第3話、開始

その日の夜からだった。


マサコと話した直後にはまだ怖さが残っていたが、それもTver見る好きなお笑い番組の力で完全に消し飛ばしていた。


しかし、深夜1時半を回った頃に布団に入ると、先程の怖さはまた舞い戻ってきた。この時間になると、この辺りは本当に“無音”の世界になる。無音という音がしだすほどの静寂。

しかも今日は土曜日の夜だというのに、国道からは天然記念物の暴走族の爆音も一切しない。初めてあの爆音・騒音を求めていたのに。


(マーチャンなんだよ…。あんな事言うから、もう恐くて寝れないよ…)


静寂がカズシの思考をどんどんマイナスに持っていく。


―カタカタカタ……カタカタカタカタカタカタカタカタカタカ……―


小さく小さく、そう何かが小さく震えている様な音がする。

この音が、全ての”開始”だった。


(なんだこの音?…どうせ風だよね?……水曜~日のダウンタウン~♪)

カズシは布団の中に深く潜り込み、頭の中で水曜日のダウンタウンのOPのメロディーを口ずさんだ。


「水曜~日のダウンタウン~~!♪」


初めのうちは頭の中だけだったが、次第に恐怖で声を出して歌い出し、気付くと近所の人から苦情が来るのでは無いかと思う程、大きな声で歌っていた。

時計を見ると、時刻は3時25分を回っていた。


「何なんだよこの音は!ずーっと鳴りっ放しじゃねーか!」


恐怖心は怒りに変わり、音の“ぬし”である扉に向かって怒鳴った。

そう震える様な音は、ずっとここから鳴っていたのだ。

汗をビッショリとかいたカズシは、電気を付けるとためらう事無く扉を開いた。


「だから何なんだよ!…どっからするんだよ、この音は!」


扉の中は何の異変も無かった。

…しかし本当に微かな音で、カタカタカタカタと何かが鳴っている音はする。

カズシは追及を諦めて寝る事にした。


(アレだろ?何か建付けの問題で音が鳴ってるだけだろ。霊なんていねーよ!)

微かに小さく震える様な音は、終わり無く鳴っていた。

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