第2話

 カフェレストランの窓際の席。そこに連れてこられた少女は、まるで迷子の子どものように小さくなって、椅子の端にちょこんと腰を下ろしていた。まだ涙の跡が残る頬を伏せ、視線はテーブルの木目をじっと見つめている。


 アマリリスはそんな彼女を正面に座って見つめていた。落ち着きを装ってはいるが、胸の内はざわついている。つい先ほどまで、この少女は命を投げ捨てようとしていたのだし………。そしてその背には、常人には決してあり得ない、巨大な光の羽根が確かに存在する。


「とにかく……どういうつもりなの?」

 アマリリスは低く問いかける。

「あなた、ただの神じゃない。あんな大きな光の羽根……私は見たこともない。普通の神格じゃ到底出せる光じゃない。よほど名のある神に違いないと、私は思うのだけど」


 言葉を投げても、少女は応えない。泣き止んではいるが、唇を固く閉ざし、頑なに口を開こうとしない。


 アマリリスは一度ため息をつき、気を取り直すようにメニューを手に取った。

「……ここはね、このカフェ。甘いジュースが有名なんだ」

 彼女はできる限り柔らかい声に変える。

「フルーツジュース。レモンにグレープフルーツ、オレンジに葡萄、苺だってある。何でも揃ってる。ねえ、何か飲みたいものがあるんだったら、頼んであげるけど……どうかな?」


 少女は小さく首を振るでもなく、ただ沈黙していた。長い睫毛の影が頬に落ち、細い肩はかすかに震えている。


 アマリリスはしばらく見つめ、それから小さく笑みを浮かべた。

「そっか。じゃあ……オレンジジュースにしよう」

 彼女は言葉を続ける。

「少しだけ炭酸が入ってるんだ。微炭酸のフルーツジュース。だから喉ごしがすっきりして、でも甘くて美味しい。……私も同じのを頼むから、あなたも一緒に飲もう」


 そう言うと、アマリリスは迷わず店員を呼び、はきはきとオーダーを伝えた。

「オレンジジュースを、二つお願いします」


 少女は俯いたままだったが、その肩の震えは、先ほどよりも少しだけ穏やかになっていた。

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