第9話

1階のダイニングルームに降りると、食事の準備はすでに整っていた。温かいデミグラスハンバーグが皿に盛られ、スープも湯気を立ててテーブルに置かれている。アマリリスとフララスが席に着くと、アマリリスの両親がさっと椅子を引いてくれた。


「今日はたまたまデミグラスハンバーグなんだけど、スープもあるから、超ごちそうだよね」とアマリリスの母親が微笑みながら言う。


父親も優しく付け加える。「フララスちゃん、おかわりもあるから、スープのおかわりだったら大丈夫よ」


フララスは少し照れくさそうに、しかしきちんと背筋を伸ばして答えた。

「ありがとうございます。いただきます」


二人がナイフとフォークを手に取り、静かに食事を始める。デミグラスソースの濃厚な香りが漂い、ハンバーグを一口噛むたびに柔らかさとジューシーさが口の中に広がる。スープをすすれば、ほっとするような温かさが体を包み込む。


アマリリスはフララスの様子を見ながら、そっと声をかける。

「おいしい? 初めてのうちの食事だけど、気に入ったかな」


フララスは小さく頷き、口元に微笑みを浮かべる。

「はい、とても……温かくて、落ち着きます」


アマリリスはその言葉に安心しながら、自分もハンバーグにフォークを伸ばした。食事の間、言葉は多くなくとも、二人の間に不思議な静かな親密さが生まれていく。フララスはまだ光を失った神としての孤独を抱えているけれど、この穏やかなひとときは、確かに彼女の心に小さな安堵をもたらしていた。


ナイフとフォークの音、スープをすする音、時折の笑い声。ダイニングルームには家族のぬくもりと、これから少しずつ築かれていく二人の関係の温かさが満ちていた。


フララスがスープのおかわりを受け取り、アマリリスと同じようにゆっくりと味わいながら、「こうして誰かと食事をするのも、悪くないですね」とつぶやく。


アマリリスは笑みを返し、そっと隣の席に手を伸ばす。その手はまだ触れ合わないけれど、二人の間に、言葉にしなくても通じ合う優しさと安心感が静かに流れていた。

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