真夜中の分岐点

　　落ち込んだら近くの山に星を見に行く。バイトでの金を貯めて中古車を買ってから、俺はそうすることが増えた。別に星に詳しい訳では無い。ただ、何となく空を見ると救われる気がしているから。

　今日も、俺は山に星を見に来た。もうすぐ30代なのに定職が無い不安からだろうか、ここ最近は毎日ここに来ている。言い忘れていたが、山に行くと言っても中腹にある駐車場までだ。その駐車場は崖の様な場所に位置しており、昼であれば朽ちかけている木の柵の奥にそれなりに壮観な山々が見える。ちなみに夜に見えるものは、ただの星だけだ。何もない場所で吸うタバコは、人のごった返す喫煙所で吸うタバコよりもほんの少しだけうまい。

　2本目のタバコが灰になった、そろそろ帰り時だ。車まで行く道中で500円玉が落っこているのを見つけた。ラッキー。

　山から家までは本当に近い。車でひたすら直進して15分でつく。家から山が近いと言うと、たまに都会に住む友達に田舎だと馬鹿にされるのだが、この辺は山沿いにしては発展していると思う。コンビニも薬局もそれなりにあるし、30分程でイオンにも行ける。そう言い返したら、イオンなんてものを特別扱いしてる時点で高が知れるといわれれれれｒ、っ？横。トラック、虎９９９が、血が、違、血血血血。びょウイン、まず病院だ。111991919119、119。駄目ｄっだおだ、右手が無ない……長年連れ添った相棒、俺の右腕ぇええっぇ。えー、えいじゃあ脱出！しようとしたけど右足も無い。ひゃひゃひゃひゃひゃ右ばっかり。目の前がマッカッカカ、黒い暗い真っ暗クラクラックラするひー。

　☆

　死にたくない、だなんて生物的なことを考えるような落ち着きを取り戻す間もなく、俺は死んだ。もう俺が知り得ない事なのだが、どうやら飲酒運転のトラックに車ごと押しつぶされたらしい。夜中かつ人が少ないこともあり通報されなかったらしいが、そのトラックはしばらくその道路で危険な運転をしていたらしい。俺の車と当たらなかったらしばらく運転を続けていたらしい。後15分程遅く出ていればトラックに遭わなかったらしいが……、もうどうでもいいことだ。