第4話

アマリリスは、オレンジジュースのストローを唇にあてて、グラスの中の氷をかすかに鳴らしながら、対面に座る少女を見つめていた。まだ涙の跡が残る横顔は、ひどく幼くもあり、また何かを諦めた人のようにも見えた。


「ねえ、あなたの家ってどこにあるの?」

できるだけ柔らかい声で、アマリリスは尋ねる。


少女は少し間を置いたあと、窓の向こう――駅のコンコースの方向を指差した。

「あそこです」


「……あそこ?」アマリリスは眉をひそめた。

「ええ。あの柵の向こうが、私のお墓です」


さらりとした口調でそう告げると、少女は両手でグラスを持ち上げ、オレンジ色の微炭酸ジュースをひと口すすった。炭酸の泡が舌先ではじける小さな音が、アマリリスの耳にはやけに鮮やかに届く。


「……ちょっと待って。まさか、あそこに戻って、また……飛び降りるつもり?」

声が思わず強くなる。


少女は視線を落とし、わずかに頷いた。

「そうです。私には帰る場所がありませんから」


その答えはあまりにも静かで、残酷で、あっさりしていた。


アマリリスは両手でこめかみを押さえ、深く頭を抱えた。

「……どうして、どうしてそんなことを当たり前みたいに言えるの」


カフェの空調の音と、テーブルに置かれた氷が解けて落ちる水滴の音だけが、二人のあいだに流れていた。

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