第32話 一応僕、彼女待ちなんだが?
◇ ◇
「で、なんで僕の彼女は赤面なんですかね?」
石宮さんの連絡で合流した僕達なのだが、手に持つ緑色の紙袋と対になる真っ赤な顔をしている僕の彼女。
明らかになにかをされたんだろうが、下着選びでそんなに赤くなることがあるだろうか?
姪由良さんに睨みを向けてやれば、コテンと傾げた首だけが返ってくる。
「ちょっとばかし取り繕ったから?」
「……強引にしただろ?」
「まぁちょっとばかし?」
「やめてもろて?」
「でも良いもの買えたと思うよ」
「人の尊厳は守ってやれ」
冷淡な言葉とはべつに、「よーしよしよし」なんて言葉とともに石宮さんの背中を撫でてやる。
そうすればやっと落ち着いたようで、なにも言わずに僕の右手が拘束された。
「……あんたらのほうがよっぽど私の尊厳を傷つけてるけどね」
「なんでだよ。こちとらカップルぞ」
「……クソッ。もうちょっと長引かせればよかった……」
「おいなんか言ったか?」
「いえなんも」
ふいっと顔を背けた姪由良さんは、もう行く場所がないのだろう。
車を駐車した入口に向かって歩みを進め始めた。
「次どこ行くのか知んないけど、用事ないなら行こ。ここにいても迷惑だし、澄香と一緒に寝る用の枕も見たいし」
「ん?あーそゆこと?今日姪由良さんの家泊まるのか?」
「……え?泊まらないよ……?」
顔の赤みが無くなったかと思えば、石宮さんの顔に現れるのは心の底からの疑問だった。
傾げた首を見せつけあっていれば、「そういえば言ってなかったね?」なんて言葉が足を止めた姪由良さんから聞こえてくる。
「今日あんたの家泊まるから」
「……は?」
「……え?」
僕と石宮さんの言葉が重なる。
そして会話に入れないでいた宏樹は僕の隣で魚のように口をパクパク。
揃いも揃ってバカ面を披露する僕達3人だが、当然と言えば当然だろう?
だってなんの前触れもなく僕の家に泊まる……というか、
「一応僕、彼女持ちだが?」
「だから彼女が居る今日泊まるんでしょ。どうせ澄香も泊まるでしょ?」
「え、あ、まぁ泊まるけど……」
「よしじゃあそゆことでよろしく〜」
「えぇ……」
淡々と言葉を吐き捨てた姪由良さんは、止めていた足を動かし始める。
同じように僕も足を動かすが、隣の彼女の足がままならずに介護をする羽目に。
姪由良さんとの交友関係もかなり短いが、ここまで強引にわがままを言うことはなかった。
あまり甘えたがらない息子を抱える親の気持ちになれば嬉しくて仕方ないんだろうが……一応僕達は同学年の人間。
困惑が勝る中、誰も否定しない10分間が続いたことで時効を迎えてしまった。
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