第二話 心読むってチートじゃん
夜。居酒屋のテーブルに顔をつけ明らかに落胆しているリント。
「リント大丈夫…じゃなさそうだね」
ユアンが顔を覗く。
「リントちゃん、本当に何があったの?話せる?」
ゆっくり顔だけあげ、
「二人って私の報告書読んだ?」
と聞くも読んでないと答える二人。
「そっかじゃあ最初から説明すると…」
体も起こし説明するリント。
「メモの送り主には会えたけど…」
「アトルピアが関わっていたって本当?」
「本当、どうやって関わっているかはこれから調べようと思ってた矢先、ガルドさんが引き継ぐって言って私はもうお役御免」
「嘘でしょ!/嘘だろ!」二人の声が重なる。
「それに、クローヴァンとメモの送り主を守るためについた嘘がばれているかもしれなくて」
「リント嘘つくの苦手だもんね」
「そうなんだけどそういうのじゃなくて、心を見られた感じ。ねぇエマ。
「普通に言葉が聞こえるけど自分が出した使い魔だけかな。他の使い魔は言葉の時もあればイメージの時もあるかな。イメージの時は表情も合わせて何を伝えたいのかわかる感じかな。それがどうしたの」
「ガルドさんって動物と話せるじゃん、だから私の思ったこと見えていたのかなって。でも心まで見れるのかな」
エマは一瞬考え、
「あー強く否定はできないかも…例えばメモの送り主に会ってないって口で言っても、リントちゃんの脳内や心に相手が浮かんでいたら、顔までははっきりとは見えないけど影が見える感じかな。もちろん吸血鬼自体の個体差と使い魔の個体差はあるけど、ぼんやりとしたイメージは伝わるかもしれない。でもこれあくまで私達の話であって動物と話せるガルドが当てはまるとは限らないからね」
「あーヴァインさん、ごめんなさい!」
叫び、頭を抱えるリント。
「ヴァインさんってメモの人?かっこよかった?」
「エマ今それじゃない」ユアンが止める。
「でもほらエマも言ってたけどガルドさんは動物と会話できるだけだし、意外とばれていない、考えすぎかもしれないよ」
さらにフォローするユアン。
「そう前向きに考えよう! リントちゃんができること少しずつやっていこう! 私たちも手伝うからさ!」
「そうだね作戦たてよう! リント僕たちは何すればいい!」
リントは抱えていた頭をゆっくりあげ、
「もやもやする。ガルドさんに全てばれていたとしても、これではい終わりはなんか嫌だ」
「確かにもやもやするね、もしこれでガルドさんが手柄たててクローヴァンが平和になったらいいとこどりってやつじゃん。現地調査だけ行かせてさ」
ユアンが同調する。
「ところでヴァインさんってかっこいい?」
「だからエマ、今はそこじゃない」
「吸血鬼は美男美女揃いですからね、かっこいいのかな」
ヴァインを思い出すリント。
エマはリントの心の中を覗く。
「あーなるほどね、確かにかっこいいんじゃない」
「それはずるい、俺にもイメージを共有しろ」
リントはヴァインを思い出し、やはり自分がクローヴァンを変えたい思いが戻ってきた。
エマだけがヴァインを思い出しているリントを見てにやにやしていた。
「エマ、血の試験管作ってくれてありがとう。あれが無かったら進展がなかったと思う」
「あんなのお安い御用だよーまた必要だったら言ってね」
急に振られ、少し慌てたが持ち前の笑顔で乗り切るエマ。
「なんかリントがちょっと元気になってよかった。明日からどうする?」
「通常業務しながら情報集めしようと思う、二人にも協力してほしい。ガルドさんに注意しながらの調査になるから」
「あの人本当に業務引き継ぐのかな」
エマが不思議がる。
「業務引き継ぐにしろ、やらないにしろどっちももやもやするから、これはちゃんとリントがかたをつけるべきだよ」
「ありがとう二人とも。やる気戻ってきた」
感謝もあり助けてもらってばかりだと鞄からお金を出そうとするリント。
「あ」
鞄の中で蝙蝠が寝ていた。
呑気に寝ちゃって、と思う反面ヴァインの期待になんとか応えたいリントだった。
二人と別れ、明日に備えて意気込むリント。
自分の部屋に着き、ヴァインに向けてメモを書いた。蝙蝠の足にくくりつけるためヴァインからのメモ同様細長くした紙に、
〝アトルピアに帰ってきました。頑張って真実を見つけます。あと何があっても死なないでください〟
と書き、蝙蝠の足につけ、
「ヴァインさんに届けてね」と伝え蝙蝠は飛び立つ。
最後の一文にはリントの想いが込められていた。
その頃、クローヴァンにある工場付近ではコータが身を潜めていた。
夜真っ暗な中工場の煙がもくもくと風に沿って流れている。突如煙の色が濃い黒に変わったかと思えば赤が交じり赤黒い色になる。
「何をどう加工したらあんな煙の色になるんだよ」
人間も吸血鬼も寝静まった深夜に稼働する工場、その謎がわかるまでもう少しかかりそうだった。
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