【カクコン11短編】(G6)もしも川上から流れて来たのが大きな桃でなくてGカップのブラジャーだったら

七月七日

第1話(一話完結)

 昔むかし、あるところに爺さまと婆さまが住んでおった。

 爺さまは山に柴刈りに、婆さまは川に洗濯に行く、そんな日々を送っておった。


 ここで、最近の若いもんは、『しばかり』と聞くと、サッカーのピッチやらラグビーコート、または小洒落た家の狭い庭に敷かれている芝生を刈る事を思い浮かべるらしいが、それは大きな間違いである。


 正しくは柴刈りと書いて、芝刈りではない。


 柴刈りは、たきぎに使う小枝を集める事、つまり薪拾いの事なのだ。じゃあ薪拾いと言えばいいじゃんと思うかも知れんが、そこはそれ、何か大人の事情とか、利権とか国際問題とかが関係しているのか、ずっと柴刈りと言い伝えられているのだ。知らんけど。


 話を元に戻そう。

 ある日婆さまが川に洗濯に行った時、川上から何かが流れて来たのじゃ。それは、ブラジャーだった。


 婆さまは、それを拾って自分の洗濯物と一緒に良く絞ってから家に持って帰って庭に干したんじゃ。


「これは何じゃ」

 乾いた洗濯物を畳んでいた時、その中に見慣れぬモノを発見し不審に思った爺さまが訊いた。


「ブラジャーじゃ。タグにG−75と書いとる」

「こげな大きな乳の女がおるもんなのか」

「おるんやろうなぁ」


 婆さまの乳は余り大きくはなかった。二人が夫婦めおとになってから、爺さまが毎日毎晩婆さまの乳を揉んで揉んで吸って揉んで育てたおかげで、婆さまの乳はAカップからBカップまで成長した。


 爺さまは女人は婆さましか知らなかったので、そんな大きなおっぱいを持つ女子おなごがいる事を知らなかった。


 爺さまは興味津々だった。ブラジャーを畳の上に置いてみると底の深いお椀を二個伏せたような盛り上がりがある。


 しかし触ってもペチャっと潰れてしまう。このブラジャーに入っている乳を揉んでみたい。爺さまは次第にそんな欲望を持つようになった。


「餅をついて詰めてみようか」

 見かねた婆さまがそんな提案をし、二人で正月でもないのに臼と杵を出してきて、餅米を蒸し、餅をついた。


 つきたての餅は柔らかい。ついた餅に餅取り粉をまぶして、ブラジャーの中に入れてみると、ついた餅が全部入ってしまった。それを婆さまの胸に当てて、ブラジャーを外した。


 ちょうど庭に植えていたサクランボの実を二個 千切ちぎって、餅おっぱいのてっぺんに埋め込んだら、婆さまの胸がGカップの巨乳になった。


 つきたての餅おっぱいを爺さまは揉んでみた。生まれて初めての感触に、爺さまは震えた。


 その夜、二人は十四年ぶりに合体した。


 翌朝、餅おっぱいは硬くなってしまい、爺さまは、悲嘆にくれた。


(※餅おっぱいは、二人で美味しく頂きました)


 本物の巨乳を見てみたい。爺さまの欲望は膨れ上がるばかりだった。川上から流れて来たのなら川の上流にこのブラジャーの持ち主がいるのかも知れない。爺さまは、まだ見ぬ巨乳の女人に想いを馳せた。


 ある日、婆さまが寺子屋時代の同窓会に出かけた。開催場所は山を下りた麓の村だった。麓の村まで歩くと半日かかるので、婆さまは朝から出掛けて行った。新しい着物を身につけ、日頃しない化粧も施して気合い十分に出て行った。


 一人になった爺さまは、今しかないと思い立ち、あのブラジャーをふところに忍ばせて、川の上流を目指して山を登った。


 登るにつれて、道は険しくなり、足元も悪く、樹木は厚く茂って来た。悪路に阻まれ何度か諦めて引き返そうかと思ったが、懐に忍ばせたブラジャーの存在を確かめて、爺さまは気持ちを強くした。


 そうして、急な坂を登り詰めて生い茂る木々の枝を掻き分けると、いきなり視界が開けて、美しい泉が現れた。

「これがあの川の源泉だったのか」

 爺さまは初めて見た泉の情景に感極まっていた。


 泉のほとりに一軒の家があった。家はその一軒だけで他には何もない。爺さまは、今一度 ふところのブラジャーを確かめ、その家の扉を叩いた。


 戸口に出て来たのは、三人の美しい娘だった。

 しかも、三人とも同じ顔だ。三つ子なのかも知れない。


 おまけに、三人とも素肌に薄物の着物を羽織り、腰紐で結んでいるだけの格好だった。盛り上がった乳房とてっぺんの桜色の突起、腰紐の少し下の黒っぽい茂みも薄物の着物を通して透けて見え、爺さまは目のやりどころに困り、三人の足元だけを見つめていた。


「あ、わ、わしはこの泉から流れる川の下流に住む者じゃが、こ、これを拾って‥‥‥」

 爺さまは、懐からブラジャーを出して両手で掲げた。


「これは、こ、こちらのどなたかのモノではござらぬか」


 三人の美女は顔を見合わせたのち、こう答えた。


「私たちの胸のサイズは全く同じなので、誰のモノかは分からないのですが、私たちのモノには違いないと思います。わざわざ届けていただきありがとうございました」


 左端の娘が爺さまからブラジャーを受け取った。ブラジャーは懐の中で温められ、爺さまの汗で少し湿っていた。


「私たちは三つ子で私が長女のマミ、この子が次女のエミ、そしてこの子が三女のユミです」


「わざわざ届けていただいたお礼に、お食事を振る舞いたいと思うのですが、いかがですか」

 次女のエミが妖艶な笑みを浮かべて問うた。


「じゃ、じゃが‥‥‥」

「どうぞ、お入りください」

 三女の手に引かれて、爺さまは家の中に導かれた。


 ほどなくして、爺さまは宴の卓についていた。食卓には山菜やキノコ、泉で獲れた魚や庭で飼っている鶏料理などが並んでいた。飲んだこともない美酒も振る舞われた。


 三人姉妹は、その薄物の着物で艶めかしいダンスも踊って見せた。腰紐だけで閉じられていた薄物は動きに合わせてはだけてきて、爺さまはますます目のやりどころに困ってしまう。


 ご馳走とダンスを堪能して、美酒を勧められるままに飲むうちに、爺さまの下半身に変化が生じた。若い時のような力がみなぎって来たのだ。

 気づいたら、その漲る力で食卓を持ち上げていた。


 それを見逃さなかったのは長女のマミだ。マミは、立ち上がって腰紐を解き、身につけていた薄物の着物を脱ぎ捨てて、爺さまのそばにひざまずいた。食卓を持ち上げている爺さまの棹に手を添えて言った。


「この家に殿方が来られるのは久しぶりなので、御酒に強壮剤を混ぜてしまいました」

 そうして裸のマミは爺さまの膝の上にまたがった。


 マミのGカップのおっぱいが爺さまの顔に押し付けられた。


「お姉様だけ、ずるい!」

 次女と三女も薄物を脱ぎ捨てて爺さまの左右にひざまずき、乳房を爺さまに押し付けた。


 爺さまは三方から計六個の巨乳に囲まれて、天にも昇る心地だった。


「いや、その、わしには妻が‥‥‥」

 爺さまの上半身には理性が残っていたが、下半身は別人格であった。


 いつの間にか爺さまは膝に跨っていたマミの中に入っていた。上下に腰を動かすにつれ揺れるマミの乳房、左右のエミとユミの乳房、六個の巨乳を爺さまは順に吸ったり揉んだりして、ついに爺さまはマミの中で果てた。

(婆さま、すまん‥‥‥)


「お爺さま、汗を流しましょう」

 エミとユミに手を引かれて、爺さまは風呂場に連れて行かれた。


「お背中流しますね」

 木の椅子に座った爺さまの後ろに控えた次女のエミが、石鹸を泡立てて、自分の乳房に塗りたくり、爺さまの背中を自らの乳房で擦った。


 爺さまの前にひざまずいた三女のユミも石鹸の泡を乳房に塗り付けて、爺さまの胸やら脚やらに擦り付けた。


 夢見心地の爺さまは、いつの間にか三女のユミの中で果てていた。


「次女はいいのか?」

 爺さまは妙な心配をしたが、その心配は杞憂だった。


 風呂から上がった爺さまは、濡れた身体を二人に丁寧に拭かれた後、寝所に連れて行かれた。泊まるつもりでは無かったが、こんな時間に山を下りる勇気もなく、婆さまに何と言い訳をしようか、そればかりを考えていた。


 寝所には布団が四組並べて敷かれていた。その中の一つに爺さまが横になると、次女のエミが裸で覆い被さって来た。爺さまはその日三回目の精を放出した。


 翌日も三人の娘は爺さまに尽くした。文字通り酒池肉林いや酒池乳林の生活を爺さまは手放したくなかった。


 三人の娘は、見た目が全く同じなので見分けが付かなかったが、爺さまが見つけた唯一の違いがホクロだった。


 長女のマミは、右乳の乳輪に小さなホクロが二個並んであり、三女のユミは左の乳輪に二個、そして次女のエミは左右の乳輪に一個ずつ小さなホクロがあるのだ。


 だから、誰かわからない時は、着物の襟をくつろげてホクロを確認し、「ああ、おはようマミ」と言えばニッコリと微笑み返してくれる。


「あのブラジャーはいつ着けるんだろう」

 考えてみたら、三人はいつも素肌に薄物を羽織っているだけで、下着を付けたところを見たことがなかった。


「山を下りる時には付けますわ」

 尋ねてみたらそんな答えが返って来たが、誰かが山を下りるところを見た事はなかった。


 そうして、夢のように月日は流れた。


 ちょうど十月十日後、次女のエミが玉のような男の子を出産した。もちろん爺さまの子だ。


 それから二日後、長女のマミも出産した。マミの産んだ子は皮膚が赤く頭に角が一本生えていた。


 その二日後には三女のユミが出産した。皮膚が青く頭には二本の角が生えていた。


 二人の鬼子も爺さまの子だ。


「私たちが産んだ最初の子は、この川に流す決まりです」

 長女のマミは寂しそうに言った。


 次女の産んだ玉のような子は、大きな桃の中に閉じ込められて川に流された。その川の下流には爺さまの家がある。


 長女と三女が産んだ角が生えた子は、竹で編んだ葛篭に閉じ込められて、別の川に流された。


「この川は何処に流れつくのじゃ?」

「鬼ヶ島に繋がっております」




 一方、寺子屋の同窓会に出かけた婆さまは、初恋の人に出逢って思い出話に花を咲かせていた。当時婆さまの初恋は片想いに終わっていたが、その事を告げると実は彼も婆さまが好きだったと告白した。彼は数年前に妻を亡くして今は一人だった。


 二人は盛り上がり、その夜ついワンナイトラブに至ってしまった。


 翌朝、婆さまは、爺さまに何と言い訳しようと考えながら帰宅した。最終電車に乗り遅れた? いや、電車はない時代だ。雪に閉じ込められた? いや、季節は初夏だ。


 考えがまとまらないうちに家に着いた。


「ただいま帰りました」

「爺さま?」


 爺さまは何処にもいなかった。

 次の日も、その次の日も、爺さまは戻って来なかった。


 数ヶ月後、初恋の人が訪ねて来た。

「どうしても忘れられなくて」


 婆さまは、彼を受け入れた。爺さまのことはもう諦めていた。

 二人は、その家で一緒に暮らし始めた。


 ある日、婆さまが川に洗濯に行くと川上から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れて来た。


 婆さまはその桃を家に持って帰り、爺さま(新)と一緒に切ってみると、中から玉のような男の子が出て来た。二人はその子に桃太郎と名付けて大切に育てた。


 桃太郎は立派な若者に育ち、天下無双の剣術使いとして名を馳せるようになった。当時村の人々を苦しめていたならず者の鬼を退治する為に鬼ヶ島に出かけた。


 そこには角が一本頭に生えている赤鬼と二本生えている青鬼がいた。


 これが桃太郎のお話の真相。

 信じるか信じないかはあなた次第である。



 了

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