第7話 復讐決行 ㊟残酷な場面あり
ほどなくして、美琴はワンルームマンションを借りた。
表向きは心機一転のための一人暮らし。
だが本当の理由は、復讐を実行するためだった。
街には監視カメラが張り巡らされている。犯行を人に見られるわけにはいかない。
かといって、人目のない山奥まで絵梨を誘い出す手段もない――。
結婚式を間近に控えたある夜、
以前からの約束通り、美琴は一つの宝石を渡すために彼女を呼んだのだ。
それは――血のように深紅に輝くルビー。
美琴が最も気に入っていた宝石であり、代々受け継がれてきた由緒あるものだった。
「幸い指のサイズは同じだから。私にはもう必要なくなったものよ」
そう言われ、絵梨は無邪気に喜び、ためらいなく美琴の部屋へ足を踏み入れた。
ふと会話が途切れた時、絵梨は美琴の指先に目をとめた。
「あれ?美琴……そんなに爪、長かった?」
「……」
「それに八重歯? まるで牙みたいじゃない」
美琴は黙って笑った。
その笑みには、かつての友人の面影など一片もない。
「なに笑ってるのよ。……気持ち悪い」
次の瞬間、絵梨の首に冷たい手が絡みついた。
「なに……やめてよ! 美琴!」
爪がじわりと食い込む。
絵梨は暴れようとしたが、体が思うように動かせない。
動けない。声も出せない。
「ぐ……ぐぐっ……」
美琴の爪がさらに深く突き立ち、血が滴り落ちた。
「嘘ばかり吐く口なんて、いらないわ」
口角を無理やり引き裂く。
裂け目から血が噴き出し、絵梨のうめき声は喉の奥で潰れていった。
次に美琴の爪が腹部をなぞる。
「その子は和也の子じゃない……不要ね」
皮膚が裂かれ、赤いものが姿を現す。
──それでも絵梨はまだ、生きていた。
目を見開き、涙と血に濡れながら、美琴を見上げている。
「最後の仕上げよ。……皮を剥いであげる」
美琴は丁寧に、しかし容赦なく、皮を剥ぎ取っていく。
赤黒い肉をさらけ出した絵梨は、もはや「人間」ではなかった。
生きたまま皮を脱がされ、苦悶の声を上げる姿は怪物のようだった。
美琴はその皮を纏い、鏡の前に立つ。
そこに映っていたのは──
「どうかしら、絵梨? ……すっかり、あなたになったわ」
絵梨の最後の言葉は、喉を潰されかすれた声となって漏れた。
「……許さない……必ず……復讐してやる……」
血に濡れた唇から、聞き慣れぬ言葉が滲み出る。
「שָּׂטָ…… כתוב, תהילה……」
それは呪詛のように、空気を震わせた。
その意味を知らずとも、美琴の背筋に冷たいものが走る。
全てが終わった。
鬼の力は、ただ肉体を強くするだけではなかった。
人の心を読み取る力。
そして、生きたまま皮を剥ぎ、その姿に成り代わる力。
その能力さえあれば、権力も富も、どんな望みも叶えられるだろう。
だが、美琴が選んだのは――ただひとつ。
裏切り者への復讐だった。
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