気づけなかった僕と、向き合い続けてくれた彼女の話──ASDグレーゾーンと診断されるまで

今になって思い返すと恥ずかしい過去ですが、

「ちょっとコミュ障だけど普通の人間」と思い込んでいた自分が変わったキッカケです。

何か人間関係が上手くいかない人の参考になれば…。


褒めたつもりが、傷つけていた


自分では褒めているつもりでした。

でも、その言葉が彼女を深く傷つけていたなんてことがよくありました。


何気ない一言が、知らないうちに相手を追い詰めていたようで、

「そんなつもりじゃなかった」と繰り返す自分に、彼女は何度も悲しそうな顔をしていたことを今でも思い出します。


謝れない僕と、疲れていった彼女


「プライドが高い」と、よく言われていました。

たしかに、自分の非を認めるのが苦手でした。

言われても素直に謝れず、「でも」「だって」と返してしまうことが多かったと思います。


指摘やアドバイスにも耳を傾けれませんでした。

昨日何を言われたのか覚えていないことも多く、何が大事だったのかも理解しきれませんでした。


さらに、話の中で僕はよく「なんで?」「どうして?」と問い返していました。

私としては理解したい気持ちだったのですが、それが「責められている」と感じさせてしまったのだと思います。

今になって振り返ると、無意識のうちに相手を疲弊させていたと思います。


わからないまま、悩んでいた日々


何気ない一言が原因で、何度も別れ話になったことがあります。

けれど、当時の僕には「なぜそうなったのか」が本当にわかりませんでした。


「彼女を傷つけてしまうくらいなら、別れた方がいいのではないか」

そんなふうに悩んでいたけれど、どこかで「自分なりには頑張っている」と思い、ずっと堂々巡りでした。


「あなたは自己愛性パーソナリティ障害かもしれない」と言われて


31歳の秋頃、彼女に言われました。


「あなた、自己愛性パーソナリティ障害なんじゃない?」

「私はカサンドラ症候群になっているかもしれない」


その言葉に、最初は驚きました。

でも、ずっと苦しんでいたのは彼女の方だったのだと思う。

これ以上放っておいてはいけないと感じ、思い切って発達検査を受けに行くことにしました。


WAIS-Ⅳの結果とASDグレーゾーン


検査では「WAIS-Ⅳ(ウェイス・フォー)」という知能テストを受けた。

全体のIQは93で、平均(100)より少し低め。


言語理解は平均的で、図形や推論は少し得意。

でも、処理速度や作動記憶が特に低く、「能力の凹凸が大きい」と言われた。


医師からは、はっきりとした発達障害とは診断されなかったが、

「ASD(自閉スペクトラム症)のグレーゾーンに当たる」と伝えられた。


つまり、社会生活はこなせるが、人間関係で誤解を生みやすい特性があるということだった。


結果

FSIQ(全体知能):93

やや低め(平均は100)。知能全体の目安。一般的な日常生活には問題ないレベル。

VCI(言語理解):98

平均(100)に近い。言葉の理解力、語彙力、抽象的思考など。

PRI(知覚推理):105

平均より少し高い。図形や空間認識、論理的な推論能力など。

WMI(作動記憶):88

やや低め。聞いた情報を頭に一時的に保持し処理する力。

PSI(処理速度):82

低め。視覚情報を素早く処理する能力。ASD・ADHD傾向で低く出やすい。


高低差が激しい(≒発達障害)とそのギャップにより日常生活に支障をきたすことがあるとのことでした。


診断がすべてを変えたわけではないけれど


検査の結果を共有してから、少しずつ僕たちの関係は変わっていきました。


「相手を理解することの難しさ」を前提にした会話。

「察してくれない」に怒るのではなく、「伝える努力」と「受け止める努力」。


そうした変化が少しずつ積み重なって、今に繋がっていると思います。


今、感謝していること


今思えば、彼女はずっと孤独だったと思います。

何度も何度も伝えてくれていたのに、僕にはそれが届いていませんでした。

それでも彼女は、最後まで向き合おうとしてくれた。


そのおかげで、僕は自分の特性を知り、「わからないままにしない」という姿勢を持つことができました。


診断がすべてを解決してくれたわけではないですが、

知ることでやっとスタート地点に立てたと思っています。

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