神々の自由研究
森野理世
教室にて
「今度の自由研究、順調?」
そう声をかけてきたのは、クラスメイトの女の子だ。彼女の作る宇宙は発表会で優秀賞を取るほどの完成度で──つまり優等生だ。
「それがさ、最近、人間が増えすぎちゃって……もうすぐ百億匹になるんだ」
僕の作った宇宙は、いつもこの問題にぶつかる。そのたび氷河期を起こしたり、大洪水を流したりして人間を減らしてきた。
「また全滅させるの? 君、それでもう五回も文明を壊してるじゃない」
確かに、僕は人間の間引きが下手だ。ほかの生き物まで絶滅させてしまう。
「うまく人間だけ減らす方法、ないかな」
そう相談すると、彼女は少し笑って言った。
「それなら、いい毒があるよ」
「毒? それなら何度か試してる。ペスト菌とか天然痘とか」
「ううん。もっといい毒。君にも分けてあげる──」
僕はさっそく、その毒を地球に振りまいた。
すると、人間だけがみるみる殺し合いを始め、最終的に百匹ほどまで減った。他の生き物にはほとんど影響がない。完璧だ。
──五千年後。
「自由研究、どうなった?」
久しぶりに彼女が尋ねてきた。
「おかげで、自然豊かな美しい惑星になったよ。あの毒、すごいね。何ていう毒なの?」
「あれはね、『嘘をつけなくする』毒なんだよ」
神々の自由研究 森野理世 @morinomori
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