第6話 同じ思いを

「あー今日も遅くなるから適当にご飯食べといてね」

「、うん」

「じゃあ行ってくるから」

「、、、うん」

また今日も一人で夜を過ごしてる

普通の子だったら今頃お母さんと

夜ご飯でも食べてるのかな。

高校生にもなって親とご飯食べたいとか

私が変なんだと言い聞かせるけど

お母さんが何の仕事をしているのか

私は知らないし聞かない

もし聞いたとして、もし知ったとしても

私が得られるものは

ただきっと頭のメモリに不愉快な記憶をまた刻んだだけ

きっと私が知っても得は無いだろう。

床に並べられた黒いゴミ袋からコバエがチラチラと移る

私がゴミを捨てたとしてもお母さんは何も言わない

もっとゴミを増やしたとしても多分何も言わない

何をしたらお母さんはこっちを見てくれるのかな

短めの廊下をギギッギギッと鳴らしながら歩く

目に映るのはお母さんの部屋

お母さんの部屋って、どうなってるんだろ

お母さんの部屋なんて入ったことも見たこともない

お母さんに怒られたことも褒められたことも

私の人生で1度もないと思う。

怒られるってことはこっちを見てるってこと

ドアノブに手をかけて捻ってみる

私の部屋と同じ引き戸かと思ったら

《ギィィ》「うわっ!!」

思いの外勢いよく前に倒れ込んでしまった

よろけて床に目をやる

床には花の文字があった

「は、なにこれ」

そのまま周りに目をやると

壁も床も花の文字で埋められていた

「あ、え、、」

花花花、全て花の字だった

なんで花?死とか、そんな感じの怖いのじゃないんだ

それとお母さんの部屋はものが少なかった

壁の角には黒と赤のサインペン

多分これで文字を書いたんだろうな

他には足を折り畳んで収納出来るタイプの机、

他には小さめの棚だけの部屋

棚に入っている本は全て天国や死後の世界について

それにまつわる話の本、

天国に行くには、黄泉の世界とはどんな場所なのか

他には、「完全自殺」の本

「何してんの?」

後ろを振り返るとお母さんの顔があった

「あ、え、お母さん、あの」

《バシンッ》

「ねぇ、何してんの?!

そんな悪いことばっかしてたら

お空の世界に行けないじゃない!!

あんたがあの人を連れて行ったんだから!

また私を地の世界に連れてこうとしてんでしょ?!

あぁまた私のこと荒らして、何がしたいの?!

ねぇ!あなたのことは私が1番分かってんだから!」

「お、お母さん、待って待ってよ、」

「あぁもう、、、予定が狂ったわ、

もう今からするしかないの、私の領域に入った

あんたが悪いんだからね」

お母さんの手が私の顎を強く掴んだ

「あ゛!!!おがぁさん!!ぃたい!!」

お母さんの手を剥がそうと抵抗しようとも

お母さんは見た目よりも力が強くて何も出来なかった

「あ゛!!ガッ」

「あぁ、もう動かないでよね」

お母さんの手に握られたのはサバイバルナイフだった

「あ゛!やめ゛!!ぁ」口の中に刃が当たる

そのままお母さんの手で口の中を切り裂かれた

その後は、もう何もわかんなかった

私はお母さんの部屋の《意味》を理解してしまった気がする

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