第6話 異形因子
「ははははっ、くすぐってぇなオイ」
トーキョーに広く出回っている安物のマシンガンで腹回りを中心に撃ちまくられ、こそばゆくて思わず笑ってしまう。
「弾が遅い。火薬をケチった減装弾とは舐められたものだな」
隣では
ドアも静かに開け閉めできないくせ、無駄なところで器用。
「銃が、効かねぇ……まさか
「あァ?」
まさかも何も、他に同じような真似できる人種が存在するなら、むしろ紹介していただきたいもんだね。
マジモンのバケモンだろ。サイン欲しいわ。
「なんで
集会か何かの
ようやく俺たちの素性に気付いたらしく、幹部格と思しき男が声を張り上げる。
つーか。
「お前、今は『辻斬り』なんて呼ばれてんのか? 完全に通り魔扱いじゃねぇかよ」
「貴様など『ヒト喰い』ではないか。私のことを笑えた立場か」
正直どっちもどっち。どんぐりの背比べ。
少なくとも自分で名乗る気にはなれないレベル。そういう年頃はとっくに卒業した。
もっとも、だいぶ前に呼ばれてた『
アレは酷すぎた。もはや通り名と言うか単なる悪口じゃねーかよ。
「くそっ、入れ違いでカチコミかけてきやがった……ビビってんじゃねぇぞ、テメェら!
二人ね。戦力としての数え方を根本的に間違ってるな。
そして俺も
最低限タイマン張りたきゃ列車砲でも引っ張ってこい。実物なんか見たことないけど。
「アレを使え! 囲んで叩け!」
「……?」
なんだ、こいつら。
お揃いでゴツい注射器なんか出して、こんな時にヤクでもキめる気──
「ぐぅ、お、おおおおおおおおッッ!!」
「ぎぎぎぃ、ぎぃぃぃッ!! ぱわぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
「にたすにはご、にたすにはご、にたすにはごォォォォッ!」
これはビックリ。毒々しい蛍光色の液体を首に打ったかと思えば、一斉に異形化しやがった。
全員、肉体の変異が大きい。俺と同じ
…………。
「妙だな」
たとえ
一人二人ならともかく、この場の全員を見過ごすほどボケちゃいないぞ。
──そもそも
染色体だかホルモンバランスだか体構造だかの関係で、
必然的に希少となる男の
となると、やはりあの注射器が怪しい。
妙なもん打ちやがって。閉鎖空間のトーキョーは違法薬物に死ぬほど厳しいぞ。
「……ま、とりあえず叩きのめすか」
「了」
ちょうど腹が膨れてて良かった。
男の肉なんざ食欲すら湧かねぇ。
「知ってると思うが、甲型はタフだぞ。やれるか?」
「誰にものを言っている。私とライキリに斬れないものなど、あんまりない」
腰を深く落とし、素手より二回りデカい強化外骨格に合わせてサイズ調整された柄を握る
あるにはあるのか。斬れないもの。
人間離れした戦闘能力の獲得はあくまで副次的効果に過ぎなかったのだが、今となってはそっちの方がメインとして扱われている。
原材料はエーテルそのもの。特殊な精製を
その液化エーテルに全身で浸かり、十二時間かけて細胞へと定着させる行為を
多少の個人差こそあるが、手術中は絶え間なく激痛に襲われ、それでショック死する奴も多い。
たとえショック死を
──そんな命懸けの博打、大抵の奴にとって人生で一番長い半日間を越えてようやく手に入る
俺の場合は甲型。因子活性時は外見が大きく変異し、それに伴い
あくまで出力結果に
かなりのレアケースゆえ、
閑話休題。
「ぎがぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
勢い良く振りかぶられた、丸太のように肥大化した腕。
鈍い風切り音と共に迫るテレフォンパンチを、手首を掴んで受け止める。
「……ん?」
首を捻る。
脳裏に浮かんだ疑問を確かめるべく、受け止めた拳を離す。
「もう一度」
「るうぅぅううううッッ!」
より破壊力を求めてか、十指を組んで打ち下ろされるダブルスレッジハンマー。
半歩だけ身を引き、打点に合わせる形でショートアッパーをぶつける。
「があぁッッ!?」
一瞬の
「んん?」
再び首を捻り、
「
電磁石の
そのルーティンを一秒間に四回繰り返し、間合いに入ったチンピラたちの異形化した手足を断ち、瞬く間に無力化。
不調気味なブレードを気遣ってか、いつもより剣速が遅い。
ま、セーブしてさえアレだ。そりゃガタもくるわな。
…………。
そんなことより、だ。
「どうなってやがる」
疑問に意識を向けているうち、気付けばコトは終わっていた。
俺が十人。
声にならない
「
朝飯に食ったゾンビナース、昼飯のテケテケどもと大差ないレベル。下手したらそれ以下。
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