第2話、風

カズシの大好きなKPOPアイドルの音楽を聴いているとスマホが鳴った。

今日は土曜の夜。明日は仕事が休みだがカズシは東京へは戻らなかった。

明日はマサコが市原まで出て来るからだ。電話の相手マサコだった。


「はいはーい」

「もしもし、カズ。今何してたの?」

「あぁテレビ見てたよ。マーチャンは?」

「う~ん、さっきまでちょっと寝てた」

「ん?どうしたの?ちょっと声が元気無いなー?」

「う~ん…実はちょっと風邪引いちゃって…」

「え!?マジで!」

「ごめん…今日仕事中から熱っぽくて…今熱計ったら8度出てる…」

「マジ…そうかー…じゃー仕方ないな…明日は来れないでしょう?」

「…ごめんね」


―バタン!!!!!!―


「うわっ!!!!」

「え!?何!」


カズシの部屋、開けっ放しだった観音開きの収納スペースの扉が急に閉まった。


「どうしたの!?カズ!」

「…えっ…いやー、オレもビックリしたんだけど、オレの部屋に収納の扉あるじゃん。それが急に“バン!”って閉まったんだよ…おかしいな?風か?」


部屋の窓は少しだけ開いていた。カーテンも今、少し揺れている。

カズシは、とてもこの風で閉まるわけがないと直感的に思った。


「えっ…ちょっ…大丈夫!?」

「…大丈夫だよ、ちょっとビックリしたけど」

「そうじゃなくて……あの…扉の音も聞こえたけど、それ以外は聞こえなかった?」

「…え?それ以外?なんの事?」

「…うんうん、何でもないの!あー…なんか気のせい!」

「ちょちょちょ!何だよ!言ってよ!気になんじゃん!」

「…でもほんとに気のせいだから…その怖がらないでね…その“バン”って音がする、ホントすぐその前、直前に女の子の高い声で『ギャー!!』って声がした気がしたの…」

「え!?“バン”って音の前に?」

「…うん。でも、きっと気のせいだとおもう!だってカズには聞こえなかったんでしょ?」

「それって、マーチャンの部屋のテレビの音とかじゃ無くて?」

「…あ、テレビとかつけてないから、今…電話から聞こえたの…凄い怖がっている高い声で『ギャー!!』って…」

「えっ…オレは何も聞こえなかったよ…」

「…ねぇ、怖がらせてごめんね。…でも、ちょっと…その収納の扉開いてみたら?」

「え!?…何か居たらどうすんの!」

「でもね、一人になって怖い思いするより、今は電話つながってるし、きっと大丈夫だと思うんだけど、絶対に切らないから開けて大丈夫って確認した方がよくない?」


カズシは一人になってからの方が怖いと思い、マサコとつながっている今確認しようと、意を決して恐る恐る閉まっている扉を開いた…。

観音開きの収納の中は、いつもと同じ状態。何も異変は無かった。


「マーチャン、大丈夫だよ!別に何も変なことない!!」

「………そう。………じゃあ、良かった。……ゴメンね、何か恐い思いさせちゃって。熱でちょっとおかしくなっちゃったのかも、アタシ…」

「ホントだよ!マジであせった!明日はゆっくり休んで。…ハァー恐かった」

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