わった。

 ウチは2回も真ん中に当てたけど、リオ先輩も笹原さんも真ん中に1回ずつ当てられてすぐに巻き返されてしまった。

 悔しいけれど、初めて投げるのはウチだけだったのもあり、ジュリに引っ張ってもらうばかりになってしまった。


「じゃあ、勝ちは勝ちだし、あーしらの言うことを1つきいてくれるよね?」


「リオ、ゴニョゴニョゴニョ……」「ふんふん……いいかもね、うんそれもいい……んじゃ、ゴニョゴニョ……」「んー……なしかも。理由は……ゴニョニョ……」


 2人は何やら耳打ちで相談している。


「ウチが足引っ張りすぎてジュリまで罰ゲームになっちゃってごめんなさい」


「そんなことないわ、いい勝負だったじゃない。くよくよしないしない……それとも私に甘えたくなったの? ちょっと屈んでくれたら頭なでなでできるのだけれど……」


 ジュリが目の前で背伸びをしながらウチの頭を撫でようとしている。

 その手で撫でてもらうのなら、もっと人の少ない所がいい。

 今はジュリの手をキャッチしてそのきめ細やかて柔らかい感触を確かめながらぷにぷにするだけにとどめておこう。


「ふふ、くすぐったいな。な~に?」


「あとで……お願いするかもしれません」


「え?」


 パンッ


 リオ先輩が両手を鳴らしたのでウチとジュリはそちらを向いた。


「まずはこれで KP してから、その後にこのご褒美クジを引いてもらうからね?」


「「ご褒美クジ?」」


 ウチとジュリは笹原さんの手に握られた4本の紙を見た。


「私たちで考えたご褒美が書かれてるので、ご自身の運次第では嬉しい罰になるかもしれませんよ? まずは飲んでからにしましょう」


 いつの間にか用意されていた小さなグラス。

 リオ先輩がそれをウチとジュリに手渡して、自分と笹原さんにも持たせた。

 中身は何かわからないけれど、強そうなお酒の匂いがする。


「じゃ、景気づけってことでKP〜」


「「KP」」「え、あ、KP〜」


 すっとグラスをあけるみんなにつられて、ウチもぐっとグラスをあおった。

 喉にかなりの衝撃。喉がやけるお酒って本当に存在するんだ……?


「ぷふぅ……」


 今まで飲んだことの無い強烈なお酒。

 お昼を食べた後なのですきっ腹ではないにしても、これは酔う。


「あはは、紫乃の息すごい酒臭っあはは」


 リオ先輩は一瞬で酔っぱらいになっている。


「失礼ながら、先輩の息もですからね?」


「あはは、それはそう、あはは」


「じゃあ、ジュリさんからどうぞ引いてください」


「ええ、1枚引かせてもらいますね。ん〜……これ!」


「お〜、思い切りが良くていいね〜イトウさん、ん? ひとさん? あーははは、ごっめん、酔うと上手く呼べないや。ジュリーでもいい? どれどれ、なに引いたん? ほっほー、これはご褒美じゃん! 良かったね〜」


「月岡さんもどれか選んで」


「はい。これで」


「はい、どうぞ」


 引いた紙の先を見ると短く指示が書かれていた。


「何、これ……語尾に、ニャン?」


「ぶふっ紫乃がそれ引いたんだ? その声でニャンとかあははは」


「ジュリさん、『勝者指定とキス』ですね? リオ、指定どうぞ」


「あは、あーしが指定するのは、もちろん紫乃だよ。はいジュリーと紫乃、どうぞ〜」


 リオ先輩がウチの肩とジュリの肩を向かい合わせに誘導して、屈まされるともう真正面にジュリがいる。


「ジュリ、ごめんね。ウチ今お酒臭いかも……ニャン……」


「それは私も同じだし、いくわね?」


 ん……


「はは〜、あーしは別に場所までは指定してないけど、そうなるよね〜」


「ぷは!? うそ、ごめんシノン、私てっきり!」


「うふふ、ご褒美の感想を語尾付きでどうぞ〜、月岡さん」


「ジュリの唇、美味しかった、ニャン」


「……〜ー……!?」


 喉の奥で何かを叫びながら、バッ、とジュリが顔を両手で覆う。


「ジュリ、耳が真っ赤で……可愛いニャン」


 さらにジュリは押し殺した叫びをあげていた。


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