第17話 ごめんねとありがとう
「以上が私が体験してきた一週間…一ヶ月以上に及ぶ一週間です。きっといきなりのことだらけで、受け入れられないこともあると思うけど、全部本当です。今回の一週間の始めに、手紙をかくことを決めた私は、書き終わると同時に死のうと思ってました。何回か書き直したり、思ったより書きたいことが多かったりして、五日目の朝にようやく書き終わりました。ミカコのこともあったし、追加で書きたいことも増えたからね。結構長かったよね?腱鞘炎になっちゃうかと思ったもん。最近はスマホでメールを書くから、いざ手書きで書くと案外分からない漢字とかも出てきて大変でした。腱鞘炎ってこんなにムズい字なんだね。スマホで検索して写しました。ここまで長い文章なので、何回か同じようなことを繰り返してるかもしれないけどごめんね。何はともあれこの文章を書いた理由は、ナオトに生きてほしいからです。しっかり伝わってるかな?この文を書いていると、いくつもの思い出が頭をめぐりました。幼稚園の時から、今にかけての十七年間。全部書いてやろうとも思ったけど、さすがに諦めました。多すぎてね。私は始め、生きるために犯人を見つけたいと思ってました。正直今でも生きれたら幸せだなと思います。けど、重い話になるけど、限界でした。私は誰かを疑って生きることは向いてないようです。それに最近は悪夢しか見ません。自分が殺されたときを夢に見るんです。腹を刺されたり、首を絞められたり、ナオトが殺されたりです。他にもさんざん疑ってきた友達に愛想をつかれる夢です。私たちはナナカを友達と信じてたのに、ナナカは疑うんだねって、みんなに責められるんです。当然っちゃ当然です。また、頭痛や吐き気でも苦しんでました。足がふらつき、学校へ向かうのがしんどいと思うときもありました。それでも、ナオトに会うために学校へ行きました。本来なら私は始めの十四日で死んでいたはずなのです。だから、それを越えてナオトと何回も会えて、また生きる道を見つけようとできたことはすごくよかったです。今回の一週間…と言っても四日だけだけど、ナオトと一緒にいることが大きな目的になってました。結末はこうなってしまったけど、あまり気にしないでください。ナオトが罪悪感を覚える必要はないよ。優しいナオトはきっと、私を助けられなかったことで自分自身を責めるけど、私はナオトが私のために行動してくれただけで嬉しかったよ。何度も言うけど、本来とっくに死んでる命だからね。約一ヶ月長く、生きれただけでもきっと幸せです。それと、本当に嬉しいことは他にもありました。言うまでもなく、ミカコのことです。この五回目のループで、始めてミカコと心から打ち解けられてすごく嬉しかったです。ミカコとの距離感は薄々感じていたけど、どこか見て見ぬふりをしてきました。気のせいだって自分に言い聞かせていました。そんな中、今回一緒に泣いて、思いをぶつけあって、ミカコとの距離が昔のように、いや、昔よりも近づけた気がして嬉しかったです。喧嘩するほど仲がいいと言うのは本当ですね。なんやかんや今まで言い合いとかしてこなかったから、この経験はあの世でも大事に持っておきたいです。けど、お互いの心を見せ合ってすぐに私が死んじゃったことはごめんなさい。仮に今日死ななくても、十四日には殺される命だから。どう殺されるか分からない以上、自ら命を絶ったほうが苦しくないと思ったんです。逃げたと思われても仕方ないです。私は生きることを諦めてしまったんです。きっとこれでもう一週間を繰り返すことはないかな。本当のお別れ。悲しまないでとは言えないけど、私も悲しいし、けど、二人は生きてね。死なないでね。そのための手紙ってことは十分に伝わったと思います。何回も繰り返すけど、本来私は死ぬ命だから、ナオトは生きてね。責任とかを感じずに、私の死を乗り越えて未来へ、七月十五日へと進んでね。悔いがないといえば嘘にはなります。犯人が誰だったのか気になるし、どうして私が殺されたのかも分からないままです。ミカコとまた遊びたいね、何て言ったのも叶わなくなってしまったのは申し訳ないです。でもきっと、そう言うものなんだと思います。分からないことがあるのが人生なんだって割りきりました。割りきらなきゃ耐えられませんでした。耐えられてないから、こうなったんだけど。最後にもう一度感謝と、謝罪を書かせていただきます。ここまで長い文章を読んでくれてありがとう。私のそばにいてくれてありがとう。友達でいてくれてありがとう。勝手にいなくなってごめんね。私の分もたくさん生きてね。ミカコ、ナオトのこと支えてあげてね。ナオト、大好きだよ。ずっと今までも、これからも愛してます。
七瀬 奈々華より
PS.涙で滲んじゃって少し読みにくいかも。ごめんね。」
「……ナナカ。」
確かに滲んで読みづらかった。けどこの滲みがナナカのものによるものなのか、俺のものによるものなのか、それは分からない。
「ナナカっ!」
手紙を握り、上を見上げる。きっと今ひどい顔をしているだろう。ぐちゃぐちゃな顔。喉が痛く、目頭が熱い。タイムリープだとか、何度も死んでるだとか今だ整理がつかないことだらけだ。でも思い返せば、ナナカにしては考察が鋭かったり、違和感はあったんだ。ああ、そのときに気づいていたら。ああ、昨日さよならといわれた時にあの手をつかんで止めていたら、彼女は今も隣にいたのだろうか。ナナカは自分を責めないでと言ったが、後悔せずにはいられない。固まった空気が俺を包み、息苦しくなる。俺も逃げ出したくなる。何もかもが嫌になる。そのときだった。ぽんっとミカコが俺の肩に手を置いた。冷たい体に肩から暖かみが広がっていく。そうだ、今の俺は一人じゃないんだ。固まった空気が動きだし、体が少し軽くなった。
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