第十一・五話 ほんの少しの心変わり

 場所は変わって王宮の地下牢。深夜。

 ヴァインは壁に寄りかかりリントから貰った試験管を見つめていた。

 リントと別れ採石場に戻った際、皆に血を飲んだことがばれた。

「ヴァイン様、血色が戻っているようですが会いに行くと言った女の血でも飲んだのですか」ブロウが尋ねる。

「すまない、体調が良くないと気づいたあいつがくれたのだ。だが理解してほしい。俺が倒れると誰も救えないと言ってくれたのだ、確かにそうだと気づかされた。俺だけすまない」

「いやそれでいい」「そうだ王に倒れられては困るからな」誰も咎めないその姿勢、仲間に助けられたと思うヴァインであった。


「はぁあいつに助けられる日がこんなに早くくるとはな」

 また口角が少し上がる。

「ヴァイン…」

 声をかけたのはネーブルだった。ネーブルはヴァインに抱きつく。

「どうしたネーブル」

「私怖いよ。また裏切られたらどうするの」

 ヴァインはネーブルをゆっくり引きはがす。

「その時はその時だ。でも今はあいつしか頼れる奴がいない」

「でもアトルピアの人間なんでしょ、その血だって最初は無害のをあげてそれは毒が入っているかもしれないよ」

 そんなことはないと完全な否定ができなかった。

「お願い、あの女はアトルピア出身だよ。信用しちゃだめだよ」

 しかしヴァインの中でリントの真剣な目がだますようには見えなかった。

「心配してくれているんだな、でも大丈夫だ。ネーブルは自分のことだけを考えていればいい。今はもう寝ろ、俺も寝る」

 ヴァインはゆっくり目を閉じた。ネーブルもヴァインが寝たのを確認し、心がすっきりしないまま目をつぶった。

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