第七話 王の帰還

 時は流れガルドはクローヴァン近くの森に到着し、ネーブルと合流した。

「待たせてしまったな、少し痩せたか」


 アトルピアを出発したガルドの念の相手はネーブルだった。

〝アトルピアを出た、そっちには向かってはいるが三日はかかる〟

〝そんなことわかってる!クローヴァンを監視するために近くの森で待機しているから〟


「ずっと労働していたし満足に飲んだり吸ったりしていないからね」

「私のでよければ」

 ガルドは腕を差し出すが、

「いらないわ、もうすぐで血鉱石けっこうせきとクローヴァンが私のモノになるから。待っててヴァイン。リントなんて忘れて私のところに来るから」

「リントは今頃牢で倒れていることでしょう。飯に毒を入れるよう指示出したので」

「本当は私の手で殺したかったけど仕方ないね。とりあえず怪しい動きはなかった。あの日と同じように。今度は人間も吸血鬼も関係なくやっちゃっていいから」

「いいのか」ガルドはネーブルに問いかける。

「いいわ、私が作り変えるから」


 堂々と正面から入っていくネーブルとガルド。

「誰もいないな」

「人間は私が暴走した時にちょっと襲ったから恐怖の対象になったのよ。それにヴァインが人間も制止させたの、腐っても王よ。でももう関係ない。人間は引っ張り出して。吸血鬼達はもうすぐここを通るはずだから」

「ヴァインもいるのか」

「なんか倒れたらしく炭鉱場の労働していないみたい、奴隷の御一行様にもいない。でも地下牢にはいるから呼び出せば出てくるよ」

 ガルドは一軒一軒乱暴にドアを開け中の住人を引っ張り出した。同じころ王宮の地下からも吸血鬼の奴隷がやってくる。


 それを見かけたガルドは叫ぶ。

「王の帰還だ! 皆の者跪け!」

 一か所に集められた人間達はあの時のことを思い出し助けを求める。

「吸血鬼の王が復活しました! 我々は怯えております。どうかどうかまたいつもの生活に戻れるようにしてください」

「だそうだ、吸血鬼の王よ! ここではお前らは奴隷だ! 私がいない間に好き勝手やってくれたな」

 ヴァインが王宮から現れる。本物の王のオーラはガルド含むそこにいた全員に恐怖心を与えた。

「貴様、ここは吸血鬼の国クローヴァンだ。好き勝手やったのはそちらの方だろ。それに王の帰還だと? 笑わせるな、いないではないか」

 ガルドの後ろからネーブルが現れる。

「ねえヴァイン、もう一度聞くけど私と一緒に来てよ。そしたら強くなり放題だし、クローヴァンも吸血鬼の国に戻せるよ! 王の座もヴァインに戻してあげる」

「ネーブルにそのような権限はないはずだ」


「あるよ、だってここにいる人があの時の王だもん」


 ガルドはフードをかぶりあの時と同じ姿になった。

「ガルド、貴様だったのか」

「おや直接名前を言った記憶はないけど知っているなら話は早いな、吸血鬼の王ヴァイン。貴方がこちら側につくなら王の座はお返しいたしますよ」

「私の名前を軽々しく呼ぶな」

「ねえヴァイン血鉱石食べてくれた?」

「食べるわけないだろう」

 ヴァインはポケットに入ってた血鉱石をネーブルの方に投げ返す。

「どうしてそんなに反対するの? これを沢山作って世界に売ればクローヴァンの経済はすごく潤うよ! しかも強くもなれる! 材料はリントがいるアトルピアから貰っているからアトルピアとも友好関係築けるよ! 吸血鬼にとっても、クローヴァンにとっても、ヴァインにとってもいいことだらけだよ」

「熱弁しているところ悪いが工場はもうない」


 ガルドとネーブルは工場の方を見るが半壊状態になっていた。

「どうして! そんな音一切していなかったじゃん」

「奴隷の御一行様に合わせて材料を運ぶとは考えたな。俺らもそれをまねただけだ。奴隷の御一行様に合わせて工場を壊し続けただけだ」

「煙は!? ずっと見張っていたけど煙は出ていたじゃない」

「かつてのボヤ騒ぎ、あれの応用さ」

 陰からコータが出てくる。

「コータ!」

 怒りが湧くネーブル。

「一つだけ聞きたい、血鉱石の存在をどうやって知った」

 ヴァインは二人に鋭く尋ねる。

「もう作れないなら知る意味ある?まあいいけどさ。たまたまだよ。アトルピアからガルドともうひとり来た数日後。ここにいるガルドだけまた来たんだ」

「私が話そう」

 ガルドはアトルピアに着いた時のことを話し始めた。

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