ほんの少しの間だけ
「……というのが彼のノート、遺言さ」
「おい、こんな駄文が俺の冥土の土産かよ」
「そうだ。1人の人間の生きた記録。コイツが唯一この世に残した文献さ……なぁ……コイツはこの世に一冊ノートを残すために生まれたのか?」
「ん……? 何言い出すんだ? まあ……最後に残したのがそれだから……そうなんじゃないか?」
「んなわけないだろ! このノートには夢は昆虫学者と書いてある。その夢は……お前達が潰したんだろ」
「ははっ。確かにな、俺は潰しすぎちまったよ……ソイツも他の色んな奴らも」
「それでお前もこんな状態さ。自業自得だろ」
「なあ、1つ聞いていいか?」
「ん?」
「お前ならさ。もしこの世にたった1つだけ何か生きた証を残せるなら一体何を残したい?」
砂上の唄 睡蓮麗雛 @suirenreisu
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