君にはかなわないや
@sink2525
第1話 君にはかなわない
幾度となく流れていく春風。木々を揺らし花を散らす。ひらひらと舞うっている花びらは小さく輝いていた。それほど、大きな輝きではない。
ただ、それだけなのに。
桜の木の前に立った――当間凪は何度目かのため息を吐いた。吐きたくて、全部出したくて、そんな感情と気色悪さも含めたため息。
いったい、いつから幼馴染である――金城真由美のことが嫌いになってしまったんだろう。
分からない。分からない。いや、分かりたくなのかもしれない。理解できないんじゃなくて理解したくない。
嫌いな理由がないんじゃなくて、探せない。
きっと、そうなんだ。
「ずっと!! ずっと好きです」
風によって真由美の髪は揺れる。映画のワンシーンかのように溢す笑みは周囲に花を咲かせる。
枯れかけた木々が復活するように、そういった奇跡が起こるように。また、凪の気持ちも復活――しないように。
気持ち悪い。いったい何なんだよ。何で、何で、なんで、何で俺なんだよ!?
ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな。
何なんだよ。
――――もう、やめてくれよ。嫌いなんだよ! そういった笑みが声が嫌いだ。
いくら歳をとったとしても好きになることなんてない。いくら、日が経とうとこの冷え切った気持ちに火は灯ることはない。絶対にないんだ。
なのに、なのに、お前はなんで、なんで、こんなにしつこいんだよ。
黒く染まっていく凪の感情。笑に染まっていく真由美の顔。
「だから! お願いだよ、私と付き合ってくれない!? 絶対に幸せにするから」
真由美は頭を下げ手を伸ばす。
側から見たら幸せそうなシーン。
「嫌だ、お前なんか――」
ふとした瞬間。時は止まった。目が合い、彼女の手がそっと凪の頬を撫でる。
愛らしく愛おしいく。その優しい手つきは慣れている。何も起こらない環境。
変えることができない現実。否定しても賛同しても、正解なんてない。
「ねぇ……これで100回目だよ!?」
真由美の言葉であの日に戻っていく。
幾度となく流れていく春風。
――これは、彼女を救う物語
君にはかなわないや @sink2525
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