第二話 こんなに積極的にくるのはドキドキするよ
「…寒くないか」
ソファに座ることを促しながら最初に話しだしたのはヴァインだった。
「大丈夫です」
「そうか」
会話終了。
というのもリントの心境は複雑だった。
〝どうしよう、ヴァインさんってこんなにかっこよかったけ? それに急に抱きついてきたり何があったの? 服装もあいまって緊張して顔見れないのに二人きりにされちゃったよ、私今どんな顔してる?〟
「顔が赤いな」
言葉通りリントの顔を覗き、ありのままを伝えたヴァイン。
「え、あ!えっと」
吸血鬼は心が読めることを忘れていたリント。益々顔が赤くなってしまう。
リントは話題を逸らそうと先程の会話で気になったことを聞いた。
「そういえば工場で作っていた
「せっかく二人きりだというのにそんな話をするのか」
そんな返答を予想していなかったので次の会話の切り口を考えているとヴァインの方から話題を提供してくれた。
「ここ数日、いろんなことがあった。俺の話を聞いてくれるか」
「もちろんです」
ヴァインはリントがアトルピアに戻った後の話をし始めた。
「リントが夜書いた手紙は翌朝使い魔によって届く。初めてリントからアトルピアに着いたというメモを受け取った時、俺はどうやら笑っていたらしい。自覚がなかったが、ネーブルに指摘された」
―――――――――
休憩中のヴァインは朝方使い魔から受け取った最初の手紙を開く。
「無事についたか」
リントのアトルピア到着を知らせるその手紙はヴァインに安堵をもたらし、少し笑みをこぼした。それを見ていたネーブルは、
「誰からの手紙?ヴァインが笑うなんて」
「笑っていたか」
「気づいてないの?」
ヴァインは真顔に戻り、ネーブルに説明する。
「こないだ来た人間だ、無事にアトルピアに着いたらしい」
「そんな報告で笑うなんておかしいよ!」
「どうしたネーブル。何が言いたい」
ヴァインはネーブルがここまで声を出すのが不思議だった。
「アトルピアの人間だからだよ!きっとまた裏切られて、この生活がもっと悪くなるんだよ。あの女だってああいった顔して裏ではきっととんでもないこと考えているんだよ。そのために帰ったかもしれないよ」
「俺にはそうは感じなかった、本心で助けたいとあの時は言っていた。それにそういうやつが〝死なないで〟と書くだろうか」
「ヴァインは優しいからね、助けたいっていう言葉だけを鵜呑みにしちゃだめだよ。そう言って今アトルピアであの時来た奴にほだされて戦争を仕掛けてくるかもしれないし」
ヴァインはポケットの試験管を取り出す。しばらく見つめ決意したかのように、
「もしそうなったら命を懸けて戦うまでだ。だが今は信じたい、リント自身を」
試験管をしまい、作業場に戻ろうとするヴァインはネーブルの方を一切見ず、
「ネーブルはリントのことを信じなくていい。一人くらいそういう目を持った方がいいからな」とだけ伝え暗い道に戻っていった。
―――――――――
「あの時からネーブルのこと見てやればこんなことにはならなかったかもしれない。まあ今更だがな」
「それは仕方ないですよ。その時コータさんはどうしていたんですか」
わかりやすくむすっとするヴァイン。
「俺といるのに他の男の話に興味があるのか」
リントは訳が分からなかった。ヴァインがこんな嫉妬じみたことを言うのが理解できなかった。
「あいつのことはあいつに聞け」
「そうですよね、すみません」
怒らせてしまった。
またしばらく沈黙があったがここでも話し始めたのはヴァインだった。
「リントお前、最初の手紙の最後の文、気持ち込めただろう。筆圧が強かった。でもしっかり伝わった」
筆圧まで見られているとは思わなかったがリントが込めた一文はしっかりとヴァインに届いていた。
「それはそうですよ。倒れそうなのを見ていますし」
「心配かけたな。あの試験管貰っておいて正解だった」
「それはよかったです」
しかし会話が終始ぎこちなかったリントだった。
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