第5話『結成』

 私はまた、誰かの夢を見ていた。


「決めた!私たちの組織名!」


「は?」


 角が生えている少年が少女の言葉に反応する。


「月下竜団!私とアルヴヘイム、2人でこの組織を大きくしていくの!」


「はぁ…組織名の竜はわかるけど月下はなんだ?」


「そりゃ私の苗字『月ノ下』からとったの!」


「ふーん、いいんじゃない?」


「もう!アルヴヘイムはほんっとに反応薄いんだから!」


 ◈◈◈◈◈


 星歴10017年7月17日午前6時32分、宿屋『アイゼ』の個室。


「ご主人様ー、朝ですよー起きてくださーい」


「んぇ…?」


「あ…起きました。アルさんがご飯できたから起きてこい…と言ってましたよ…へへ」


「んふぇ…、…ありがとうね、メイ」


「いえいえ…一応、仕事ですから…ぐへへ」


 私は重い身体を起こし、洗面所へ足を動かす。


「あれぇ…クシ、ない…」


「そこ…の…1個上です…、わたし…取りますね…」


「ありがとう…」


 結局メイに髪を整えてもらった。


 ◈◈◈◈◈


 星歴10017年7月17日午前9時03分、クラン設立支援施設『ギルド』カザエラム支部。


「クラン設立の手続きをしにきたんですが」


「はい。ではこの用紙に各種記入をお願いしますね」


 と、アルはギルドの受け付け嬢から紙を受け取り記入し始めた。


「ご主人様…その…、ほんとにわたしも…いいんですかね…」


「?…なにが?」


「あ!えと…その…、クランに…こんなわたしなんか…が所属していいのかなぁ…と。へへへ…、烏滸がましいですよね…はい」


「え?いいに決まってるじゃん」


「そうですよ…ほへぇ…?」


 あれ、私なんかおかしいこと言ったかな?


「ご主人様…は、優しいですね…。わたしは昔から落ちこぼれで…優秀な兄様と…比べられて…家にも学校にも、居場所がなくて…でも、ご主人様は…そんなわたしに…ズビッ」


 あれ、私泣かせちゃった!?えっとティッシュどこ入れたっけ!?


「なので、あの…ご主人様さえよければ…、これからもよろしく…お願いします…」


「?こちらこそ…?」


 メイとそんな会話をしているとアルが紙とペンを持ってこっちにやってきた。


「クラン名、ルナが決めてくれ」


 …はい?


「え?私…?」


「あぁ」


 えぇぇ…。


「メイ…」


「あ、わたしは…センス皆無なので…」


 …どうしよう…、なにか…良さげな…。


「月下竜団」


 ふいに頭の中に浮かんだ言葉を発するとアルが驚いたような顔をした。


「…アル?どうしたの…?」


「あ、なんでもない…いいんじゃない?月下竜団」


 気のせいか。


「メイは?」


「いい…と、思いますよ…へへへ」


「じゃあルナ、書いてくれ」


「はい…?」


 私、人生でただの一度も字を書いたことないんですが!?


「あ…えと…」


 と私が断ろうとすると紙とペンを渡されたので渋々書くことにした。


「…あれ…」


 ペンを持ち、紙に近づけるとまるで身体が覚えていたかのようにすらすらと「月下竜団」の文字を書き終えた。


「じゃあ、手続き終わらせてくるから待っててな」


「あ、うん…」


 アルがそう言って紙を持っていく時、悲しそうな顔をしていたのが一瞬だけ見えた。


 ◈◈◈◈◈


「黒炎様、東地区いつでも行けます」


「ご苦労。この作戦が上手くいったら焼肉を奢ってやる、頑張ってこい」


「はい!」


 無線機で東地区での作戦を担当している部下と話を交わした後、無線を切りポッケに入れた。


「…さて、風水と俺の超能力の結果ではあと10分後…この通りにくるはずだ」


 だが、なにか嫌な予感がする。


 俺にとって、一番不幸なこと…。


 それは何かかは分からない。


 だが、俺の超能力「世界線」がそう告げる。


「世界線」——、数多ある未来に起きうる事象を見ることのできる能力。


 俺はそれを風水で占い、確率の高いものが「実際に起きうるもの」として作戦のプランに組み込んでいる。


 だが実際に、作戦に組み込んだ世界線になるとは限らない。


 風水でありえないとされた世界線になる可能性も十分あるのだ。


「…予感が、当たらなければいいのだが…」


 ◈◈◈◈◈


 私たちはクラン結成の手続きが終わり、宿へと向かっていた。


「なんか騒がしいな…」


「ですね…、なにか…あったのでしょうか…」


 と他人事のように歩いていると建物についている板のようなものに動画のようなものが映った。


「こちらカザエラム西地区!たった今大規模爆発が起きまして…」


 その言葉と板に映る光景。


 それを見て、私は何故か背筋が凍るような感じがした。


 息が、苦しい。


 頭が白くなる。


 足の震えが止まらない。


 ——そうだ、この光景…あの時——。


 するとどこからか煙が立ち込め始めた。


「ご主人様!どこで…」


 とメイの声が消える。


「…アル!アル!どこ…?」


 アルの声がしない。


 それに…なんだが眠く…。


 バタン、と私は倒れそこで意識が飛んだ。

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