終わりのないテスト、終わりなき悪夢

​蘆屋美奈との電話を切ってから、どれほどの時間が経っただろうか。俺は、この終わらない期末テストの中で、何度も、何度も、同じ光景を繰り返していた。

​問題用紙に書かれた、不気味な呪文。

​満点を取る壱馬。

​不気味な笑みを浮かべる涼太に憑依した鈴村。

​そして、俺を襲う、激しい痛み。

​何度も、何度も、同じ場所で、同じ台詞を言い、同じ結末を迎える。まるで、バグったゲームの中に閉じ込められたようだ。

​「くそっ、このままじゃ、俺、本当に頭がおかしくなっちまう…！」

​俺は、そう心の中で叫び、必死にこの悪夢から抜け出そうとした。だが、何度試しても、俺は、この期末テストから抜け出すことができない。

​俺は、頭を抱え、絶望していた。

​「…おい、安倍アキラ。そんなところで、何してるんや？」

​その声に、俺はハッとした。

​顔を上げると、そこには、いつの間にか、蘆屋美奈が立っていた。彼女は、俺と同じように、期末テストの問題用紙を手にしていた。

​「…美奈！なんで、お前がここに…！」

​俺がそう叫ぶと、美奈は、フッと笑った。

​「…うち、あんたのSOSを聞いたんやからな。それに、あんたのその呪い、ホンマに厄介そうで、腕が鳴るわ」

​美奈は、そう言って、俺の隣に座った。

​「…この呪いは、あんたをこの期末テストの中に閉じ込めて、あんたの心を蝕んでる。でもな、うちには、あんたのその呪いが見えへん」

​美奈の言葉に、俺は眉をひそめた。

​「…どういうことだよ？」

​俺がそう尋ねると、美奈は、静かに語り始めた。

​「あんたの呪いは、あんたの**『物語』と深く結びついとる。だから、あんたの『物語』**の外にいる、うちには、見えへんのや」

​美奈の言葉に、俺は息をのんだ。

​「…じゃあ、どうすれば…！」

​俺がそう叫ぶと、美奈は、ニヤリと笑った。

​「…簡単や。うちが、あんたの**『物語』**に入ったればええんや」

​美奈は、そう言って、俺の手に、あるものを握らせた。それは、小さな、赤い玉だった。

​「…これは…？」

​「うちの式神や。この子と契約すれば、うちも、あんたの『物語』の中に入れる。そして、あんたと一緒に、この呪いを解くことができる」

​美奈は、そう言い放った。

​俺は、美奈の言葉を信じ、その赤い玉を握りしめた。

​「…よし、決めた！美奈、俺と一緒に、この呪いを解いてくれ！」

​俺がそう叫ぶと、美奈は、満足そうに笑った。

​「…フン、当たり前やろ？うち、あんたの探偵助手やからな」

​美奈は、そう言って、俺に、手を差し出した。

​俺は、美奈の手に、そっと、自分の手を重ねた。

​俺の物語は、ここから、さらに複雑になっていく。

探偵助手の条件

​俺は、美奈の言葉を信じ、彼女の式神である赤い玉を握りしめた。すると、俺の体の中に、温かい力が流れ込んでくるのを感じた。

​「…これが、お前の式神か…」

​俺がそう呟くと、美奈は、フッと笑った。

​「…そうや。これで、うちも、あんたの『物語』の中に入れた。さあ、始めよか」

​美奈は、そう言って、俺の隣に立ち、俺と共に、呪われた期末テストに立ち向かうことを決意した。

​俺たちは、何度も、何度も、同じ期末テストを繰り返した。その中で、美奈は、俺が気づかなかった、ある違和感に気づいた。

​「…おい、アキラ。あんた、なんで、毎回、期末テストの問題、見てるんや？」

​美奈の言葉に、俺は眉をひそめた。

​「…当たり前だろ？テストなんだから」

​俺がそう言うと、美奈は、ニヤリと笑った。

​「…馬鹿やな。この期末テストは、呪文でできとるんや。呪文は、一度見たら、覚えるもんやろ？あんた、毎回、呪文を忘れてるんか？」

​美奈の言葉に、俺は息をのんだ。

​「…まさか…！」

​俺は、自分の頭の中を調べた。すると、確かに、呪文の記憶が、すっぽりと抜け落ちていることに気づいた。

​「…そうか！鈴村の野郎、俺に、記憶を消す呪いをかけていたのか…！」

​俺は、そう確信した。

​「…でも、なんで、あんたは、記憶を消されないんだ？」

​俺がそう尋ねると、美奈は、得意げな顔をした。

​「…うちは、蘆屋家やで？記憶を消す呪いなんか、効くわけないやろ？」

​美奈は、そう言って、俺に、ある条件を突きつけた。

​「…この呪いを解くには、うちとあんたが、力を合わせることが必要や。あんたは、自分の得意な分野で、うちを助けるんやで？」

​美奈の言葉に、俺は、迷うことなく頷いた。

​「ああ。わかった。美奈、俺と一緒に、この呪いを解いてくれ！」

​俺がそう叫ぶと、美奈は、満足そうに笑った。

​こうして、俺と美奈の、終わりのない期末テストを巡る戦いが、今、始まった。

​俺の物語は、ここから、さらに複雑になっていく。

終わらないテストの謎

​俺は、美奈と手を組み、終わらない期末テストの謎を解き明かすことにした。

​美奈の式神、赤い玉を握りしめた俺は、彼女の能力を借りて、この『物語』の中のルールを理解しようと試みた。美奈は、呪文の記憶を保持する能力、そして、呪いの構造を見抜く能力を持っていた。

​「…おい、アキラ。あんたの役目は、この呪いの根源を探ることや」

​美奈は、そう言って、俺に指示を出した。

​「根源…？」

​俺がそう尋ねると、美奈は頷いた。

​「ああ。この呪いは、この学校に潜む、ある怨念から生まれてる。その怨念が、鈴村の業鬼の力と結びついて、この呪いを作り上げとるんや」

​美奈の言葉に、俺は眉をひそめた。

​「…怨念？この学校に、そんなものが…？」

​俺は、5匹の鬼の力を同時に纏わせ、この学校に潜む怨念を探ることにした。

​「おい、みんな！力を貸してくれ！この学校に潜む、怨念を探るぞ！」

​俺がそう叫ぶと、5匹の鬼は、俺の体から放たれる力を、学校中に放ち始めた。

​赤鬼の力で、この呪いの根源を、青鬼の力で、呪いに蝕まれた魂を、緑鬼の力で、呪いの繋がりを、白鬼の力で、呪いの悲しみを、そして、黒鬼の力で、呪いの憎しみを、探り始めた。

​「…見えたぞ…！」

​俺は、目を閉じ、五匹の鬼の力が、学校中を駆け巡るのを感じた。

​生徒たちの心の闇、教師たちの苦悩、そして、この学校に潜む、ある怨念。

​その怨念は、この学校の美術室にある、一枚の絵から生まれていた。

​「…そうか…！」

​俺は、そう確信し、目を開けた。

​俺の目の前には、涼太に憑依した鈴村が、不気味な笑みを浮かべていた。

​「…ふふふ、見つけたか、安倍アキラ。だが、もう遅い」

​鈴村は、そう言って、俺に呪いをかけようとした。しかし、その時、俺の全身から、力が抜けていくのを感じた。

​「…くそっ…！」

​5匹の鬼の力を同時に纏わせることは、俺の体にとって、あまりにも大きな負担だったようだ。

​俺は、その場に倒れ込み、鈴村に、ただ、見つめられるしかなかった。

​「…残念だったな。君は、真実を知った。だが、その真実を、誰にも話すことはできない」

​鈴村は、そう言って、俺の意識が遠のいていくのを見て、満足そうに笑った。

​俺の物語は、ここから、さらに複雑になっていく。

​終わらない期末テストの謎

​わたしは、安倍アキラの頼みを聞いて、彼の『物語』の中に入った。

​彼の『物語』は、まるで、バグったゲームのようだった。何度も、何度も、同じ場所で、同じ台詞を言い、同じ結末を迎える。

​わたしは、彼の隣に座り、期末テストの問題用紙をじっと見つめた。そこには、不気味な呪文が書かれている。

​「…ふん、こんなもんで、うちを騙せると思っとるんか？」

​わたしは、そう呟き、呪文を読み解き始めた。すると、呪文の奥に、ある違和感があることに気づいた。

​「…おい、アキラ。あんた、なんで、毎回、期末テストの問題、見てるんや？」

​わたしは、そう言って、アキラに問いかけた。しかし、アキラは、呪文に夢中で、わたしの言葉が耳に入っていないようだった。

​「…馬鹿やな。この呪文は、一度見たら、覚えるもんやろ？あんた、毎回、呪文を忘れてるんか？」

​わたしの言葉に、アキラは、ハッとしたように、わたしの顔を見つめた。

​「…まさか…！」

​アキラは、自分の頭の中を調べ、呪文の記憶が、すっぽりと抜け落ちていることに気づいた。

​「…そうか！鈴村の野郎、記憶を消す呪いをかけていたのか…！」

​アキラは、そう叫んだ。

​わたしは、アキラのその反応を見て、確信した。

​アキラの呪いは、彼自身の『物語』と深く結びついている。そして、その『物語』の中で、アキラは、記憶を失うという呪いをかけられていた。

​「…残念やな、アキラ。あんたは、真実を知った。でも、その真実を、誰にも話すことはできひん」

​わたしは、そう言って、アキラに、ある条件を突きつけた。

​「…この呪いを解くには、うちとあんたが、力を合わせることが必要や。あんたは、自分の得意な分野で、うちを助けるんやで？」

​わたしの言葉に、アキラは、迷うことなく頷いた。

​「ああ。わかった。美奈、俺と一緒に、この呪いを解いてくれ！」

​アキラは、そう叫んだ。

​わたしは、アキラの言葉に、少しだけ、嬉しくなった。

​そして、わたしは、アキラの手に、あるものを握らせた。それは、わたしの式神である、赤い玉だった。

​「…この子と契約すれば、うちも、あんたの『物語』の中に入れる。そして、あんたと一緒に、この呪いを解くことができる」

​わたしは、そう言い放った。

​アキラは、わたしの言葉を信じ、その赤い玉を握りしめた。

​「…よし、決めた！美奈、俺と一緒に、この呪いを解いてくれ！」

​アキラは、そう叫んだ。

​わたしは、満足そうに笑った。

​「…フン、当たり前やろ？うち、あんたの探偵助手やからな」

​わたしは、そう言って、アキラに、手を差し出した。

​アキラは、わたしの手に、そっと、自分の手を重ねた。

​わたしの物語は、ここから、さらに複雑になっていく。

​美奈と協力し、終わらない期末テストの謎を解き明かそうと試みた俺。だが、何度試しても、俺は呪文を読み解くことができない。そして、その度に、鈴村に呪いをかけられ、意識を失う。

​「…くそっ…！もう…もう無理だ…！」

​俺は、絶望し、地面に倒れ込んだ。全身が軋み、激しい痛みが走る。もう、何もかも、どうでもよくなっていた。

​「…アキラ…」

​その声に、俺はハッとした。

​顔を上げると、そこには、俺の幼なじみ、新沼千恵の幻が、俺を見つめていた。

​「…ち、ちーちゃん…？」

​俺がそう呟くと、千恵は、悲しそうに、そして、優しく微笑んだ。

​「…馬鹿。アキラは、そんなところで、へこたれるような、弱い子じゃないでしょ？」

​千恵の声が、俺の心に、そっと染み渡る。

​「…でも…俺…もう…」

​俺は、そう言って、涙を流した。

​「アキラ。思い出して。あんたが、探偵と陰陽師になった理由を」

​千恵は、そう言って、俺に語りかけた。

​「あんたは、探偵として、みんなの笑顔を守る。そして、陰陽師として、みんなの心の闇を晴らす。それが、あんたの『物語』でしょ？」

​千恵の言葉に、俺は、ハッとした。

​そうだ。俺は、みんなの笑顔を守るために、探偵になった。みんなの心の闇を晴らすために、陰陽師になった。

​「…ちーちゃん…」

​「アキラ。わたしは、いつも、あんたのそばにいるから。だから、もう一度、立ち上がって。そして、みんなの笑顔を、守ってあげて」

​千恵は、そう言って、俺の顔に、そっと、手を伸ばした。

​俺は、千恵の幻に、力を借り、再び立ち上がった。

​「…ありがとう、ちーちゃん」

​俺は、そう呟き、美奈に、笑顔で言った。

​「美奈、もう一度、やろう！」

​俺の言葉に、美奈は、ニヤリと笑った。

​俺の物語は、ここから、さらに激しく、面白くなっていく。

終わらない期末テストからの脱出

​千恵の幻の言葉に、俺は再び立ち上がった。絶望の淵から這い上がり、美奈に「もう一度やろう！」と叫んだ。美奈は、ニヤリと笑って、俺に頷いた。

​「…さあ、アキラ。あんたの『物語』を、俺たちの手で、塗り替えるんや」

​美奈は、そう言って、俺の隣に、もう一度、座った。

​俺は、再び、期末テストの問題用紙を手に取った。そこには、不気味な呪文が書かれている。だが、俺は、その呪文を読み解くことはしなかった。

​「…もう、いい…！」

​俺は、そう心の中で叫び、その問題用紙を、ビリビリに破り始めた。

​「…ちょ、アキラ！何してるんや！？」

​美奈が驚いて俺に叫んだ。しかし、俺は、美奈の言葉を無視し、問題用紙を、無心で破り続けた。

​そして、俺は、破った問題用紙を、ゴミ箱に捨てた。

​「…これで、いいんだ」

​俺は、そう呟き、美奈に、笑顔で言った。

​「…アキラ…？」

​美奈は、俺の行動に、呆然としていた。

​その時、俺の全身に、激しい痛みが走った。鈴村が、俺の行動に、怒っているのだろう。

​「ぐっ…！」

​俺は、その場に倒れ込んだ。

​「…はぁ…？なんで、今、呪いがかかったんや…？」

​美奈は、不思議そうに首を傾げた。

​「…そうか！わかったぞ…！」

​俺は、そう心の中で叫び、美奈に言った。

​「…美奈！この呪いは、この期末テストに、縛られていたんだ！」

​俺の言葉に、美奈は、ハッとした表情を浮かべた。

​「…あんた、まさか…！」

​俺は、美奈に、ニヤリと笑った。

​「ああ。俺は、この期末テストを、終わらせたんだ！」

​俺がそう叫ぶと、俺の全身から、力が漲っていくのを感じた。そして、俺の周りの景色が、少しずつ、変化していくのを感じた。

​「…さあ、鈴村！俺の物語は、ここから、さらに激しく、面白くなっていくぜ！」

​俺は、そう叫び、再び立ち上がった。

​俺の物語は、ここから、さらに複雑になっていく。

​俺の目の前に広がるのは、見慣れた教室だった。だが、そこには、不気味な呪文も、不自然な笑みを浮かべる涼太も、いなかった。

​「…やった…！」

​俺は、思わず叫んだ。俺は、終わらない期末テストという悪夢から、ついに、抜け出すことができたのだ。

​「…ふん、当たり前やろ？うちが、あんたの探偵助手になったんやからな」

​美奈は、そう言って、俺の隣に、ゆっくりと近づいてきた。

​俺は、美奈に、笑顔で言った。

​「…美奈、ありがとう」

​美奈は、俺の言葉に、少しだけ照れたような顔をした。

​「…べ、別に！あんたのためじゃないんやからな！うちが、あんたより先に、手柄を立てるためなんやから！」

​美奈は、そう言って、俺に背を向けた。

​俺は、美奈の言葉に、フッと笑った。

​探偵、再び配信者になる

​呪いから解放された俺は、事務所に戻ると、すぐに配信の準備を始めた。今回の配信は、ただの娯楽じゃない。俺の『物語』の、新たな始まりだ。

​「はいどうもー！探偵兼陰陽師の安倍アキラです！いやー、皆さん、お待たせしました！」

​俺は、パソコンの前に座り、満面の笑みで配信を始めた。

​「今回は、とんでもない事件を解決してきました！なんと、終わらない期末テストに、閉じ込められていたんですよ！」

​俺がそう告げると、コメント欄は驚きと興奮でざわついた。

​『期末テストw』『アキラ、まじで何してるんだよw』『嘘だろw』といったコメントが流れる。

​「いやいや、マジですよ！そして、その呪いをかけた犯人ですが…」

​俺は、そう言って、ある一枚の絵を、画面に映し出した。

​「…この絵は、美術室にあった、ある生徒が描いたものです。この絵には、彼の怨念がこもっていました」

​俺は、そう言って、その絵に込められた、悲しい物語を、すべて話した。彼の孤独、彼の絶望、そして、彼の怨念が、呪いとなって、この学校に蔓延していたことを。

​「…そして、この怨念を利用し、俺たちを呪い、この学校を、自分の『物語』で塗り替えようとしたのが…」

​俺は、そう言って、鈴村の顔を、画面に映し出した。

​「…鈴村健一、彼です。彼は、孤独に苦しみ、酒呑童子の力に魅入られ、業鬼となってしまいました」

​俺は、そう言って、鈴村の悲しい過去を、すべて話した。

​「…でも、俺は、この物語を、悲しいままで終わらせたくない！」

​俺は、そう言って、視聴者たちに語りかけた。

​「皆さんは、今、この動画を見ています。そして、皆さんの心が、この物語に、光を灯してくれています！皆さんの心が、光を放てば、この街に蔓延する邪気は、消え去ります！」

​俺は、そう言って、深々と頭を下げた。

​「…さあ、皆さんも、探偵兼陰陽師の物語に、ついてきてくださいね！」

​俺は、そう言って、配信を続けた。この配信が、この街に希望を届けるための、俺の決意表明だ。

​俺の物語は、ここから、さらに光を放っていく。

わたしの物語の続き

​アキラが、終わらない期末テストの呪いを解いたと知ったとき、わたしは、ただただ驚いた。

​そして、その配信を見たとき、わたしは、涙をこらえきれなかった。

​アキラは、わたしが「呪術師」として、裏で、アキラを危険から遠ざけようとしていたことを、すべて知っていた。そして、アキラは、その事実を、わたしを責めることなく、すべて受け入れてくれた。

​「…アキラ…」

​わたしは、スマホを握りしめ、画面に映るアキラに、そう語りかけた。

​アキラは、わたしが思っているよりも、ずっと、強くて、優しかった。

​そして、わたしは、知っていた。アキラが、この『物語』に、どれだけ深く関わっているのかを。

​わたしは、もう、アキラをただ見守るだけではいられない。

​わたしは、アキラを助けるために、そして、アキラの『物語』の結末を、見届けるために、わたし自身の物語を、始めなければならない。

​わたしは、スマホを手に、家を飛び出した。

​向かうは、アキラの探偵事務所。

​事務所に着くと、アキラは、配信を終え、ぐったりと椅子に座っていた。

​「…アキラ…」

​わたしがそう声をかけると、アキラは、ゆっくりと顔を上げた。

​「…ちーちゃん…」

​アキラの声は、どこか弱々しかった。

​わたしは、アキラの前に立ち、深々と頭を下げた。

​「…ごめん、なさい。アキラ…」

​わたしは、そう言って、涙を流した。

​「…わたし、アキラに、嘘をついてた…」

​わたしは、アキラに、わたしが「呪術師」になった理由を、すべて話した。アキラを危険から遠ざけるために、裏で、わたしがどれだけ危険なことをしてきたかを。

​アキラは、わたしの言葉を、静かに聞いてくれた。

​そして、アキラは、わたしの肩に、そっと、手を置いた。

​「…ちーちゃん、もう、大丈夫だ」

​アキラの声は、優しく、そして、温かかった。

​「…俺は、お前が、俺を心配してくれてたこと、知ってたから」

​アキラの言葉に、わたしは、涙をこらえきれなかった。

​「…アキラ…」

​わたしは、そう言って、アキラに抱きついた。

​アキラは、わたしの背中を、優しく撫でてくれた。

​わたしは、この温かさが、ずっと、ずっと、続くことを、願った。

​そして、わたしは、決意した。

​わたしは、もう、アキラを一人にはしない。

​わたしも、アキラの『物語』の中で、戦う。

​わたしは、アキラの探偵助手になる。

​わたしは、アキラの背中を、優しく叩き、言った。

​「…アキラ、わたし、あんたの探偵助手になる」

​アキラは、わたしの言葉に、一瞬、呆然とした。

​そして、アキラは、満面の笑みで、言った。

​「…よし！これで、最強のタッグ結成だ！」

​アキラは、そう言って、わたしの手を、力強く握った。

​わたしの物語は、ここから、始まる。

ライバル、そして仲間へ

​千恵の告白、そして探偵助手になると言ってくれた彼女の言葉に、俺は胸が熱くなった。最強のタッグ結成だ、そう言って俺たちは固く握手した。

​その夜、事務所に戻った俺は、すぐにパソコンを立ち上げた。今日の出来事を配信しようと思ったが、その前に、もう一人、話しておかなければならない相手がいた。

​俺は、蘆屋美奈に電話をかけた。

​「…もしもし、あんた、安倍アキラやろ？うち、あんたからの電話、待ってたで」

​電話の向こうから聞こえてきたのは、いつもの元気な関西弁だった。

​「美奈、今回の件、協力してくれて、本当にありがとうな」

​俺がそう言うと、美奈は、一瞬、黙った。

​「…ふん、礼なんて、いらんわ。うちが、あんたより先に、手柄を立てるためやからな」

​美奈は、そう言って、得意げな口調で言った。

​「…美奈、俺、お前と、協力関係を結びたい」

​俺がそう切り出すと、美奈は、電話の向こうで、驚いたような声を上げた。

​「…はぁ！？何言ってるんや、あんた！うちとあんたは、ライバルやろ！？」

​美奈の声は、どこか焦りを帯びていた。

​「ああ。ライバルだ。でも、今回の事件は、俺たちだけじゃ、どうにもならない。酒呑童子って、とんでもない大妖が、裏で糸を引いているんだ」

​俺は、そう言って、酒呑童子のこと、そして、彼が現代社会の心の闇を糧にしていることを話した。

​「…まさか、ホンマに、酒呑童子やて…！？」

​美奈の声は、驚愕に満ちていた。

​「ああ。だから、俺は、お前の力が必要なんだ。俺と、お前の力を合わせれば、酒呑童子にも、きっと、勝てる」

​俺の言葉に、美奈は、静かに言った。

​「…ふん、仕方ないな。あんたがそこまで言うなら、協力したるわ」

​美奈は、そう言って、電話を切った。

​俺は、電話を手に、安堵の息をついた。

​これで、俺には、千恵という、最強の探偵助手と、蘆屋美奈という、最強のライバルができた。

​俺の物語は、ここから、さらに複雑になっていく。

まねきねこの囁き

​蘆屋美奈との協力関係が始まり、俺の探偵稼業はさらに忙しくなった。おかげで家賃の滞納も解消でき、事務所の壁と天井の穴も、千恵の尽力…と少々の俺のバイト代…できれいに修復された。

​そんなある日、事務所のドアが、静かに開いた。そこに立っていたのは、見慣れない、そして、不気味な気配を纏った妖だった。

​「…あんた、誰だ？」

​俺がそう尋ねると、その妖は、ゆっくりと顔を上げた。その体は、まるで紫色の炎でできているようだった。

​「…我が名は、紫鬼。そなたに、依頼がある」

​紫鬼は、そう言って、俺に、ある依頼を切り出した。

​近所で、まねきねこの置物の付喪神が、暴れているらしい。その付喪神は、元々は、とある商店街の店先に置かれていた、ごく普通のまねきねこだった。しかし、何十年もの間、人々の「金運」という強い思いを受けてきた結果、付喪神となり、最近になって、突然、暴れ始めたという。

​その付喪神は、人々に幸運をもたらすどころか、逆に、不幸をもたらしている。商店街の店は、次々と潰れ、人々は、借金を抱え、絶望している。

​「…その付喪神を、どうか、浄化してほしい」

​紫鬼は、そう言って、俺に深々と頭を下げた。

​「…なんで、俺に…？」

​俺がそう尋ねると、紫鬼は、静かに答えた。

​「…我が、その付喪神を浄化するには、私の力が、強すぎる。下手をすれば、その付喪神を、完全に消滅させてしまう。だが、そなたの力は、人々の心の光を借りて、浄化する力。それが、その付喪神を救う、唯一の方法なのだ」

​紫鬼の言葉に、俺は納得した。そして、報酬について尋ねた。

​「報酬は、何だ？」

​俺がそう尋ねると、紫鬼は、ニヤリと笑った。

​「…成功報酬は、私との契約だ。そなたの『物語』に、私も加えてほしい」

​紫鬼は、そう言って、俺に、手を差し出した。

​俺は、紫鬼の言葉に、驚き、そして、少しだけ、ワクワクした。

​「…よし、依頼、引き受けよう！」

​俺は、そう言って、紫鬼と、硬い握手を交わした。

​こうして、俺は、新たな依頼を受けた。

​今回の依頼は、まねきねこの付喪神の浄化。しかし、その裏には、酒呑童子の『物語』が隠されている。

​俺の物語は、ここから、さらに複雑になっていく。

紫鬼からの依頼を受け、俺は早速、件の商店街に向かった。

​「…おいおい、マジかよ…」

​商店街は、俺が知っている活気に満ちた姿とは、全く違っていた。店はほとんどシャッターが閉まり、通りには誰もいない。まるでゴーストタウンだ。

​「…ご主人様、この商店街、邪気で満ちてます…！」

​俺の頭の中に、白鬼の声が響く。

​「…ああ。このまねきねこ、相当な邪気を溜め込んでるな…」

​俺は、そう呟き、商店街の奥にある、目的の店へと向かった。そこは、小さな雑貨店だった。店の前には、一体のまねきねこの置物が、不気味な笑みを浮かべていた。

​「…こいつか…」

​そのまねきねこからは、強烈な邪気が放たれていた。まるで、何かの怨念が、まねきねこの中に、閉じ込められているかのようだ。

​「…お前、どうして、こんなことを…！」

​俺がそう叫ぶと、まねきねこは、ゆっくりと顔を上げた。

​「…ふふふ、まさか、あんたのような若造が、私に気づくとはな」

​まねきねこは、そう言って、ニヤリと笑った。その声は、老人のように、しわがれていた。

​「…お前、酒呑童子に操られているのか！？」

​俺がそう尋ねると、まねきねこは、フッと鼻で笑った。

​「…酒呑童子？あんな小物の力に、私が操られるとでも思ったか？」

​まねきねこの言葉に、俺は息をのんだ。

​「…どういうことだよ…！」

​俺がそう叫ぶと、まねきねこは、静かに語り始めた。

​「…私は、何十年も、この店で、人々の『金運』という強い思いを受けてきた。しかし、人々は、私に、ただ、金運を求めるだけだった。私のことを、ただの道具として見ていた…」

​まねきねこの言葉に、俺は胸が締め付けられるような思いだった。

​「…私は、愛されたかった。ただ、それだけだったのに…！」

​まねきねこは、そう言って、涙を流した。その涙は、まるで、血のように、赤かった。

​「…私は、人々の心の闇に、絶望した。だから、私は、この街の人々に、絶望を与えることにしたのだ！」

​まねきねこは、そう言って、俺に襲いかかってきた。

​俺は、護符を構え、まねきねこに向き合った。

​「…くそっ、このまねきねこ、酒呑童子とは関係ねぇのか…！？」

​俺は、そう心の中で叫びながら、まねきねこの攻撃をかわした。

​俺の物語は、ここから、さらに複雑になっていく。

5つの視点

​「…くそっ、このまねきねこ、酒呑童子とは関係ねぇのか！？」

​俺は、そう心の中で叫びながら、まねきねこの攻撃をかわした。まるで生きているかのように動き回るまねきねこの置物は、鋭い爪で俺を引っ掻こうとしてくる。その攻撃からは、純粋な悪意と、深い悲しみが感じられた。

​俺は、護符を構え、まねきねこに向き合った。しかし、俺の護符は、まねきねこの体に、ほとんど効果がない。

​「…ダメだ！こいつは、邪気で満ちてるだけじゃない！強い怨念が、こいつの核になってる…！」

​俺は、そう心の中で叫び、すぐに考えを切り替えた。

​このまねきねこは、攻撃するだけでは倒せない。まずは、こいつの怨念の正体を探る必要がある。

​「おい、みんな！力を貸してくれ！このまねきねこの怨念の正体を、探るぞ！」

​俺は、そう叫び、5匹の鬼たちに、俺の体から放たれる力を、まねきねこに放つよう命じた。

​赤鬼の力で、このまねきねこの根源を、青鬼の力で、怨念に蝕まれた魂を、緑鬼の力で、怨念の繋がりを、白鬼の力で、怨念の悲しみを、そして、黒鬼の力で、怨念の憎しみを、探り始めた。

​「…見えたぞ…！」

​俺は、目を閉じ、5匹の鬼の力が、まねきねこの中を駆け巡るのを感じた。

​まねきねこの怨念は、人々が放つ、「金運」という、貪欲な欲求だった。人々は、まねきねこに、金運を求めた。だが、彼らは、まねきねこに、愛を与えることはなかった。

​まねきねこは、ただ、人々に利用されるだけの道具だった。その事実に、まねきねこは、深く傷つき、絶望し、怨念を抱いたのだ。

​「…そうか。こいつは、酒呑童子とは関係ねぇ。ただ、人々の心の闇に、絶望しただけなんだ…！」

​俺は、そう確信し、目を開けた。

​俺の目の前には、未だ、不気味な笑みを浮かべているまねきねこがいた。しかし、俺には、その笑顔の奥にある、深い悲しみが、見えていた。

​「…まねきねこ、俺は、お前の悲しみを、ちゃんとわかっまねきねこてやったぜ」

​俺は、そう呟き、護符を構えた。

​俺の物語は、ここから、さらに複雑になっていく。

商店街のライブ配信

​「はい、どうもー！探偵兼陰陽師の安倍アキラです！」

​俺は、シャッターが閉まった商店街で、スマホを構え、配信を始めた。夜の商店街は、不気味な雰囲気に包まれている。

​「今回はですね、とんでもない妖怪と対峙しています！…って言っても、皆さん、びっくりしないでくださいね？」

​俺がそう言うと、コメント欄は、『え？』『何？何？』といったコメントで溢れた。

​「こいつです！じゃーん！」

​俺は、そう言って、カメラを、不気味な笑みを浮かべている、まねきねこに向けた。

​「…皆さん、見てください。この子、ただのまねきねこじゃないんです。人々の心の闇に絶望した、付喪神なんです！」

​俺がそう告げると、コメント欄は静まり返った。

​「…この子は、何十年も、人々の『金運』という強い思いを受けてきました。でも、人々は、この子に、愛を与えることはなかった。ただ、道具として見ていたんです…」

​俺は、そう言って、まねきねこの悲しい物語を、すべて話した。

​「…そして、この子は、人々の心の闇に絶望し、この街の人々に、絶望を与えることにしたんです。商店街が、こんなにも寂れてしまったのも、この子の仕業です！」

​俺がそう叫ぶと、コメント欄は、『可哀想…』『そんなことになってたんだ…』といった、同情の声で溢れた。

​「…でも、俺は、この子を、救いたい！この子の悲しみを、終わらせてやりたい！」

​俺は、そう言って、まねきねこに、ゆっくりと近づいていった。

​「…大丈夫だ。俺が、お前の悲しみを、終わらせてやる」

​俺は、そう言って、まねきねこに、そっと手をかざした。

​「…みんな、力を貸してくれ！俺の護符は、この子に届かない！でも、みんなの心の光なら、この子に届くはずだ！」

​俺は、そう叫び、視聴者たちに、協力を求めた。

​すると、コメント欄には、『頑張れ！』『応援してる！』といった、応援のコメントが溢れた。

​「…さあ、皆さんも、探偵兼陰陽師の物語に、ついてきてくださいね！」

​俺は、そう言って、まねきねこにお祓いの呪文を唱え始めた。この配信が、まねきねこの悲しみを終わらせる、最後の舞台となることを信じて。

悲しみよ、安らかに

​俺は、視聴者たちの心の光を借りて、まねきねこにお祓いの呪文を唱え始めた。

​「…五行の理を司る者よ、今こそ、我が召喚に応え、姿を現せ…！」

​俺がそう叫ぶと、俺の手から、白い光が放たれ、まねきねこの体を包み込んだ。

​「う、うわああああああああああああああ！」

​まねきねこは、苦しみの叫びを上げ、その体から、黒い邪気が、少しずつ消えていくのが見えた。

​「…私は、愛されたかった…！」

​まねきねこは、そう言って、涙を流した。

​「大丈夫だ！お前の悲しみは、俺が、そして、みんなが、わかってやったぜ！」

​俺は、そう叫び、さらに力を込めた。すると、俺の配信のコメント欄には、「まねきねこ、愛してる！」「お前は、道具じゃない！」といった、応援の言葉が溢れ始めた。

​「…あ、ああ…！」

​まねきねこは、視聴者たちの心の光を受け、その体を覆っていた黒い邪気が、完全に消え去った。

​そして、まねきねこは、元の姿に戻り、静かに地面に倒れ込んだ。

​「…ありがとう…」

​まねきねこは、そう言って、光の粒子となって消滅した。

​俺は、まねきねこが消えた場所を、じっと見つめていた。その瞳には、涙が浮かんでいた。

​報酬は紫鬼との契約

​まねきねこの事件を解決し、俺は事務所に戻った。

​「…ご主人様、見事でした！」

​「承知仕りました！ご主人様は、最高です！」

​「俺、ご主人様のこと、もっと好きになったっす！」

​「ご主人様、よく頑張りましたね！」

​「…フン、まぁ、見どころはあったな」

​5匹の鬼たちが、俺を褒めてくれた。俺は、少し照れくさくなった。

​そんな俺の元に、一本の電話がかかってきた。

​「…もしもし、安倍アキラやろ？うち、あんたの配信、見てたで？」

​電話の向こうから聞こえてきたのは、蘆屋美奈の声だった。

​「…美奈、見ててくれたのか…！」

​俺がそう言うと、美奈は、フッと笑った。

​「…ふん、当たり前やろ？うち、あんたのライバルなんやからな」

​美奈は、そう言って、俺に、ある条件を突きつけた。

​「…今回の手柄は、うちのモンや。あんたは、うちの探偵助手として、働いてもらうで？」

​美奈は、そう言い放った。

​「…くそっ、あの関西弁のチビ、相変わらず、食えない奴だ…」

​俺は、そう心の中で呟いた。

​そんな俺の前に、再び、紫鬼が現れた。

​「…見事でした、安倍アキラ。この依頼、無事に解決ですね」

​紫鬼は、そう言って、俺に深々と頭を下げた。

​「…それで、報酬は？」

​俺がそう尋ねると、紫鬼は、ニヤリと笑った。

​「…成功報酬は、私との契約だ。そなたの『物語』に、私も加えてほしい」

​紫鬼は、そう言って、俺に、手を差し出した。

​俺は、紫鬼の言葉に、驚き、そして、少しだけ、ワクワクした。

​「…よし、依頼、引き受けよう！」

​俺は、そう言って、紫鬼と、硬い握手を交わした。

​こうして、俺は、新たな仲間、紫鬼と共に、酒呑童子の『物語』を阻止するため、再び立ち上がるのだった。