恋というかなんというか

数日後。

彼女と友達になるという握手を交わしてここ数日特に何かが変わるわけでもなく、ただいつも通り顔を合わせては挨拶を交わすだけの関係だった。

中学の時も今も友達付き合いなどろくにしてこなかったぼっちの俺にはどう接していいのかわからなかった。

だが、ふと、あの日の、握手を交わした手の温度を、夕日の光に反射していた彼女の目元の雫を思い出してしまう。

そして、思い切って遊びに誘うことにした。

「「あのさ」」

同じタイミングで彼女が言葉を発した。

向こうも驚いたような顔でこっちを見つめている。

「...先にどうぞ」

「いやいやいや！佐倉くんこそ！」

「「....」」

沈黙が続く。

気まづい。

「...あのさ、良かったら明日、どっか遊びに行かない？その〜、一応俺ら、と、友達な訳だしさ」

「...ｸ」

「え？なんて？」

「いく！絶対いく！私もね！丁度誘おうと思ってたの！」

今にも飛び跳ねそうな勢いで早口でそう言い終わると、

「じゃあさっそく帰って明日の支度しなきゃ！明日のデートのプラン考えといてね！そういうのは男の子の役目なんだからね！任せたからね！」

続けざまにそう言い放ち、教室から駆け足で出ていった。

「...いつの間にかデートになってる.....」

まだ残っていたクラスメイトからの、え？あいつらできてんの？って視線が痛い。

クラスメイトからの嫉妬や憎悪、驚きが混ざった視線に晒されながらなんとか無事に教室を後にし、帰り着くことができた。

どうやら花宮 真央は大人びた見た目からは想像しにくいが、感情が昂ると周りなどお構い無しに言動に現れるタイプのようだ。遊びにさそっただけでこのはしゃぎようである。

...これからが思いやられる。