こうであるべき。普通はこう。そうじゃない人は全ておかしい。可哀想、変だから関わらない方がいい。みんながそう言ってた。それは、もっとも残酷な刃だと知るべき。
人の心の深い傷や孤独に踏み込んでいる点が印象的な十連首です。これ、いろんな人に詠んで欲しい。うっかり使ってしまう「大丈夫」や「優しさ」といった日常的な言葉が、救いではなく毒や沈黙として作用する描写には、本当にドキリとさせられました。全体を通して、社会的弱者の視点から世界の息苦しさと「受け入れられたくない」という矛盾した叫びが繰り返され、詠まれた首を読む者に「優しさとは何か」を問い直させる作品群であると思います。繰り返します。いろんな人に読んで欲しい。
私が今ここにいることに、あなたの許可はいりません。お願いですから、私の足の上に乗っているその足をどけて頂けませんか。マジョリティであることは、それ自体が特権だということを、世間の人はもう少し知っておいてもよいはず。
世の中ではジェンダーレスや、ジェンダーフリーなどが言われていますが、本作を読むと、その実態はほとんど改善されていないようです。多様性を認める社会は絵空事なのでしょうか?作者の痛切な孤独を詠んだ短歌を読んでいると、そう痛感させられるのです。作者がどこにも叫べなかった思いを、本作の短歌に凝縮して詠んでいることが、せめてもの慰めになっていることを祈ります。例えばこんな1首を紹介しておきましょう。支えると微笑むあなたの優しさが私の心蝕む毒に
素晴らしいです。十首すべてが心を真正面から見据えた力作でした。胸の奥を締め付けるような感覚を覚えました。やさしさすら毒になる感覚、誰にも頼れない孤立、大丈夫に隠されたナニカ。短い言葉、でも鋭く突き刺ささる強い言葉。余白の感情が濃いです。ふと、静かな痛みを残す言葉たちでした。
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