第8話ナウアンドパスト②
「おい、大丈夫か!目、開けろ!救急車呼ぶか!えーと、番号は」
「げほ、げほ。はぁはぁ」
「よかった~死んだかと思ったぞ!」
気が付くと川岸に横になっていた。あいつらはいつの間にかいなくなっていた。代わりに目の前に、びしょ濡れの背格好が“僕”と同じ男の子がいた。どこかで見覚えのある顔だった。
「“僕”を助けてくれたの?」
「そうそう。川の流れがおそくてよかったわ~」
「ありがとう……命の恩人だよ」
「やった! マジでうれしいな~。いや~ちょうど帰ろうとした時にさ、あいつらに絡まれてたじゃん! 嫌な感じがしたから後を追っかけてきたんだよ。そうしたら、やっぱり君をいじめて、川に落とされた所を助けたってわけ!」
「どうしてそこまでして助けてくれたの?」
「オレも去年あいつらにいじめられたんだ。けど、今年はあいつらとたまたまクラスが変わっていじめられなくなったんだけどね」
そうだ思い出した、学校で何度かすれ違ってた。その時はあまり意識していなかったけど、確かにときどき怪我をしていた。この男の子もあいつらにいじめられてたのか……。
「そうだったんだ。でも“僕”なんて生きてても苦しいだけだよ……」
「そんなこと言うなって!気持ちはわかるけど」
「だって、勉強も出来ないし、運動もできない。超能力もない。なにやっても失敗ばっかり迷惑かけてばっかり、どうすればいいの?」
「オレだって同じだよ!勉強も運動もできない。超能力もない。だから、キミの気持ちが分かる。弱かったから」
「なにそれ……弱かったら負けちゃうじゃん」
「違うよ!勝ち負けじゃない。弱かったからキミを助けられた。上手く言えないけど弱いことが俺たちの強みなんだよ」
「ハハハ……変なの」
「あ!笑ったな。真面目にいってるのに。まあいいや。まだ、名前いってなかったね。オレ、智和。キミの名前は?」
「本田ともひろ」
「ともひろか、いいね~。お互い名前にともが入ってるじゃん!これから、よろしく!」
「こちらこそ、よろしく」
「そうだ!よかったら明日、あそぼうぜ!あいつより人生、楽しんで見返してやろうぜ」
「うん!ありがとう」
***
それから、学校では二人で一緒に行動した。いじめはあったけど徐々になくなっていった。その後も和彦には色々助けてもらった。初めて出来た彼女と喧嘩別れして落ち込んだ俺を慰める為にドライブにつれていってもらったり、勉強はまあ…お互いできなかったけど、得意な教科が違ったからお互い教えあってテストの点数も上がった。あのときはうれしかった。社会人になってもお互いの上司の愚痴を聞いたりした。時々喧嘩もあったけどすぐに元通りになっていた。そんな絶縁するようなことはなかったはず……半年間に何があったんだ。
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