最終話 公共の場でのイチャイチャは控えましょう
ヴァインはリントを連れて王宮の屋上に向かう。
花火が目の前で開いている迫力に圧倒される。
「こんな近くで見たことないよ。すごいねヴァイン」
リントはヴァインの方を見る。
ヴァインは何故かリントを見つめていた。目が合う二人。
「リント、クローヴァンに来ないか。ずっと俺のそばにいてほしい」
「ヴァイン気持ちは嬉しいけど今は…逆にヴァインがアトルピアに来たら」
「それは考えていなかったな、ありだな」
「なしです」
力強く否定したのはブロウだった。
「ブロウさんもお久ぶりです」
「お久しぶりですリント様」
「ブロウまで邪魔する気か」
「邪魔ではありません、王宮で働く人の特権である屋上での鑑賞ですよ。他の人がいるとは考えなかったのですか。それに貴方はクローヴァンの王です。たとえリント様が恋人であっても肩書は王ですから、クローヴァンから離れることはできません」
「駄目だそうだ」
「まあわかっていましたが」
「リント様、無理を承知で言いますがこうしてたまにクローヴァンに顔を出してください。リント様と同じでヴァイン様もリント様不足で仕事しなくなりますので、それを阻止するためにも遊びに来てください」
「私不足で仕事しなかった日があったんですか」
「えぇ何日も」
「それを言うなブロウ」
「ブロウさん一つ訂正させてください。私は別にヴァイン不足で仕事をしなかった日はないのでそこは違います。むしろ業務に追われてヴァインのことを考えてなかった日の方が多いです」
「リントそれは傷つくからやめてくれ。もういいリントがそんな風に思っていたならそのクッション返せ」
「それは嫌です」
ヴァインがクッションを取り上げようとリントにかぶさるがヴァインがバランスを崩し二人とも地面に倒れ込む。
ブロウはため息をつき〝よそでやってくれ〟と捨て台詞を吐きその場を離れた。
二人きりになった空間。
「リントはもう俺のこと好きじゃないのか」
「そんなことないです。帰ってきてからは仕事仕事で、ヴァインからの手紙で思い出したりして考えてなかったのは本当です。じゃなきゃ今こうして一緒にいないですから」
「よかった俺だけが空回りしていたらどうしようかと」
「もう少しだけ待ってくれればクローヴァンに来れると思うから」
「わかった待っている。こんな体勢でお願いするのも変だが血を吸ってもいいだろうか。吸っただけでは使い魔になったり同族になったりはしない。そこは安心してほしい」
「少しだけなら」
花火が上がり続ける中、ヴァインはリントの首元に噛みついた。最初は痛かったが吸われていくのと同時に徐々に熱を帯び気持ちよくなってきた。時間にしてわずか数十秒ではあったが二人にとっては永遠に感じた。吸血を終えヴァインはリントの唇にキスをする。リントもヴァインからのキスを受け入れた。
ヴァインはリントを起こし心配する。
「痛かったよな」
「大丈夫です、ちょっと恥ずかしいだけ」
「慣れろ、俺の横を歩きたいならな」
「頑張ります」
クローヴァンのパレードを背にヴァインの飛行でアトルピアに帰ってきた。
「今日はありがとうございました。いい息抜きができました」
「礼を言うのこちらの方だ。また遊びに来るし遊びに来い。呼べばいつでも迎えに行く」
「わかりました。また仕事頑張れそうです」
ヴァインはリントのおでこにキスをする。
「手紙、また送るからリントも無理のない範囲で返信してくれると嬉しい」
ヴァインはマントをなびかせクローヴァンに帰っていった。
リントはまた現実の激務に戻るがヴァインに会うために頑張ろうと切り替えようとした。
無理だった。
「やっぱりつらい!家に帰っても一人だし!ヴァインに会いたいよ!」
リントの幸せな悩みを聞いているのはエマとユアン。いつもの二人だ。
「いいじゃん幸せじゃん!」
「ねーいつ終わるの!いつになったら皆納得して税金納めてくれるの!」
「まだしばらくは無理だろうね」
「早く環境課に戻りたいよー」
「環境課に戻るでいいの?リントちゃんクローヴァンに行くんじゃなくて」
「ん-悩む。でも今は…」
同刻クローヴァン
「ヴァイン様いい加減にしてください」
ヴァインは椅子に座ったまま天井を見上げぼけーとしていた。
「リントがいない」
「こうならないためにパレードでデートして、血を吸ったんじゃないんですか」
「関係ない、リントの存在がいないから意味がない」
「呆れました。いっそのこと王の座から降りたらどうです」
「それはだめだ」
ブロウに向き合うヴァイン。
「王の仕事を放りだすわけにはいかない」
「今まさに放り出してますけど」
「わかったわかった、仕事に戻るが今は…」
「ヴァインに/リントに」
「会いたいな」
役所人間に奴隷解放はできません! 九一 八久 @18nonovel
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