PrequelーIIー『少年』

第4話『到着』

 星歴10017年7月16日午前9時48分、西の大陸『科学国家』中枢国『べリス』首都・『カザエラム』西地区。


「ふぁあ…、もう着いた?」


 馬車の中で寝ていると何やらいい匂いがしてきたので馬車を動かしているアルの隣に座る。


「着いて今は宿を探しているところだな」


 どうやら少し前にはもう着いており今はカザエラムに入る際にいた門番に聞いた宿屋に向かっている途中らしい。


「パン…」


「そこの紙袋の中に入ってるぞ」


「ん…」


 とりあえずパンを食べて頭を覚まそう。


「硬い…」


「そりゃフランスパンは硬いだろ…。もうひとつサンドイッチが入ってたはずだしそっち食べな」


「うん…」


 この長いパン、フランスパンっていうんだ…。


 そんな他愛もない会話をしながら私たちは宿屋へ向かう。


 ◈◈◈◈◈


 星歴10017年7月16日午前10時12分、『カザエラム』西地区・宿屋『アイゼ』。


「あの門番さんいい所教えてくれたなー、大通りにすぐ出れる位置に宿屋があるなんて知らなかったら気づかないぜ」


「…そういえばなんでカザエラムなの?」


 前々から「何故カザエラムにきたのか」というずっと気になっていたことを聞くチャンスだと思いアルに質問する。


 私の服とか食料を買うにしてもカザエラム直通の街道途中にある町への道の方がここよりはやく着くのだがアルは目にもくれず通過したのだから疑問が湧くのも当然だ。


「クランを作ることができるのはこの辺だとここだけだからな」


「クラン…?」


 なんだそれはと思っているとアルが説明してくれた。


「クランはまぁ簡単に言えば家族みたいなものだ。作って所属さえすれば安定した収入を得られるし実績を出し続ければ一生遊んで暮らせる金が得られる」


「ほへぇ…」


 なんかよくわかんないけど作って損はないって事なのかな…?


「他にも色々細かい規定があったりするが今は気にしないでいい」


 まぁ色々言われてもあんまり分からないけど…。


「とりま手続きさえすれば問題ないけど今日は宿でゆっくり休んで明日行くか」


 私はこくりと頷き、暇なのでアルの用事が終わるまで辺りを散歩することにした。


 ◈◈◈◈◈


 星歴10017年7月16日午前10時16分、『カザエラム』西地区の大通り。


「面接遅れたよぉ…、終わった…」


 わたし、メイ・クロスフォードは仕事を探してくるまで家に帰ってくるな、と言われここ数日は面接漬けの生活だった。


 全て落ちたが。


 元々人と関わるのが苦手で家に引きこもっていたのでここ最近までは外を出歩くことはほぼなく、金も昨日尽きてしまい体は空腹で限界を迎えていた。


「お恵みぃ…誰かぁ…」


 そんなこんなで道端のベンチに倒れるように寝転がり誰かがご飯を恵んでくれるように祈るとこっちに誰かが駆け寄ってきた。


「大丈夫…ですか?」


 淡い青の色に腰まで伸びる長い髪をした学生ぐらいの少女がバッグからサンドイッチを取り出し聞いてくる。


「…天使…様…?…あぁ、私は天に召されたのですね、神よ…」


「あぁぁ!灰に!灰にならないでぇ!神!?え?」


 ◈◈◈◈◈


「パン、ありがとう…ございます」


「あはは…いいんですよ…」


 私、ルナはメイド服を着た紺色の髪をしている少女が死に絶えていた所に出くわしていた。


「あ…名乗らないとですね…はは、…わたしはメイ・クロスフォードと言います…へへへ」


 メイはサンドイッチを食べ終わると片目を隠している髪をクルクルと触りながらそう言った。


 あ、私も名乗らないと、礼儀だもんね。


「私はルナでいいよ、メイちゃん」


「メイちゃん…!」


「あ!ごめん、嫌だった?」


「いえ…メイちゃん…メイ…ちゃん…ぐへへ」


 あれ、この人もしかしてやばい?


「あ、そういえばメイちゃんはなんでこんなところで倒れてたの?」


 と話題を変えるために聞くとビクッと肩を揺らした後、小さい声で話し始めた。


「えっと…その…家を追い出されて…所持金も尽きて…。仕事しないといけないのにわたし、こんなですから…どこも雇ってくれなくて…あ!あの…よければ私を…雇ってくれませんかなんて…おこがましいです…よね」


 むむむ、事情はよくわかったしこの前おじさんを助けた時に貰った金もある、雇うのもありか。


「…」


「だめ…です…よね」


「よし!これからよろしくね、メイちゃん!」


「…ほへ?」


「善は急げだよ!アルにもいいか聞いてこよーう!」


「えええぇー?!?」


 この後アルに聞いたら普通に承諾された。


 ◈◈◈◈◈


「お兄様、『東の姫君』と竜人はどうやらカザエラムに着いたようです」


「ご苦労、白炎」


「では」


 僕、白炎は兄、黒炎に調査結果を提出し、黒炎の部屋を出る。


「…お兄、黒炎…さよなら」


 さて、僕は『こちらの計画』を進める時だ。


 左耳につけているタロットカードの耳飾りを外し、ポッケにしまう。


 ——全ては明日、黒炎が『東の姫君』を攫ってから計画開始だ。


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