第5話、反射

「それって、どういう意味?」

クラスメイトから発せられたまさかの余命宣告に頭が回らず戸惑った。

「ん〜、言葉通りの意味でね、私ちっちゃい時から心臓が悪くて、昔手術して良くなってたんだけど最近になってまた再発しちゃって、気づいた時にはお医者さんもお手上げ状態だったんだ〜」

話を聞けば聞くほど頭が回らなくなっていく。

昔手術して治ったが、再発して気づいた時には医者にも手の施しようがなく余命が2年しかない。

そこまではわかった。

でも、自身の余命を、死ぬという事を、笑いながら話している彼女のことが何一つわからない。

「なんで、そんなに、平気そうなの?」

ふとそうつぶやいていた。

彼女の顔から笑顔が消えた、気分を害したのかただ答えを考えていただけなのか、彼女の口からは、

「だって、どうせ私が死ぬってことは変わんないから、死んだ後俯いてる暗い顔より笑顔でいる顔を思い出してもらいたいじゃん!」

といい、また笑顔を見せた。

言葉では言い表せない感情が胸に込み上げてきた。

「やりたい事とかないの?」

「いっぱいあるよ!文化祭に体育祭、修学旅行も楽しみだし!あと、ずっと体が弱くてダメって言われてたから海にも行きたい!恋もしたい!友達たくさん作りたい!...それで皆で卒業式して、思い出話して、笑顔でまたね、って言い合いたい。

ま、それまで生きてられるかわかんないんだけどね〜!」

「...聞いてもいい?」

「な〜に?」

「病気のこと、他に知ってる人っているの?」

「先生くらいだよ。他には誰も。佐倉くんに話したのが初めてだよ。」

なんで。

「なんで、俺には話してくれたの?」

「ん〜、病院での話を聞かれてたかもってのもあるけど...」

彼女はそこまでいうと今日一番の笑顔で人差し指を立て口に当てながら、

「ないしょ!」

と答えた。


「あ!私の秘密教えたし、友達にならない? 」

そう言いながら右手を出して握手を求めて来たが、「あ、でも2年後死ぬのわかってたら重いか!ハハッ」と言いながら引っ込めようとした。

俺はその手を握り返して答えた。

「これで、1つやりたい事埋まった?」

返事はなかった。

ただ、ただ、彼女の目元の雫に夕日の光が反射していた。

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