第7話 ー 二つの道
裂け目から溢れた無数の顔は、遼の心を映し出す鏡のようだった。
笑いも涙も怒りも、すべてが「自分自身」から切り取られた断片。
水袋は、彼を丸ごと取り込もうとしている。
「俺は……どちらへ進む?」
鐘の音が続く。
袋の囁きと鐘の振動が交錯し、祠の中の空気は震えていた。
遼は両足を踏みしめ、袋から後ずさった。
「俺は……入らない!」
叫びと同時に、鐘の音がひときわ強く響き、袋の裂け目に稲妻のような光が走る。
水袋は怒りに震え、祠の柱を次々と弾き飛ばした。
だが、鐘を鳴らし続ける者がいた。
町の中央広場から、必死に鐘を打ち鳴らす若者たちの姿が見える。
袋の中からは怨嗟と誘惑の声が渦巻いた。
「抗うなら……お前だけでなく、町をも呑むぞ……!」
遼はその声に耳を貸さず、裂け目へと手を伸ばした。
そこに触れた瞬間、水は熱を帯び、袋の鼓動は凄まじく高鳴った。
――勝つか、敗れるか。
遼の意志と袋の力が、いま真っ向からぶつかろうとしていた。
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