第29話 一日目の終わ──
「──つーワケだ。お前ら持ち回りでこの
木っ端のクリーチャー共を狩って回り、宝石やら電子部品やらの値打ち物を拾い集めるうち、気付けば夕刻。
そうそう来られないボーナスステージに名残を惜しみつつも
で、肝心の反応はと言うと。
「ざっけんなー! それが人にものを頼む態度かー!」
「なにが「面倒見ろ」よ! 偉そうに命令すんな!」
「何様だー! 無駄に顔が良いのムカつくのよー!」
「せめて頭くらい下げなさい
「土下座しろー!」
もうやだコイツら。隙あらばブーイング。
反骨精神の塊じゃねーか。
「バカー!」
「アホー!」
だがまあ、やはり
程度の低い悪口をいくら並べたところで、俺の心にはさざ波ひとつ立たない。
「女たらしー! 鬼畜ー!」
なんとでも言うがいいさ。
「二股男ー! 人間のクズー!」
根も葉もない中傷だな。的外れ
いつ誰が股かけたか言ってみろ。
「えたひにんー! 非国民ー!」
それは流石に言い過ぎだ。
………………………………。
……………………。
…………。
そんなこんな、ネタも尽きたらしく、俺への野次が収まってしばらく。
「じゃあ今週はアタシらのとこね。ヨロ~」
いや普通に引き受けるのかよ。
あんだけギャースカ喚き散らしてたのはなんだったんだ。
「新人一人の面倒を見るくらい、貴方に貸しを作れるならお釣りがくるもの」
「それに、そもそも貴方に借りがある
なら、もっとしおらしく対応しろ。
およそ借りがある奴の態度じゃなかっただろ、さっきのブーイング。
「ったく……よし、出たな」
電子音を鳴らすエーテル測定機の画面を覗く。
……予想より少し渋いが、協会に報告した時よりも大きく目減りしてる。
この分なら見込み通り、明日中には片付きそう──
「あー!? ちょっと、そのブーツ私のよ!」
「脚が刃物みたいに変異するアンタなんかが履いたらズタズタになるのが関の山。せっかくの可愛い靴を台無しにするだけでしょ」
おっと。始まったか。
「だーかーら! 今日はアタシが一番活躍したんだし、分け前も一番じゃなきゃおかしいでしょ!? あいあむえむぶいぴー!」
「ハッ、何が活躍よ! 倒したクリーチャーはこっちの方が多かったっての!」
「んなもんアンタがトドメばっかり持って行ったからじゃないの!」
「そっちの詰めが甘くて逃がしたヤツを仕留めてあげたのよ!」
「綺麗……」
「……その指輪、私が拾ったのに似てるわね。それ私のじゃない? いつスッたの?」
「は? 人聞きの悪いこと言わないでくれるかな、これは正真正銘ボクのだけど?」
「盗っ人猛々しいわね。なに? やる気?」
「そっちこそ濡れ衣を着せようなんて良い度胸だね。いいよ、やってあげるよ」
殴り合いに発展することも、なんら珍しくない。
「アンタはいっつもそうやって!」
「ったぁ!? やったわね、この!」
程なく合戦場のごとき様相を
それに、ただでさえ荒廃した景観を更に崩されては、たまったものではない。
「──やかましいぞ、てめェら! 人の
変異状態の
「
「だ、だってボクのなのにコイツが……!」
「たかがじゃないし! ダイヤの指輪だし!」
溜息を吐きつつ、他の
「サファイアでよければくれてやる。これで満足しとけ」
「あ……ありがと……」
よし。まずは一組。
どうせこうなるだろうと踏み、いろいろ集めておいて良かった。
「……えへへっ」
「ねえ
「やだ」
女とカラスは
次。
「
「「もう解散する! こんな奴とやってらんない!」」
双子揃って移植手術を生き延びるなどという天文学的な奇跡を掴んでおいて、同じ地獄を切り抜けた半身と何故もっと仲良くできないのか。
ペアのブレスレットをやるから、ムカついた時は互いにソレ見て六秒耐えろ。
アンガーマネジメント。
「キリカ!
「ぐぬぬ……だってだって、こいつが履いても変異した時に破くのがオチだし!」
そんな歩きにくそうなもん履いて
つーかそういうこと言い始めたら、ピンヒールがデフォルトのジルにも飛び火するか。
「
「グルルルッ」
「フシイィィ……」
「カロロロロ」
三人とも
「
「ふん……命拾いしたね」
「そっちこそ」
俺のあずかり知らないところでなら好きにすればいいが、明日も同じメンバーで顔を突き合わせる以上、わだかまりを残されては面倒。
なので適当に宝石類などを配って回り、機嫌を取る。つくづくモールに出られて良かった。
まだ八月だが、気分はサンタクロース。
よし、これで全員──はて。
「おい。
「え? あれ、そう言えば居ないね」
「まだ帰ってきてないのかな、珍しい」
教えてやるまで時計の読み方も知らなかったくせ、やたらと時間にうるさい奴が定刻に遅れるとは。
「
「えっと、なんかやたら鳥居がいっぱいあったとこ」
となると『
それなりに広いが、迷子になるほど複雑な地形でもないハズ。
「潜ってからは一緒に行動してたのか?」
「ううん。もらった資料で場所を確かめた後はチームごとに分かれた。
「さては『ビデオ屋』に入りやがったな」
特殊な環境を
あそこは地図があっても迷いやすい上、空間がこんがらがってて
今頃は帰り道が分からず、ベソでもかいてる頃だろう。
「しょうがねぇ、迎えに行くか」
幸い、ビデオ屋と繫がった
「ジル、お前は先に帰って──」
その言葉を終えるよりも先、強烈な悪寒が背骨を揺らす。
俺だけでなく、ここに居る面子の大半が、一斉に
馬鹿でかい石造りの
その枠内に張られた薄汚い虹色の膜が──ぼこり、と不快な水音を立てて膨れ上がった。
シンジュクのヒト喰い 竜胆マサタカ @masataka1201
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