第十二話 あとは任せた
翌朝、荷物を持ちアトルピアへ戻るリント。宿前にはコータがいた。
「気を付けてね、ヴァインはアトルピアに戻ること知っているの?」
「それがアトルピアに戻ること伝えられなかったです。あんなことあると伝えられなくて」
リントは悲しげに言った。
「あんなことって」
「ヴァインさん倒れそうになってしまったんです。私の血で何とかなったみたいですけど」
「え!まさか飲ませたの?!(訳:吸血されたの?!)」
「飲ませたといいますか飲んでましたね(訳:試験管の血を飲んでた)」
「まじか!やるじゃんヴァイン!」
急にテンションが上がり始めたコータ。興奮気味のコータに何が起きているのかわからないリント。
「このまま会わずに帰るのもったいないよ! リントだって会いたいよね!」
食い気味にきたコータ。初日に会った時とは違う恐怖を感じていた。
「本当は会いたいです。でも夜の鐘が鳴るまでは待てないですし、あの変な紙も使えないですしね。心残りありますがヴァインさんによろしくお伝えください」
「待って、僕にいい考えがあるからついてきて! 御一行様が通る時間までは入れる?」
「そのぐらいの時間は大丈夫かと」
コータはリントの手を引き走り出す。リントの頭にはてなが浮かんだが終始テンションがおかしいコータについていくしかなかった。
ある場所で止まり物陰に隠れるリントとコータ。暫くするとあの鎖の音が聞こえてきた。
目の前を通る奴隷の御一行様、ヴァインが通るタイミングでコータは思いっきりリントを押した。
「うわぁ!」
ヴァインにぶつかるリント。ヴァインも突然のことに驚いた表情をする。
周りの住民も、繋がれた吸血鬼達もリントのことを見る。
「ご、ごめんなさい!ヴァインさん」
「俺は大丈夫だ、怪我はないか」
「あ!貴様昨日の人間だな!」
心配するヴァインに被せるように後ろの方にいた監視員に見つかってしまう。
「あの一旦アトルピアに戻ります!必ず戻ってきますから!」
リントは早口で用件を伝え、監視員から逃げる為走り出す。そしてそのままクローヴァンを発つ。
「行ってこい!リント!」
物陰から出てきたコータにヴァインは気が付き、ため息交じりに、
「お前がやったのか」
「僕二人のこと応援しているから!」
「何の話だ。それよりリントはアトルピアに戻ると言っていたな」
「アトルピアで情報を集めてくるってさ、寂しいねヴァイン」
変なテンションのコータにヴァインもついていけなかった。
「とりあえずまた必要になるだろうな。リントについていってやれ」
と使い魔を飛ばすヴァイン。
リントは走り続け、クローヴァンが見えるあの丘を登る。振り返りクローヴァンの町を見る。
「ヴァインさん、待っててください」
と決意を新たにクローヴァンの闇ではなくアトルピアの闇に立ち向かうリントだった。
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