〔Side:Shino〕26. 重いのはどっち?
ジュリは自分が重いとわかってると口にしていた。
ハルさんとヤヤさん、2人の香水のにおいが残っていたのは自分でもわかっていた。
玄関でそのにおいやウチの上着に着いたメイクの1部、髪の毛など、それらにジュリはすぐに気がついたようだった。
なのにその時は何も言わなかった。
けれど、予感めいたものはあった。
明らかに表情は強ばっていた。
言いたいことを押さえ込んでいる雰囲気を感じて、それはウチがリオ先輩と笹原さんを部屋に招き入れた話をした時と同じような雰囲気を思い起こさせていた。
だからその後、ウチの言葉に反応が返ってこなかったのも追求することはしなかった。
「シノンが取られちゃうんじゃないかって、不安になったの……付き合ってもいないのに、ううん、付き合っててもこんなの迷惑だよね? だからそれも……ごめんなさい……」
やっぱり……
「……そう、なんだ」
ジュリはウチのことで嫉妬をしていた。
それをウチにとっては迷惑なことだとジュリは思っているらしい。
「そうなの……すごく自己嫌悪……シノンにそう話すのもおかしい話なんだけど……だからシノンは少し私のことを叱ってくれていいんだよ? さっきも洗剤の場所すらわからなくて……シノンに任せっぱなしで……ひどい女、私……」
「叱るも何も……洗剤の場所なんて、ジュリに相談もせずウチが勝手に置いて使っているディスペンサーがあったから、ジュリが気にすることじゃないよ? 全然酷くないし」
「……それでも……私はシノンのこと全然見えてなかったって思ったよ……」
「ジュリには家事のことはなるべく考えないようにして欲しかったから、ウチが手を出させてなかっただけだよ? この部屋でウチの存在理由が無くなったら困るから、ウチが全部したいようにしてただけ。ウチがこの部屋から離れたくないから、そうしていただけ……それはジュリのせいじゃないからね?」
この部屋の居心地の良さだけじゃない。
なによりジュリに求めてもらえることがたまらなく嬉しくて、ウチが離れたくないと思っている。
ジュリのせいじゃない? いいえ、彼女のせいかもしれない。
彼女が求めてこなければ、彼女がウチの居場所を心地好いままに守ってくれているから、ウチは居続けたいなんてことを思ってしまうのだから……
でもそれは彼女だけのせいじゃない。
ウチが拒んでいたらもうこの関係は破綻していたもの。
ウチが心地好いと思っていなければ、たぶんもうここにはいなかった。
早く出ていかなきゃなんてたまに思うけれど、それを1番渋っているのはウチで……
出ていきたくないって気持ちの方が遥かに大きいから行動に移せない。
ジュリに拒絶でもされない限り、ウチはここを出ていくことなんて無理なのかもしれない。
「ウチ……嬉しいよ」
「ほえ?」
「不謹慎かもしれないけど、ジュリがウチに嫉妬してくれて、嬉しいと思ってる。ジュリこそ、今日はウチにお仕置しなくていいの? 女の子二人を侍らせて飲んできたウチのこと」
「侍らせて……自覚あるんだ?」
「お酒飲む前は普通に今度の勉強会でも仲良くって感じだったけど、2人ともウチがお酒飲んでから明らかにウチにペタペタ触ったり寄りかかってきたりで、それで香水もすり付いたんだよ? さすがに態度違いすぎてたから、これは傍から見たらウチが侍らせてるようにしか見えないかもって思ったよね」
「ねえ、シノン……今の余裕のない私にそういうことを言って……いったいどういうつもりなの?」
「その顔……ちょっとゾクゾクする。ジュリはウチをどうしたいの? ウチのファーストキスもセカンドキスもジュリに奪われたけど、それでもウチはここにいるよ?」
「……!」
ジュリはウチがそういって顔を覗き込むと、そっぽを向いてしまった。
髪の隙間に見えている耳が赤く染っていくのが見えた。
「ジュリ……」
見えている赤い耳に口元を寄せて囁いた。
ビクッと軽く跳ねたジュリが可愛くて、いたずら心が顔を出す。
ジュリの肩を掴んで、体を傾けるようにウチの方へと引っ張った。
「えっ、ちょっ、なに!?」
ジュリは傾いていく体に慌てていたけれど、ポスンとウチの膝に頭が落ちていった。
「おかえり、ジュリ」
「……た、ただいま?」
「膝枕、最近あんまりしてなかったよね」
「……う〜ん、だってシノンに甘えてばかりじゃシノンも辛いかと思って……」
「ぜんぜん甘えてくれていいのに……むしろもっと甘えて? ウチがさみしいから……」
「さみしいって、ぇ? ……ん……!?」
「んふふ……ちゅー、ウチからしちゃった」
「…………ビックリしすぎてよくわかんなかった……」
「もう1回する?」
「……(コクン)」
「なら、今度はちゃんと、味わってね?」
「………………(コクン)」
……ん……
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