吸い殻
トシキ障害者文人
第1話 馴れ初め
信一郎は、付き合っている恋人の幸恵の下僕。幸恵と付き合って、服従して、ダメになりたい。命をささげて、ダメになるために生きている。女は、男を魅惑して、虜にして、ダメにする。彼女に降参し、絶望して、男は、彼女を恋人にする。いつか、信一郎は、幸恵に、むしゃむしゃ人生を食われるに違いない。カマキリのメスが、産卵の際、オスカマキリを食べてしまうように。メスに食べられているオスは、きっと陶酔して、快感なのだろうと信一郎は、想像する。
初めて、信一郎は、幸恵に出会ったとき、彼女は、肌の浅黒いなんて、ブスな女だろうと思った。太っている。瞳は、ぎょろぎょろ大きく見開かれ、髪は、黒く背中のあたりまで伸ばしている。上下、安っぽい黒のスエットを着ている。全体的に、黒光りしていて、何日も風呂に入っていないせいか、近づくと据えたにおいがした。彼女は、まるで、ゴキブリだと思った。でも、さえなく、ブ男の信一郎は、こんな女が、ふさわしいと思う。こいつに服従してもいいなと思う。何か、ピンときた。
社会のためにダメになるカップル。ダメにダメになっていく。恋愛とは、堕落して、落ちていくもの。絶望的にだ。
「もう、君しかいない。」
その言葉は、愛と言うよりも、諦めの言葉。プロポーズは、絶望の言葉。
やがて二人は、結婚して、子供が誕生する。二人は子供の下僕になる。子供の命の方が、親の命よりも尊い。男の子だった。二人の王子様である。
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