第十・五話 つらいと言えたら
少し時間を遡った炭鉱場
リントとコータと別れ、監視員が来る前にヴァインも炭鉱場に入っていき仕事をし始めた。数分後、中に入ってきた監視員は仕事をしていた吸血鬼達に驚いたが彼らも特に気にせず作業をしているならと監視を続けていた。
以前ヴァインにリントのことを「協力者?」と聞いた女、ネーブルが作業中にふらっとよろけてしまう。それに気づいたヴァインは彼女を支え、
「少し休んでろ、代わりにやる」
と、彼女の持っていた道具を奪いネーブルがしていた作業を代わりにやるヴァイン。
「ヴァイン、大丈夫だから」
ネーブルが平気なふりをするもヴァインは監視員の死角になるところで彼女を休ませた。
「こらそこ何をしている!」
怪しい動きに気づいた監視員がヴァインに注意する。
「病人だ、休ませたい」
「そんなの許されるわけがないだろう!お前らは奴隷だ!休まず働け!」
容赦なくヴァインの背を鞭で叩く監視員。ヴァインはネーブルを守るように庇い痛みに耐えながら監視員の鞭を受け続ける。周りの吸血鬼達は駆け寄りたいが作業を続けるしか鞭を回避する方法が無い。
どれくらい叩かれただろうか。ヴァインは初めて膝が地面についてしまった。泣きそうになるネーブル、横目で見るしかない吸血鬼達、満足したように笑う監視員。監視員は周りの奴隷達に牽制する。
「お前らもこうなりたくなければ仕事の手を休めるな」と言い持ち場を離れた。
「ヴァイン様、大丈夫ですか」
かつてヴァインが王だった時、側近としてヴァインのそばにいたブロウがヴァインの腕を支え立つのを手伝う。
「ありがとう、ブロウ。もう大丈夫だ」
「血が足りていないんじゃないか」
誰かが言った言葉に心当たりがあるヴァイン。支給されているわずかな血も他の仲間に与え、自分自身は十分な血を飲んでいなかった。
「俺はいいんだ、お前達が生きていればそれでいい」
「私のせいでごめん」ネーブルが謝る。
「こんな姿を見せてしまって申し訳ない。私のことは気にするな、もうひと踏ん張りだ」
どのような状態でも仲間を優先する姿に皆惹かれていった。
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