第4話

​新たなる出会い、緑の鬼

​「うっ…」

​俺は、鈍い頭痛とともに目を覚ました。全身が軋み、激しい痛みが走る。どうやら、酒呑童子にやられたらしい。

​「…くそ、やられっぱなしじゃ、終われない」

​俺は、なんとか体を起こし、周囲を見渡した。見知らぬ場所に放り出されたようだ。ここは、どこだ?

​俺は、スマホを取り出し、地図アプリを開いた。すると、俺がいる場所が、沖縄のジャングルの中であることがわかった。

​「…マジかよ」

​俺は、呆然とした。

​「酒呑童子の野郎、どこに行きやがった…!」

​俺は、怒りを胸に、酒呑童子の痕跡を探すことにした。

​だが、その前に、俺は、新たな力を手に入れなければならない。酒呑童子の圧倒的な力の前に、俺は無力だった。前鬼と後鬼を召喚することもできるが、あれはリスクが大きすぎる。

​「…そうだ。新しい鬼を仲間にしよう」

​俺は、そう閃いた。

​俺は、スマホのカメラをオンにし、配信を始めた。

​「はいどうもー!探偵兼陰陽師の安倍アキラです!いやー、まさかの展開で、今、沖縄のジャングルの中にいます!」

​俺は、画面に向かって、いつものお調子者な笑顔で話しかけた。

​「まあ、詳しいことは、今回の動画で話すとして…、皆さん、見てください!このジャングル、とんでもない邪気が渦巻いてるんです!」

​俺は、そう言って、周囲の様子をカメラに映した。

​そして、俺は、新たな鬼を探すため、ジャングルの中を歩き始めた。

​「…赤鬼くん、青鬼くんがいない今、新しい仲間を見つけないと…」

​俺は、そう呟きながら、邪気の気配を探った。

​すると、俺の前に、一匹の鬼が現れた。

​その鬼は、全身が緑色で、小さな角が生えていた。その顔には、どこか寂しげな表情が浮かんでいた。

​「…お前は、誰だ?」

​俺がそう尋ねると、緑色の鬼は、怯えたように後ずさりした。

​「…俺は、緑鬼…」

​緑鬼は、そう言って、俯いた。

​「…どうして、そんなに悲しい顔をしてるんだ?」

​俺がそう尋ねると、緑鬼は、震える声で語り始めた。

​「…俺は、このジャングルに住んでいたキジムナーたちを、守ることができなかった…」

​緑鬼の言葉に、俺は眉をひそめた。

​「…お前も、酒呑童子にやられたのか?」

​俺がそう尋ねると、緑鬼は頷いた。

​「…酒呑童子は、俺の仲間たちを操り、人間を襲わせた。俺は、それを止めようとしたが、奴の力には敵わなかった…」

​緑鬼は、そう言って、悔しそうに拳を握りしめた。

​俺は、そんな緑鬼の姿を見て、彼を仲間にすることを決めた。

​「…なあ、緑鬼。俺と一緒に、酒呑童子と戦わないか?」

​俺がそう言うと、緑鬼は、驚いた表情で俺を見つめた。

​「…お前、俺を…仲間にしてくれるのか?」

​俺は、深く頷いた。

​「ああ。俺は、探偵兼陰陽師だ。そして、俺の仕事は、人を助けること。お前も、俺が助けてやる」

​俺の言葉に、緑鬼は、涙を流した。

​「…ありがとう…!」

​緑鬼は、そう言って、俺の前にひざまずいた。

​こうして、俺は、新たな仲間、緑鬼と共に、酒呑童子の『物語』を阻止するため、再び立ち上がるのだった。


安倍アキラ - 探偵兼陰陽師【#2 沖縄で新種の妖怪を捕獲!?】

​コメント欄

​陰陽師はじめましたch

ガチで沖縄行ってるじゃん!行動力やばすぎだろw

​霊感ゼロの日常

緑の鬼、マジで可愛い…アキラくん、いい奴すぎる。チャンネル登録した!

​JK探偵ゆいゆい

「酒呑童子」とか言ってるし、完全に壮大な物語になってて面白すぎるwww

​真実を求める者

キジムナーが呪われてたって話、鳥肌立った…まさか沖縄まで魔の手が伸びてるとは。

​家賃を稼ぎたい

緑鬼くんも仲間になったし、これで家賃払い放題じゃん!頑張れアキラ!

​通りすがりの陰陽師

あの緑色の鬼…まさか、キジムナーか?…いや、それにしては気配が強すぎる。アキラくん、一体何と契約したんだ?

​千恵ちゃん推し

アキラくん、今回はちゃんと家賃稼いでね!千恵ちゃんが心配してるよ!

​名無しのごんべい

相変わらず口ぶりはふざけてるけど、やることが本格的すぎて笑えるwww

​業鬼に襲われた者

鈴村健一、そして今度はキジムナー…。俺たちの記憶は消えても、アキラは全てを覚えている。この物語に終わりは来るのか?

​通りすがりの妖怪

ふん、人間ごときが我ら妖怪に逆らうとはな。いい気なものだ。せいぜい精進するがいい。


緑鬼と俺の日常

​沖縄での一件から数日後、俺は無事に元の街に帰還した。壱馬たちとの沖縄旅行は、とんでもない事件に巻き込まれたが、結果的に彼らと打ち解けることができた。そして、何より、新たな仲間、緑鬼を手に入れた。

​緑鬼は、赤鬼くんや青鬼くんと同じように、俺の式神になった。ただ、彼らと少し違うのは、その能力だ。

​「よし、まずはチャリで試してみるか!」

​俺は、自分の愛車である、年季の入ったママチャリに、緑鬼の力を憑依させた。

​「ヘーン∠( ˙-˙ )/シン!」

​俺がそう叫ぶと、ママチャリは、緑色の光を放ち、まるで生きているかのように、軽々と走り出した。

​「うおお!すげぇ!」

​俺は、そのスピードに驚き、興奮を抑えきれずに叫んだ。

​「ご主人様、どうっすか?」

​緑鬼の声が、俺の頭の中に響く。

​「最高だぜ!緑鬼!」

​俺は、そう言って、街中を駆け巡った。

​次に、俺は、緑鬼の力を、バットに憑依させた。

​「ヘーン∠( ˙-˙ )/シン!」

​俺がそう叫ぶと、バットは、まるで木の葉のように軽くなり、その威力は、何倍にも跳ね上がった。

​「これなら、どんな妖怪でも、一撃で倒せそうだぜ…!」

​俺は、そう呟き、満足そうに頷いた。

​そして、最後に、俺は、緑鬼の力を、自分の肉体に憑依させた。

​「ヘーン∠( ˙-˙ )/シン!」

​俺がそう叫ぶと、俺の体は、緑色の光を放ち、俺の身体能力は飛躍的に向上した。

​「うおおっ!全身が軽すぎる…!」

​俺は、そう言って、その場で何度もジャンプしてみた。すると、俺のジャンプ力は、まるでウサギのように、高くなっていた。

​「よし、これなら、見回りも楽勝だぜ!」

​俺は、そう言って、近所の見回りに出かけた。

​近所の見回りは、探偵兼陰陽師である俺の、日課だ。いつ、どこで、妖怪が人間に悪さを働くかわからない。

​俺は、緑鬼の力を借りて、街中を駆け巡った。すると、一匹の猫が、道端で倒れているのを見つけた。

​「…猫?」

​俺がそう呟くと、緑鬼の声が聞こえた。

​「ご主人様、あの猫、邪気に当てられてます!」

​緑鬼の言葉に、俺は眉をひそめた。

​「…まさか、こんなところまで、酒呑童子の力が…!」

​俺は、そう確信し、その猫に近づいていった。

​猫は、苦しそうに息をしており、その体からは、微かな邪気が放たれていた。

​俺は、リュックから護符を取り出し、猫に護符をかざした。すると、猫の体から、黒い靄のようなものが、少しずつ消えていった。

​猫は、元気を取り戻し、俺の足元に体をすり寄せてきた。

​「よかった、元気になったな」

​俺は、そう言って、猫を撫でた。

​その様子を見て、緑鬼は言った。

​「…ご主人様。俺、やっぱり、ご主人様の役に立てて、嬉しいっす!」

​緑鬼の言葉に、俺は嬉しくなった。

​「…ああ。俺も、お前と出会えてよかったぜ」

​俺は、そう言って、緑鬼と共に、再び見回りへと向かった。酒呑童子の『物語』は、まだ、終わっていない。


俺は、緑鬼の力を借りて、街の見回りを行っていた。

​酒呑童子の力が、この街にも及んでいる。そのことを知ってから、俺は、毎日、この見回りを欠かさずにいた。

​「…ご主人様、あの角を曲がった先に、なんかヤバい気配がします!」

​緑鬼の声が、俺の頭の中に響く。

​「よし、行ってみるか!」

​俺は、そう言って、角を曲がった。すると、そこには、一人の老人が、静かにベンチに座っていた。

​その老人は、どこにでもいそうな、ごく普通の老人に見えた。しかし、俺の勘は、この老人が、普通ではないことを告げていた。

​「…あんた、誰だ?」

​俺がそう尋ねると、老人は、ゆっくりと顔を上げた。

​「…ふふふ、まさか、君のような若造が、私に気づくとはな」

​老人は、そう言って、にやりと笑った。その顔には、どこか不気味な雰囲気が漂っていた。

​「…お前、もしかして、妖怪か?」

​俺がそう尋ねると、老人は、満足そうに頷いた。

​「…我が名は、ぬらりひょん」

​ぬらりひょん…それは、日本の妖怪の総大将だ。その名前に、俺は息をのんだ。

​「…どうして、あんたがこんなところに…」

​俺がそう尋ねると、ぬらりひょんは、フッと笑った。

​「…何、酒呑童子と、君の『物語』に、興味を持っただけさ」

​ぬらりひょんの言葉に、俺は驚愕した。

​「…どうして、俺たちのことを…」

​俺がそう尋ねると、ぬらりひょんは、ゆっくりと立ち上がった。

​「…酒呑童子の力の封印の解放は、全日本の妖の悲願だ。だから、我々は、君と酒呑童子の動向を、常に監視している」

​ぬらりひょんの言葉に、俺は背筋が凍るような思いだった。

​「…お前たち、酒呑童子に協力するつもりか?」

​俺がそう尋ねると、ぬらりひょんは、にやりと笑った。

​「…さあな。それは、君と酒呑童子の**『物語』**の結末次第だ」

​ぬらりひょんは、そう言って、俺の前に、ゆっくりと近づいてきた。

​「…ただ、忠告しておく。酒呑童子は、君の想像を遥かに超える存在だ。彼の『物語』に、安易に巻き込まれるな」

​ぬらりひょんは、そう言って、闇夜に溶けるように、姿を消した。

​俺は、一人、その場に立ち尽くしていた。

​酒呑童子だけでなく、ぬらりひょんまで…。俺は、とんでもない妖怪たちの抗争に、巻き込まれてしまったようだ。

​俺の物語は、ここから、さらに複雑になっていく。


陰キャたちの誘い

​ぬらりひょんとの遭遇から数日後、俺は夏休み期間中、再び平和な日常に戻っていた。相変わらず家賃はギリギリだし、配信の視聴者数も爆発的に増えたわけじゃない。でも、緑鬼を仲間にできたし、俺の力も着実に上がっている。

​そんな俺に声をかけてきたのは、転校初日に俺の自己紹介に爆笑した、クラスのオタクグループの鈴村健一…だったはずの、佐野涼太と、彼の仲間たちだった。彼らもまた、鈴村が消えたことで、彼の代わりにリーダー格になったようだった。

​「よう、安倍くん。暇なら俺たちとネトゲしない?」

​涼太は、そう言って、俺にネトゲの招待コードを送ってきた。

​「ネトゲ?なんで俺を?」

​俺がそう尋ねると、涼太は、少し照れたように笑った。

​「いや、安倍くん…その、俺たち、キミの配信見てるんだ。で、キミなら、俺たちが今、ハマってるネトゲで起きてる事件も、解決できるんじゃないかって…」

​涼太の言葉に、俺は思わずゾッとした。ネトゲの事件…つまり、また妖が絡んでいるということか。

​「…どんな事件なんだ?」

​俺がそう尋ねると、涼太は、真剣な表情で言った。

​「最近、ネトゲの中で、『バグの王』って呼ばれるプレイヤーが現れてさ。そいつに会うと、必ず、アカウントが消されたり、データが消去されたりするんだ。まるで、呪われているみたいに」

​俺は、その言葉に、ピンと来た。酒呑童子の不完全な力が、ネトゲの世界にまで影響を及ぼしているのか?

​俺は、涼太たちの誘いを引き受けることにした。今回の依頼は、ネトゲの中だ。リアルの危険は少ない。それに、ネトゲの中の妖なら、俺の力でも、なんとかなるだろう。

​こうして、俺は、涼太たちと共に、ネトゲの世界へと足を踏み入れることになった。

​ネトゲの世界に潜む妖

​ネトゲの世界は、俺が想像していたよりも、遥かにリアルだった。剣と魔法の世界が、目の前に広がっていた。

​「うおお!すげぇ!」

​俺は、興奮を抑えきれずに叫んだ。

​涼太は、俺にゲームの操作方法を教えてくれた。俺は、陰陽師のスタイルで、ネトゲの世界を探索することにした。

​「涼太、その『バグの王』ってやつは、どこにいるんだ?」

​俺がそう尋ねると、涼太は、地図を開いて、ある場所を指さした。

​「この先にある、『呪われた森』に、いるらしいんだ」

​俺たちは、涼太の言葉に従い、森へと向かった。

​森の中に入ると、周囲の空気が一気に変わった。まるで、誰かの怨念が渦巻いているかのように、邪悪な気配が漂っていた。

​「…やっぱり、ここにもいたか…」

​俺は、そう呟き、リュックから護符を取り出した。

​「どうしたの、安倍くん?」

​涼太がそう尋ねると、俺は、護符を掲げ、周囲に語りかけた。

​「…俺は、探偵兼陰陽師だ。この森にいる、悪霊、出てきやがれ!」

​俺がそう叫ぶと、森の奥から、一つの影が現れた。

​その影は、まるでバグのように、身体の一部が欠け、姿を歪ませていた。その顔には、怨念に満ちた表情が浮かんでいた。

​「…なんだ、こいつは…」

​俺は、その影に、見覚えのない、禍々しい力を感じた。

​「…貴様、俺の邪魔をするのか…!」

​影は、そう言って、俺に襲いかかってきた。

​俺は、護符を構え、その影と対峙した。しかし、その影は、俺の護符をすり抜け、俺の体に、直接、触れてきた。

​「ぐっ…!」

​その瞬間、俺の全身に、激しい痛みが走った。そして、俺の視界が、歪んでいくのを感じた。

​「…これが、『バグの王』の力か…!」

​俺は、その場で、倒れ込むしかなかった。


配信者、バグの王を暴く

​バグの王の攻撃を受けて、俺はネトゲの世界で倒れ込んだ。しかし、俺の意識はまだある。ゲーム内のステータス画面を見ると、俺のHPはゼロになっていた。つまり、ゲームオーバーだ。だが、このまま引き下がるわけにはいかない。

​「…くそっ、見事にやられたぜ」

​俺はそう呟き、ゲーム内のカメラ機能をオンにした。

​「はいどうもー!安倍アキラです!いやー、まさかの展開で、今、俺、ネトゲの中で倒れちゃってます!」

​俺は、画面に向かって、いつものお調子者な笑顔で話しかけた。コメント欄は、俺の行動に驚きと興奮のコメントで溢れていた。

​「『マジかよ!』って?いや、マジですよ!でも、ご安心ください!俺は探偵ですから!こんなことで諦めるわけないじゃないですか!」

​俺は、そう言って、カメラの焦点を、バグの王に合わせていった。

​バグの王は、俺を倒した後も、その場に留まっていた。その姿は、まるでバグったプログラムのように、身体の一部が欠け、姿を歪ませていた。

​「…みんな、見てください!こいつが、今回の依頼の犯人、バグの王です!」

​俺は、そう叫び、バグの王の姿を、配信の画面に大きく映し出した。

​すると、バグの王は、俺の行動に気づき、怒りの声を上げた。

​「…貴様…!俺の姿を、世間に晒す気か…!」

​バグの王は、そう言って、俺に襲いかかろうとした。しかし、俺は、ゲーム内では倒れている。奴は、俺に攻撃することができない。

​「へへっ、残念だったな!俺は、お前と戦う前に、お前の姿を世間に晒すこと、それが探偵としての、俺の仕事なんだよ!」

​俺は、そう言って、バグの王を挑発した。

​バグの王は、俺の挑発に激昂し、その姿をさらに歪ませた。その姿は、もはやバグではなく、まるで怨霊のようだった。

​「…貴様…!絶対に許さん…!」

​バグの王は、そう叫び、その場から姿を消した。

​俺は、バグの王の姿を配信で捉えることに成功した。これで、視聴者たちは、俺の言葉を信じてくれるだろう。

​「よし!掴みはOKだな!」

​俺は、そう心の中でガッツポーズをした。

​「さあ、皆さんも、探偵兼陰陽師の物語に、ついてきてくださいね!」

​俺は、そう言って、配信を続けた。この配信が、俺と酒呑童子の『物語』を、世間に広める第一歩になることを信じて。


呪いの正体、そして新たな仲間

​ネトゲの中で、バグの王の姿を配信で捉えた俺は、すぐにゲームをログアウトし、涼太たちに連絡を取った。

​「涼太、あのバグの王って、ただのバグじゃない。あれは、邪気に汚染された魂だ」

​俺がそう告げると、涼太たちは驚愕した。

​「じゃあ、俺たちのアカウントを消したりしたのも、そいつの仕業なのか…?」

​「ああ。たぶん、酒呑童子の力が、ネトゲの世界にも影響を及ぼして、そこに潜んでいた怨霊が、力を得たんだ」

​俺はそう言って、涼太たちに、今回の事件の真相をすべて話した。酒呑童子のこと、そして、俺が探偵兼陰陽師であることも。

​「…信じられない…」

​涼太たちは、俺の話を信じられないといった顔をしていた。しかし、俺が配信で捉えたバグの王の姿を見せると、彼らは、俺の言葉を信じてくれた。

​「…安倍くん、俺たちも何か手伝えること、ないかな?」

​涼太は、そう言って、俺に協力を申し出てくれた。

​俺は、彼らの言葉に、少しだけ心が温かくなった。探偵として、陰陽師として、そして人間として、彼らの信頼を得ることができた。

​「…ありがとう」

​俺は、そう言って、涼太たちと共に、酒呑童子の企みを阻止するため、動き出すのだった。

​現れた少女、そして…

​涼太たちと別れ、俺は一人、夜道を歩いていた。

​バグの王の件は、解決した。しかし、酒呑童子の不完全な力は、まだ、この街に蔓延している。

​俺は、酒呑童子の力の元凶を探るため、街を彷徨っていた。

​すると、俺の前に、一人の少女が現れた。

​その少女は、白いワンピースを着ており、顔には、どこか悲しげな表情が浮かんでいた。

​「…君は、誰だ?」

​俺がそう尋ねると、少女は、何も答えず、ただ俺をじっと見つめていた。その瞳は、まるで、底なし沼のように、深く、そして、暗かった。

​「…もしかして、お前も…」

​俺は、その少女から、微かな邪気を感じ取った。

​「…俺は、探偵兼陰陽師だ。お前を助けてやる」

​俺はそう言って、少女に近づいていった。

​すると、少女は、突然、悲鳴を上げた。その声は、まるで、ガラスが砕けるように、鋭く、そして、悲しかった。

​「いやあああああああああああああああ!」

​少女の悲鳴と共に、周囲の空気が、一気に歪んでいくのを感じた。

​「…なんだ、これは…!」

​俺は、驚愕した。

​少女の体から、黒い邪気が、渦を巻くように噴き出していた。その邪気は、まるで、生き物のように蠢き、俺に襲いかかってきた。

​「ぐっ…!」

​俺は、その邪気に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

​「…まさか、お前が、酒呑童子…!?」

​俺はそう叫び、少女を見つめた。しかし、そこにいたのは、酒呑童子ではなく、見慣れた男だった。

​「…まさか、お前が…」

​俺は、その男の顔を見て、息をのんだ。

​そこにいたのは、俺が倒したはずの、鈴村健一だった。

​「ふふふ…久しぶりだな、安倍アキラ」

​鈴村は、そう言って、にやりと笑った。その瞳は、以前よりも、さらに邪悪な光を放っていた。

​俺は、再び、この事件の深淵に、足を踏み入れたことを自覚するのだった。


終わらない悪夢

​目の前に現れたのは、俺が倒したはずの、鈴村健一だった。

​「…鈴村…!なんで、お前が…!」

​俺は、思わず叫んだ。前鬼と後鬼の力で、確実に消滅したはずだ。

​「…前鬼と後鬼の力で、殺られたはずだ…!」

​俺の言葉に、鈴村は、にやりと笑った。

​「…ふふふ、残念だったな。俺は、君が思っているような、単純な存在じゃない」

​鈴村は、そう言って、俺にゆっくりと近づいてきた。

​「…どういうことだよ…!」

​俺がそう叫ぶと、鈴村は、楽しそうに笑った。

​「…君は、『業鬼』の定義を知らない。業鬼は、因果の呪いによって生まれた存在。だから、たとえ体が滅ぼされようと、因果が残る限り、何度でも蘇る」

​鈴村の言葉に、俺は息をのんだ。因果…つまり、俺が彼を殺したという、その事実が、彼を蘇らせたのか?

​「…まさか…」

​俺がそう呟くと、鈴村は、フッと笑った。

​「…そう、そのまさかさ。君が私を殺したという因果が、私を呼び戻した。そして、私は、君に、新しい呪いをかける」

​鈴村は、そう言って、俺に手をかざした。

​「ぐっ…!」

​俺は、全身に激しい痛みが走り、その場に倒れ込んだ。

​「…この呪いは、君の『物語』を、さらに面白くするだろう」

​鈴村は、そう言って、俺の意識が遠のいていくのを見て、満足そうに笑った。

​俺は、意識を失う寸前、鈴村の言葉が、俺の頭の中に深く刻まれていくのを感じた。

​俺は、鈴村を倒したと思っていた。だが、それは、彼の『物語』の始まりでしかなかった。

​俺の物語は、ここから、さらに複雑になっていく。


終わりのない不安

​アキラが沖縄から帰ってきて、わたしは少しだけ安心していた。家賃の心配も、ほんの少しだけ和らいだ。アキラの配信も、毎日チェックしている。お調子者で、ふざけたポーズばかりしているけど、わたしは、その姿に、いつも勇気をもらっている。

​「…アキラ、無茶だけはしないでね」

​わたしは、スマホの画面に映るアキラに、そう語りかける。

​そんなわたしの元に、アキラから連絡が入ったのは、その日の夜遅くだった。

​「もしもし、ちーちゃん?」

​アキラの声は、いつもと違い、どこか弱々しかった。わたしは、胸騒ぎを覚えた。

​「アキラ?どうしたの?もしかして、また怪我でもしたの?」

​わたしがそう尋ねると、アキラは、弱々しい声で言った。

​「いや、大丈夫。ただ、ちょっと、厄介なことになってさ…」

​アキラは、電話越しに、鈴村が再び現れたこと、そして、彼が業鬼として蘇ったことを話してくれた。

​「…そんな…!」

​わたしは、言葉を失った。アキラが命がけで倒した相手が、再び現れたなんて。

​「…ごめん、ちーちゃん。俺、また、お前を心配させちまったな」

​アキラの言葉に、わたしは、涙をこらえきれなかった。

​「…馬鹿!馬鹿!馬鹿!」

​わたしは、そう叫び、泣きながらアキラに訴えた。

​「…どうして、そんな危ないことばかりするの!?アキラが怪我したら、わたし…わたし、どうすればいいの…!」

​わたしの言葉に、アキラは何も答えなかった。ただ、電話の向こうから、優しい、だけど、悲しそうな息遣いが聞こえてくるだけだった。

​「…ちーちゃん、俺は…」

​アキラの声が、少しだけ震えていた。

​「…俺は、探偵兼陰陽師だ。そして、俺の仕事は、人を助けること。それに、これは、俺の『物語』なんだ」

​アキラの言葉に、わたしは、アキラが、もう、わたしが思っているような、ただのお調子者な高校生ではないことを知った。

​アキラは、もう、わたしが守ってあげられるような存在じゃなくなっていた。

​「…アキラ、どうか、無事でいて…」

​わたしは、そう呟き、電話を切った。

​そして、わたしは、アキラの『物語』に、わたしも関わっていることを知っていた。

​わたしは、もう、アキラをただ見守るだけではいられない。

​わたしは、アキラを助けるために、そして、アキラの『物語』の結末を、見届けるために、わたし自身の物語を、始めなければならない。


呪いの深淵

​千恵との電話を切った後、俺は再び立ち上がった。全身に激しい痛みが走る。鈴村にかけられた呪いだ。

​「…くそっ、このままじゃ、本当にアイツの好きにさせられる…!」

​俺は、事務所に戻り、今回の事件に関する情報をすべて書き出した。

​業鬼、因果の呪い、そして鈴村の復活。

​俺が鈴村を倒したという因果が、彼を蘇らせた。つまり、俺が彼を倒そうとすればするほど、彼は何度でも蘇る。そして、彼の呪いは、俺の**『物語』**を、さらに深く、暗いものへと変えていく。

​「…どうすればいいんだ…?」

​俺は、頭を抱えた。

​そんな俺に、新たな依頼が舞い込んできた。

​依頼主は、高橋峰子先生だった。

​先生の頼み

​翌日、俺は学校で高橋先生と会った。彼女は、俺を見るなり、安堵の表情を浮かべた。

​「安倍くん…よかった。無事だったのね」

​高橋先生は、そう言って、俺の顔を覗き込んだ。

​「ええ、まあ。…それより、先生、依頼って?」

​俺がそう尋ねると、高橋先生は、真剣な表情で言った。

​「…最近、この学校で、また奇妙なことが起きているの。生徒たちが、突然、記憶を失ったり、幻覚を見たり…」

​高橋先生の言葉に、俺は背筋が凍るような思いだった。それは、鈴村がかけた呪いの影響だ。

​「…そして、あの事件が起きたの」

​高橋先生は、そう言って、俺に一枚の写真を見せた。そこに写っていたのは、学校の屋上から、誰かが飛び降りたような、痛ましい現場だった。

​「…これは…」

​「…この生徒は、いじめられていたわけでも、家庭に問題があったわけでもない。ただ、突然、屋上から飛び降りたの。まるで、何かに操られているみたいに…」

​高橋先生は、そう言って、悲しげに俯いた。

​俺は、高橋先生の言葉から、鈴村が、この学校の生徒たちを操り、自殺に追い込んでいることを知った。

​「…先生、依頼、引き受けます」

​俺は、そう言って、高橋先生に向き直った。

​「…ありがとう、安倍くん」

​高橋先生は、そう言って、涙を流した。

​俺は、高橋先生の涙を見て、再び、決意を新たにした。

​鈴村を、そして、その背後にいる酒呑童子を、絶対に止めてやる。

​俺の物語は、ここから、さらに激しくなっていく。


​承知しました。現代社会の負の側面が酒呑童子の封印を緩める力になっている、という設定を盛り込んで物語を執筆します。

​現代社会という名の呪い

​高橋先生から依頼を受け、俺は再び事務所で酒呑童子について調べていた。父の古い友人に教えてもらった情報によると、酒呑童子の力の封印は、この街に点在する複数の結界によって成り立っている。しかし、その結界は、少しずつ弱まっているらしい。

​「…どうして、結界が弱まってるんだ?」

​俺は、頭を抱えていた。その時、ふと、酒呑童子が言っていた言葉を思い出した。

​「私の力は、人々の心の闇に巣食う」

​そして、鈴村が強い孤独感を抱えていたこと。

​俺は、その言葉から、ある仮説を立てた。

​「…まさか、現代社会の負の側面が、酒呑童子の封印を緩める力になっている…?」

​俺は、パソコンで、現代社会の現状を調べ始めた。

​自殺率の増加。ブラックな労働環境。引きこもり。孤独死。

​それらの言葉が、俺の目に飛び込んできた。

​現代社会は、様々な問題を抱えている。人々は、ストレスや孤独に苦しみ、心の闇を抱えている。

​「…そうか。酒呑童子の力は、その心の闇を糧にしているんだ…!」

​俺は、そう確信した。

​現代社会の負の活動が、酒呑童子の封印を緩める力となり、彼の力が、さらに増幅している。

​だから、鈴村は、孤独な少年として、酒呑童子の力に魅入られた。だから、ネトゲの世界にも、酒呑童子の力が及んでいた。

​そして、今、鈴村が業鬼として復活したのも、この街に満ちる、人々の心の闇が、彼の復活を後押ししたからだ。

​「…酒呑童子め、現代社会の闇を利用しているのか…!」

​俺は、怒りに震え、拳を握りしめた。

​今回の事件は、ただの妖怪退治ではない。この街に蔓延する、人々の心の闇との戦いだ。

​俺は、探偵として、陰陽師として、そして、一人の人間として、この戦いに立ち向かうことを決意した。

​「…酒呑童子、お前の好きにはさせないからな」

​俺は、そう呟き、新たな呪いを探しに、夜の街へと繰り出すのだった。


配信という名の陽光

​現代社会の闇が、酒呑童子の封印を緩める力になっている。その事実にたどり着いた俺は、絶望しそうになった。

​「…この街に蔓延する、人々の心の闇を、どうやって消せばいいんだ…?」

​俺は、頭を抱えていた。

​しかし、その時、ふと、一つのアイデアが閃いた。

​もし、人々の負の活動が、妖の糧になるなら、その逆は…?

​「…陽の活動は、どうだ…?」

​俺は、そう呟き、自分のスマホと、配信アプリをじっと見つめた。

​俺がやっているのは、探偵兼陰陽師の配信だ。

​妖怪と戦う姿を配信することで、視聴者たちは、驚き、興奮する。

​そして、俺が問題を解決し、困っている人を助ける姿を見せることで、彼らは、安堵し、希望を持つ。

​「…そうか!これだ!」

​俺は、そう確信した。

​配信を通して、俺は、人々に希望を与えることができる。

​俺の配信は、ただの娯楽ではない。

​それは、人々が抱える心の闇を晴らし、希望という名の陽光を届ける、陽の活動なのだ。

​俺の配信が、人々に勇気を与え、彼らが一歩踏み出すきっかけになれば、この街に蔓延する邪気は、少しずつ浄化されていくはずだ。

​「…酒呑童子、お前の物語は、俺の物語によって、塗り替えられる!」

​俺は、そう心の中で叫んだ。

​俺は、パソコンの前に座り、配信の準備を始めた。

​今度の配信は、ただの探偵稼業の報告ではない。

​それは、この街に希望を届けるための、俺の決意表明だ。

​「さあ、皆さんも、探偵兼陰陽師の物語に、ついてきてくださいね!」

​俺は、そう言って、配信開始のボタンを押した。

​俺の物語は、ここから、さらに光を放っていく。


呪われた魂

​「はいどうもー!探偵兼陰陽師の安倍アキラです!今回は、とんでもない事件を追ってます!」

​俺は、パソコンの前に座り、満面の笑みで配信を始めた。今回の配信は、ただの娯楽じゃない。この街に蔓延する、人々の心の闇を晴らすための、俺の決意表明だ。

​「この街で今、起きている自殺や、人々の心の病。これらはすべて、呪いが原因です!」

​俺がそう告げると、コメント欄はざわつき始めた。『また中二病始まったw』『嘘だろw』といったコメントが流れる。

​しかし、俺は動じない。俺は、今回の依頼で手に入れた、あるものを画面に映した。

​「皆さん、見てください!これは、先日、学校の屋上から飛び降りてしまった生徒の、携帯電話です!」

​俺がそう言うと、コメント欄は静まり返った。

​「この携帯電話には、ある呪いがかけられていました。その呪いは、人の心を蝕み、自殺へと追い込むんです!」

​俺は、そう言って、携帯電話から放たれる、微かな邪気を画面に映し出した。

​「…そして、この呪いをかけたのは、怨霊です!」

​俺がそう叫ぶと、コメント欄はさらに静まり返った。

​「その怨霊は、かつて、この街で自殺した、佐々木太郎という少年です!彼は、いじめと孤独に苦しみ、この学校の屋上から飛び降りた…!」

​俺は、佐々木太郎という少年のことを、すべて話した。彼の孤独、彼の絶望、そして、彼の怨念が、呪いとなって、この街に蔓延していることを。

​「…そして、この怨霊を操っているのは、酒呑童子です!」

​俺がそう叫ぶと、コメント欄は、信じられない、といった様子だった。

​「…信じられないのもわかります!でも、これが現実です!」

​俺は、そう言って、画面の向こうの視聴者たちに語りかけた。

​「皆さんは、今、この動画を見ています!そして、皆さんの心の闇は、少しずつ、晴れていっています!皆さんの心が、光を放てば、この街に蔓延する邪気は、消え去ります!」

​俺は、そう言って、深々と頭を下げた。

​「…さあ、皆さんも、探偵兼陰陽師の物語に、ついてきてくださいね!」

​俺は、そう言って、配信を続けた。この配信が、この街に希望を届けるための、俺の決意表明だ。

​終わりのない物語

​俺の配信は、大成功だった。

​視聴者たちは、俺の言葉を信じ、俺の物語に、興味を持った。

​コメント欄には、『応援してる!』『頑張れ!』といった、励ましの言葉が溢れていた。

​「…よし、これで、酒呑童子に、一矢報いることができるかも…!」

​俺は、そう思いながら、配信を続けた。

​しかし、俺は、まだ、知らなかった。

​この物語は、俺が思っているよりも、遥かに深く、そして、複雑なのだ。

​そして、俺は、まだ、酒呑童子との、本当の戦いを、始める前だった。

​承知しました。それでは、アキラが3つの鬼を自身に纏わせる修行をする物語を執筆します。

​3匹の鬼と俺

​配信を終えた俺は、すぐに事務所の奥にある稽古場に向かった。

​「酒呑童子の野郎…、人々の心の闇を利用してやがる…!」

​俺は、怒りに震え、拳を握りしめた。今の俺の力では、酒呑童子には到底敵わない。

​「…もっと、強くならなきゃ」

​俺は、そう心の中で叫んだ。

​俺には、赤鬼くん、青鬼くん、そして緑鬼がいる。3匹の鬼の力を、同時に自分に憑依させることができれば、俺の力は飛躍的に向上するはずだ。

​だが、それは、とても危険な行為だ。これまで、赤鬼くんと青鬼くんの2匹の力を同時に憑依させただけでも、俺の体は悲鳴を上げた。3匹となれば、命の危険もある。

​「…でも、やるしかない!」

​俺は、そう決意し、3匹の鬼に声をかけた。

​「おい、みんな!ちょっと力を貸してくれ!」

​「へいへい!承知したぜ!」

​「いつでもどうぞ!」

​「ご主人様のためなら!」

​3匹の鬼は、楽しそうに俺の体に入ってきた。すると、俺の全身に、激しい熱と力が漲っていくのを感じた。

​「うおおおおおおおおおおおおおっ!」

​俺は、全身から汗を流しながら、必死に耐えた。まるで、身体の内側から火傷しているかのような激痛が、俺を襲った。

​「ご主人様!無理っすよ!体が持ちません!」

​緑鬼の声が、俺の頭の中に響く。

​「くっそ…!こんなところで倒れるわけには…!」

​俺は、歯を食いしばり、もう一度、力を集中させた。

​「俺は…!変身!ヘーン∠( ˙-˙ )/シン!」

​俺がそう叫ぶと、俺の体に、3匹の鬼の力が定着していくのを感じた。

​すると、俺の体に、赤、青、緑の3色の鬼のような模様が浮かび上がり、俺の身体能力は飛躍的に向上した。

​「うおおおっ!すげぇ…!」

​俺は、興奮を抑えきれずに叫んだ。

​俺のパンチは、壁に大きな穴を開け、俺のジャンプは、天井を突き破った。

​「よし!完璧だ!」

​俺は、そう心の中でガッツポーズをした。

​3匹の鬼の力を同時に纏わせることに成功した。これで、酒呑童子にも、一矢報いることができるかもしれない。

​俺は、そう思いながら、稽古場を後にした。

​俺の物語は、ここから、さらに激しくなっていく。



​絶望的な現実

​「…やべぇ…」

​俺は、稽古場の壁に開いた大きな穴と、天井に突き破った穴を呆然と見つめていた。

​3匹の鬼を同時に纏わせる修行は、大成功だった。俺の力は、飛躍的に向上した。しかし、その代償は、あまりにも大きかった。

​「…どうしよう、これ…」

​俺は、頭を抱えた。

​事務所の壁と天井を壊してしまった。このままじゃ、大家さんに怒られるどころじゃない。契約を打ち切られて、路頭に迷うことになる。

​「…赤鬼くん、青鬼くん、緑鬼、お前たち…」

​俺がそう言うと、3匹の鬼は、申し訳なさそうに俺を見つめていた。

​「へい…、ご主人様…、すいやせん…」

​「承知仕りました…、我々の力が…」

​「俺…、加減できなかったっす…」

​3匹の鬼は、そう言って、シュンとしていた。

​俺は、彼らを責めることはできなかった。彼らは、俺のために、力を貸してくれただけだ。

​「…いや、俺が、加減できなかっただけだ。お前たちは悪くない」

​俺は、そう言って、3匹の鬼の頭を撫でた。

​「…でも、どうしよう…」

​俺は、再び、頭を抱えた。

​壁の穴も、天井の穴も、とてもじゃないが、俺一人で直せるレベルじゃない。業者に頼めば、莫大な費用がかかるだろう。今の俺には、そんな金はない。

​「…せっかく、配信で家賃を稼ごうと思ったのに…」

​俺は、絶望的な気分になっていた。

​そんな俺の元に、一本の電話がかかってきた。

​「もしもし、安倍アキラです」

​電話の向こうから聞こえてきたのは、見慣れた声だった。

​「…もしもし、アキラくん?今、何してるの?」

​それは、俺の幼なじみ、千恵の声だった。

​「…ち、ちーちゃん…」

​俺は、何も言えなかった。千恵に、事務所を壊してしまったことを、どう話せばいいのか。

​俺は、電話を手に、ただ、立ち尽くすしかなかった。


謝罪と告白

​電話の向こうから聞こえる千恵の声に、俺は言葉を失っていた。事務所の壁と天井を壊してしまったことを、どう話せばいいのか。

​「…もしもし、アキラ?どうしたの?もしかして、また何かやらかした?」

​千恵の声は、どこか心配そうだった。俺は、もうこれ以上、千恵に嘘をつくことはできなかった。

​「…ちーちゃん、ごめん」

​俺は、そう言って、深呼吸をした。

​「事務所の、壁と天井を、壊しちまった…」

​俺の言葉に、千恵は、一瞬、絶句した。そして、電話の向こうから、大きなため息が聞こえてきた。

​「…はぁ…、やっぱり…」

​千恵は、呆れたようにそう言った。

​「…どうして、そんなことになったの?」

​千恵の声は、怒っているというより、呆れているようだった。

​俺は、正直に話すことにした。酒呑童子のこと、そして、酒呑童子と戦うために、3匹の鬼の力を同時に纏わせる修行をしていたことを。そして、その修行中に、力が暴走して、事務所を壊してしまったことを。

​「…そっか。アキラは、そんなに、強くなろうとしてたんだね」

​千恵は、静かにそう言った。その声は、優しく、そして、どこか悲しげだった。

​「…ごめん。俺、また、お前を心配させちまったな…」

​俺がそう言うと、千恵は、フッと笑った。

​「馬鹿!わたしは、心配してないわ。…アキラが、ちゃんと正直に話してくれて、安心しただけ」

​千恵の言葉に、俺は、胸が熱くなった。

​「…事務所のことは、わたしが何とかする。だから、アキラは、もう無茶しないで」

​千恵は、そう言って、電話を切った。

​俺は、電話を手に、ただ、立ち尽くしていた。

​千恵は、俺の『物語』に、巻き込まれている。そして、俺は、千恵の優しさに、また、甘えてしまった。

​「…ちーちゃん、ありがとう」

​俺は、そう呟き、壁に開いた穴と、天井に突き破った穴を、じっと見つめていた。


ライバルの登場

​千恵との電話を終え、どうやって事務所の壁と天井を直すか途方に暮れていた俺のスマホが、再び鳴り響いた。見慣れない番号だ。

​「もしもし、安倍アキラです」

​電話に出ると、元気な関西弁が耳に飛び込んできた。

​「もしもし、あんた、安倍アキラやろ?うち、蘆屋美奈って言いますねん。陰陽師やってます」

​電話の主は、そう言って、高飛車な口調で名乗った。蘆屋。その名に俺は思わず眉をひそめた。陰陽師の世界では安倍家と並ぶ名家だ。まさか、そんな大物から電話がかかってくるとは。

​「あんたの配信、陰陽師業界で今、めっちゃ話題になっとるで?」

​美奈は、俺の返事を待たず一方的にまくし立てる。

​「『安倍家の若造が、ふざけたことしとる』ってな。でもなぁ、あんたの配信、ウケとるらしいやんか。なんでか知らんけど、あんたの配信見てると、心が軽うなるって、みんな言うてるで?」

​美奈は、俺の配信が人々の心の闇を晴らしていることに、すでに気づいているようだった。

​「…で、それが、何か?」

​俺がそう尋ねると、美奈は電話の向こうでニヤリと笑った。

​「…うち、あんたに、勝負を挑みに来たんや。あんたとどっちが、妖怪退治と配信で、世間を賑わせられるか、勝負や!」

​美奈は、そう言い放つと一方的に電話を切った。

​俺は電話を手に呆然と立ち尽くした。美奈は俺と同じく陰陽師として配信をしているらしい。しかも、俺の配信の反響をライバル視している。

​「…ったく、めんどくせぇ…」

​俺は頭を抱えた。だが、その時、俺はふと、あることに気づいた。

​美奈は、俺にとって、最高の好敵手になるかもしれない。

​美奈と競い合うことで、俺はさらに強くなれる。そして、俺と美奈の物語が世間を賑わせれば、より多くの人々に希望を届けることができる。

​「…ふっ、面白いじゃねぇか!」

​俺はそう言って、ニヤリと笑った。

​俺の物語は、ここから、さらに激しく、面白くなっていく。


報酬は妖怪___

​蘆屋美奈との一件から数日後、俺は事務所で、壁と天井の穴をどうするか、途方に暮れていた。千恵が何とかしてくれると言ってくれたが、俺としては、自分で何とかしたい。

​「…どうすりゃいいんだ…」

​俺は、頭を抱えていた。その時、事務所のドアが、静かに開いた。

​そこに立っていたのは、一人の小さな男の子だった。

​「…あの、探偵さんですか?」

​男の子は、そう言って、俺をじっと見つめていた。その顔には、どこか悲しげな表情が浮かんでいた。

​「…ああ、そうだけど。どうした?」

​俺がそう尋ねると、男の子は、リュックから一枚の紙を取り出した。

​「…探偵さんに、お願いしたいことがあります」

​男の子は、そう言って、俺に紙を渡した。紙には、拙い文字で、こう書かれていた。

​「パパとママが、浮気しているみたいです。実情を正しく把握したいです」

​そして、その下には、こう書かれていた。

​「成功報酬は、友達の妖怪、白鬼です」

​俺は、その紙を見て、驚愕した。

​「…お前、小学生だろ?なんで、そんなこと…」

​俺がそう尋ねると、男の子は、俯いたまま、静かに語り始めた。

​「…パパとママは、いつもケンカばかりしています。二人とも、家に帰ってこない日も多くて。…僕、二人が、他の人といるんじゃないかって、思うんです」

​男の子は、そう言って、涙を流した。

​「…そして、僕には、白鬼っていう、友達の妖怪がいるんです。白鬼は、いつも僕を守ってくれる。でも、白鬼は、最近、すごく悲しそうで…」

​男の子の言葉に、俺は、胸が締め付けられるような思いだった。

​「…どうして、白鬼は悲しそうなんだ?」

​俺がそう尋ねると、男の子は、顔を上げ、俺の目を見て言った。

​「…白鬼は、パパとママが、お互いに嘘をついていることを、知っているみたいなんです。だから、悲しんでるんだって…」

​男の子の言葉に、俺は確信した。

​この事件も、酒呑童子の不完全な力が絡んでいる。人々の心の闇、嘘、そして、悲しみ。それらが、酒呑童子の力を増幅させている。

​「…わかった。依頼、引き受けよう」

​俺は、そう言って、男の子の頭を撫でた。

​「…本当ですか!?」

​男の子は、そう言って、満面の笑みを浮かべた。その笑顔は、とても無邪気で、俺の心を温かくしてくれた。

​「ああ。俺は、探偵だからな。どんな依頼でも、引き受けるさ。…それに、俺、白鬼と友達になりたいしな!」

​俺は、そう言って、ニヤリと笑った。

​こうして、俺は、新たな依頼を受けた。

​今回の依頼は、浮気の調査。しかし、その裏には、酒呑童子の『物語』が隠されている。

​俺の物語は、ここから、さらに複雑になっていく。

浮気調査と妖怪の悲しみ

​俺は、小学生の依頼主から両親の情報を聞き出し、早速、浮気調査を開始した。

​まずは、彼の父親。会社員だという彼の父が、仕事が終わってからどこへ向かうか、尾行することにした。

​「へいへい!お手の物だぜ!」

​俺は、そう言って、緑鬼をチャリに憑依させた。ボロボロのママチャリは、まるでスポーツカーのように、街中を走り抜けていく。

​父親の尾行は、簡単だった。彼は、会社を出ると、まっすぐ、とあるバーへと向かった。そして、そのバーに入っていくと、そこで待っていた女性と、楽しそうに話していた。

​「…やっぱり、浮気か…」

​俺は、写真を撮り、次の目的地、母親の尾行へと向かった。

​母親の尾行も、簡単だった。彼女は、仕事が終わると、とあるカフェへと向かった。そして、そのカフェに入っていくと、そこで待っていた男性と、楽しそうに話していた。

​「…二人とも、浮気してるのか…」

​俺は、写真を撮り、事務所へと戻った。

​事務所に戻ると、俺は、男の子から預かった白鬼を探すことにした。

​「白鬼、どこにいるんだ?」

​俺がそう尋ねると、事務所の隅に、小さな、白い、半透明な影が、震えているのを見つけた。

​「…お前が、白鬼か?」

​俺がそう尋ねると、白鬼は、怯えたように、俺を見つめていた。

​「…ごめん、なさい…」

​白鬼は、そう言って、消え入りそうな声で、そう呟いた。

​「…どうして、謝るんだ?」

​俺がそう尋ねると、白鬼は、震える声で語り始めた。

​「…俺は、二人が嘘をついていることを、知っていました…でも、それを、子供に話すことが、できませんでした…」

​白鬼は、そう言って、涙を流した。

​「…俺は、二人のことが、大好きなんです…でも、二人が、お互いに嘘をついているのを見るのが、辛くて…」

​白鬼の言葉に、俺は、胸が締め付けられるような思いだった。

​白鬼は、子供の純粋な気持ちと、両親の嘘の間で、苦しんでいたのだ。

​「…大丈夫だ。お前は、悪くない」

​俺は、そう言って、白鬼の頭を撫でた。

​「…白鬼、俺に力を貸してくれないか?俺と一緒に、この事件を解決してくれないか?」

​俺がそう言うと、白鬼は、驚いた表情で俺を見つめた。

​「…俺が、役に立てるんですか…?」

​「ああ。お前は、大切な家族を悲しませたくない、って思ってる。その気持ちは、必ず、俺の力になる」

​俺の言葉に、白鬼は、涙を流しながら、俺の腕に、そっと触れた。

​その瞬間、俺の全身に、温かい、そして、優しい力が、漲っていくのを感じた。

​「…ご主人様…!」

​白鬼の声が、俺の頭の中に響く。

​こうして、俺は、新たな仲間、白鬼と共に、浮気調査、そして、酒呑童子の『物語』を阻止するため、再び立ち上がるのだった。

浮気の真実

​俺は、事務所に戻ると、すぐに配信の準備を始めた。今日の配信は、依頼主である長里宏明と、彼の両親、そして、白鬼のために。

​「はいどうもー!探偵兼陰陽師の安倍アキラです!今回は、とんでもない依頼を受けました!」

​俺は、パソコンの前に座り、満面の笑みで配信を始めた。

​「えー、今回の依頼主は、なんと、小学生!彼の両親の浮気調査です!」

​俺がそう告げると、コメント欄はざわつき始めた。『小学生からの依頼w』『浮気調査とか、本格的すぎるw』といったコメントが流れる。

​「さて、皆さん、この浮気調査の結果ですが…」

​俺は、そう言って、一度、画面を切り、依頼主である宏明に、電話をかけた。

​「もしもし、宏明くん?」

​「はい、探偵さん!」

​電話の向こうから聞こえてきたのは、彼の元気な声だった。

​「宏明くん、今から、パパとママの浮気の真実を、配信で話す。君も、一緒に見ててくれるか?」

​「はい!見ます!」

​俺は、彼の言葉に、頷いた。

​そして、再び、配信画面に戻った。

​「…さて、皆さん。彼の両親の浮気調査の結果ですが…」

​俺は、そう言って、俺が撮った、父親と母親の写真を見せた。

​「…彼の父親は、会社帰りに、母親の会社の同僚と、飲んでいました。そして、母親は、仕事帰りに、父親の会社の同僚と、お茶をしていました」

​俺がそう言うと、コメント欄は、『え?』『どういうこと?』といったコメントで溢れた。

​「…実は、彼の父親と母親は、お互いに、相手が浮気をしているんじゃないかと、疑っていたんです。だから、二人とも、相手の会社の同僚に、浮気調査を依頼していたんです!」

​俺がそう告げると、コメント欄は、さらに驚きと興奮のコメントで溢れた。『まさかの展開w』『探偵と探偵だったw』といったコメントが流れる。

​「…そして、二人は、お互いの浮気調査の結果を、報告し合っていたんです。彼らは、お互いに嘘をついて、浮気をしていたわけじゃなかった。ただ、愛し合っているが故に、疑ってしまったんです」

​俺は、そう言って、電話の向こうの宏明に語りかけた。

​「宏明くん、見てたか?君のパパとママは、浮気なんかしてない。ただ、お互いを愛しすぎて、心配してただけなんだ」

​俺の言葉に、電話の向こうから、宏明の泣き声が聞こえてきた。

​「…ありがとう…!探偵さん…!」

​宏明は、そう言って、電話を切った。

​俺は、安堵の息をついた。

​「…今回の依頼の報酬は、友達の妖怪、白鬼です」

​俺は、そう言って、画面の隅に隠れている白鬼を映し出した。

​「白鬼は、彼のご両親の嘘の気配を感じて、悲しんでいました。でも、それは、嘘じゃなかった。愛だったんだ」

​俺は、そう言って、白鬼に語りかけた。

​「白鬼、お前は、もう悲しまなくていいんだぜ」

​俺の言葉に、白鬼は、涙を流しながら、俺の腕に、そっと触れた。

​「…ご主人様、ありがとう…!」

​白鬼の声が、俺の頭の中に響く。

​こうして、俺は、新たな仲間、白鬼と共に、新たな事件へと立ち向かうのだった。


探偵助手、はじめました?

​長里宏明くんからの依頼を無事解決し、白鬼も仲間に加わった俺は、事務所に戻って今回の配信の反響を確認していた。コメント欄には「感動した!」という声がたくさんあって、気分は最高だった。

​「よし!これで家賃も払えそうだぜ!」

​俺は、そう心の中でガッツポーズをした。しかし、ふと、あることに気づいた。

​最近の事件は、どれも一筋縄ではいかない。酒呑童子という、とんでもない大妖が絡んでいる。一人で立ち向かうのは、さすがに無茶だ。

​「…やっぱ、俺にも、助手が必要だよなぁ…」

​俺は、そう呟き、事務所の隅にある、誰も座っていない椅子を見つめた。

​そんな時、ピンポーン、と事務所のチャイムが鳴った。

​「はーい!」

​ドアを開けると、そこには、案の定、千恵が立っていた。彼女は、いつものように、少し不機嫌そうな顔をしている。

​「アキラ、また変なことしてるでしょ?」

​千恵はそう言って、俺のスマホを覗き込んだ。画面には、俺が配信で映した、宏明くんと白鬼が映っていた。

​「いやいや、これは立派な仕事だよ!おかげで家賃も払えそうだぜ!」

​俺がそう言うと、千恵はため息をついた。

​「もう…。本当に、見てるこっちがヒヤヒヤするんだから…」

​千恵は、そう言って、俺に手作りの唐揚げ弁当を差し出した。

​「ちーちゃん、ありがとう!助かるぜ!」

​俺は、そう言って、弁当を受け取った。そして、俺は、千恵に、あることを切り出すことにした。

​「なあ、ちーちゃん。実は、お前に頼みたいことがあるんだけど」

​俺がそう言うと、千恵は、怪訝な顔をした。

​「なに?」

​「あのさ、俺の探偵助手、やってみないか?」

​俺がそう言うと、千恵は、一瞬、呆然とした。

​「…はぁ!?何言ってるの、あんた!」

​千恵は、そう言って、俺の胸ぐらを掴んだ。

​「あんた、わたしをこんな危ない仕事に巻き込む気!?」

​千恵は、そう言って、怒りに震えていた。

​「いやいや、違うって!俺の助手だから、危険なことなんかさせないよ!なにかあったら、俺が守るから!」

​俺がそう言うと、千恵は、フッと鼻で笑った。

​「…アキラ、あんた、自分がどれだけ危ない目に遭ってるか、わかってないでしょ?」

​千恵は、そう言って、俺の顔を、じっと見つめた。その瞳は、怒りだけでなく、深い悲しみを帯びていた。

​俺は、何も言えなかった。千恵は、俺の**『物語』**に、すでに巻き込まれている。そして、俺は、千恵を、さらに危険な場所に引き込もうとしている。

​「…ごめん、ちーちゃん」

​俺は、そう言って、頭を下げた。

​千恵は、俺の謝罪を聞くと、大きくため息をついた。そして、俺の胸ぐらを掴んでいた手を放し、静かに言った。

​「…わたしは、アキラの助手にはならないわ」

​千恵の言葉に、俺は、少しだけ、がっかりした。

​しかし、千恵は、続けてこう言った。

​「…でも、幼なじみとして、見守っててあげる。あんたが、もうこれ以上、無茶しないか」

​千恵は、そう言って、ニヤリと笑った。その顔は、まるで、俺の好敵手、蘆屋美奈のようだった。

​俺は、千恵の言葉に、驚き、そして、少しだけ、嬉しくなった。

​俺の物語は、ここから、さらに複雑になっていく。

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