3

地面に下ろされたうんこは、

「てめえ、いきなり何すんだよ。この老いぼれが!shine 」と猫をかぶることを忘れ、悪態をつきました。


おじいさんは、日本人特有のスルースキルをかまし、

「見ろ、ダイベンベンじゃ……」と力なく呟きました。



そこにはダイベンベンによく似た色の土が、小さな山をつくって佇んでいました。



うんこはまだむしゃくしゃしていたので、「視力までイカれてんのかゴミ」と、

否定したかったのですが、それができませんでした。

なぜだか分からないけど、この土がダイベンベンだと悟ってしまったからです。


「ダイベンベン……」



うんこも変わり果てた姿のダイベンベンに、小さく呟くことしかできませんでした。

そしてこれまでのダイベンベンとの思い出が、頭の中を駆け巡りました。



汚物としてこの世に自我を持って生まれ、時に蔑まれ。

喧嘩ばかりでしたが、思い返せば、まともに会話をしてくれるのはダイベンベンだけでした。


おじいさんも話してくれますが、不当な値段で野菜が売れればいいと思っているゲスなので、信用なりません。


ある意味気兼ねなく話せるのは、唯一ダイベンベンだけだったのです。

うんこは泣きました。まるで自分が小便だと錯覚するほどに、涙が止まりません。




……それからどのくらい時間が経ったのでしょう。

しばらくして、うんこは土と化したダイベンベンに、大根の種を蒔きました。


やがてその種は成長し、まるで一本グソのように白くて太く、

立派な大根となりました。ダイベンベンの養分が入った大根です。


そうして、これを誰かが食べて、血肉になって。

ダイベンベンは形を変え、今日もどこかで生きているのです。


めでたし。めでたし。おしっこまい。

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人類が眠くなるための、つまらないお話。 たきのはら @takinohara__39

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