第25話 至高の数打ち
「はははっ。こいつはラッキー」
色あせたリノリウムの床を
「まさか『モール』に出るとはな。幸先いいぜ」
一階から四階まで吹き抜けとなった高い天井。大型車も飾れるだろう広い通路の両サイドに並んだ数々の
全体的に薄暗くも、あちこち点々と明かりが残っているため、視界は十分開けている。
「なんだ、ここ……」
「旧時代のショッピングモールを投影した
呆然とする少年の近くで横倒しになっていたマスコットらしきキャラクターの立体像を起こし、元あったと思われる位置に立たせる。
モチーフはイルカっぽい。白と黒のペンキがあれば
「ちょいと散らかってるが、探せば大抵なんでも揃う。酒もタバコも、缶詰なんかの食料品もな」
俺はアルコール全般ダメだし、タバコも
「あっちの電器屋とホームセンターには、生きた家電やら発電機やらも転がってる」
「え……!?」
「す、すごい……
まあ、こうも物資が充実した
言動を見るに今日初めて
俺の初
いきなり下層レベル。しかも平均気温
あれ以来、アダチゲートには近寄ってすらいない。
二度と行くかよ、あんなとこ。
「欲しいもんがあったら先にリストアップしとけ。来たいと思って来られる場所じゃねぇぞ」
モール自体のエーテル濃度は表層レベルだけれど、
したがって、入るまで行き先不明な
更に付け加えると
…………。
ついでに、だ。
「あー」
ぐるりと周囲を見渡す。
入店
「っ……!?」
「あら」
少し遅れて、取り囲まれていることに気付いた少年とジルが
「大衆の共通認識は、ショッピングモールと言えばゾンビらしい」
「なんでかしらね?」
知らんが古いゾンビ映画とかでもモールを舞台にしたやつは多い気がする。
〈うぅぅううああああっ〉
〈おぉ、おおぉっ〉
〈ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ〉
ざっくり数えて百体ほど。モールに来るたび大掃除してるってのに、
「私がやりましょうか?」
「お前だと荒っぽくなりすぎる。このあたりは服屋が多い」
そろそろ秋物欲しがってただろ。纏めて黒焦げになっちまうぞ。
「おい
「な、無いです」
「じゃあ
「えっと……まだ何度か試しただけですけど、だいたい一分くらい……」
そんなもんだろうな。
モールのゾンビ共なら単体の存在強度は軽自動車くらいだし
何より──オモチャで遊ぶには格好のシチュエーションだ。
「追加
「え、えっ、あのっ」
「返事」
「はいっ!」
人差し指に
後ろ腰で小さく唸っていた長方形型の
「──セット」
ガコン、と
そして──明らかに
「そぉ、らぁっ!」
先陣切ってきたゾンビ共の頭を、左右で三体ずつハネ飛ばす。
なかなかの斬れ味だ。それに廃病院のゾンビナースや
「しぃあっ!」
頭を欠いた六体が倒れるよりも早く、返す刀で刃を振るい、更に続々と斬り伏せる。
九体。十二体。十三体──
「ン」
都合十三体目で、右側の
「セット」
手中に残った
新たな
三階のゾンビにブン投げて顔面へと突き刺し、両手が空いたところで次の双刀を引き抜く。
「セット」
今度は十二体目で破損。
一階のゾンビをあらかた全滅させ、吹き抜けから
「セット」
九体目で左が破損。
右も折れかけだったので破棄し、次を引き抜く。
「セット」
破損。次。
「セット」
三階のゾンビに
「セット」
次。
「セット」
次。
「セッ──」
──と。残り五体か。
キリの良い数字だし、こんなもんにしておこう。
「よし。もう動いていいぞ」
……言いつけ通り
時間がかかるだけでなく、まだ上手くコントロールできてないらしい。早めに
「あ、あの……それは……?」
「あぁ? ああ、
見やすいよう背中を向けつつ、後ろ腰の
「刃渡り八十五センチ、幅三センチの
刃が劣化する端から入れ替えることで攻撃力を
かつてヨツカド社がライキリと同時期に開発した製品だが、行き過ぎた小型軽量化の
ライキリと同じカタログに
トーキョー封鎖前に作られたヨツカド社の製品は、ちょいちょいキワモノが混じってる印象。
「面白れぇオモチャだろ。貸してやろうか?」
「い、いえ……怪我しそうなので遠慮します……」
そいつは残念。しかし賢明。対クリーチャー戦において近接兵装の扱いが極めて難しいのは純然たる事実だしな。
俺みたいに心臓さえ無事なら大抵の傷は数秒で癒える生命力の持ち主か、
だからこそオジキもこれを安く売ってくれたんだろうし。他の奴にはまず売れねーだろうから。
「じゃあ、こっちだ」
対異形弾専用大型拳銃を、マガジンが三つ入ったホルスターごと少年に投げ渡す。
「やるよ。射程二十メートル以降は弾道ブレまくってロクに当たらねぇ
「
「アイツはアホなんだ」
経験上、この手の集まりだと金欠やら
治安維持局員が腰に下げてる高級品と違って
「お前が始末しろ」
よたよたと近付いてくる五体のゾンビへと
自販機を
ぬるい。
「返事」
「は、はいっ!」
見よう見まねで銃を構え、ゾンビ共に突撃する少年。素直でよろしい。
十二時間の液化エーテル漬けで地獄を味わったからか、もしくは性差こそあれどちらにせよ死ぬ確率の方が遙かに高い賭けへと身を投じた経験ゆえか、はたまたその両方か……ともあれ
……そんな奴等の過半数が遠巻きにする俺の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます