第6話 誤解(2)
二日経った。その間、ユキさんとの連絡が途絶えた。ショートメールその他、LINEから手旗信号、伝書鳩まで送ってみたが返信はなかった。僕はすっかり憔悴しきってしまった。
「もう退院していいわ。後は経過観察。松葉杖は必要だけど通院で大丈夫ね。」
診察した広田先生がそう言ってくれたが僕の喜びの反応は鈍かった。その様子を見て広田先生が僕の異変に気付いて「随分、顔色悪いわね。少しやせたみたい。」と言った。僕は先生を「先生のせいですよ。」と力なく答えた。そして事情を説明した。
「そりゃあ、悪い事をしたわねぇ。」広田先生はそう言って笑った。
「とにかく彼女は僕と先生がデキていると誤解しているんです。」
「そういう事なら仕方ないから“あたり”の件、その彼女さんには言うしかないね。残念だけど。」
「勿論、そのつもりで連絡しているんですけど完全に怒ってしまったようで既読もつかないんです。先生、何とかしてくださいよ!」
「そう言われても困るわぁ。」
「困っているのはコッチですよ。」
二人して思案しているとフラリと男が入ってきた。
「話は聞かせてもらった。随分お困りの様だな。」
「あなたは!救急隊員の黒田さん!」
「アンタの伝言、俺がユキさんのところまで行って直接話してやるよ。」
「いいんですか!」
「困っている人を助けるのが救急隊員の仕事さ。」右手の親指を突き立てて、かっこつけたかったのだろうが、目測を誤りその親指で自分の右目を突いてしまい、黒田隊員はのたうち回って痛がったが、僕は見ていなかったフリをした。とにかくユキさんから教わった住所を僕が伝えると早速、黒田隊員は救急車で彼女の自宅へ向かった。サイレンを鳴らして。
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