第4話 何かの匂い

何かが燃える匂い。焦げ臭いような…これは木の枝や葉っぱが燃える匂いかもしれない。

誰かが燃やしているんだろうか?

僕らがいる山道の周りは木や竹が生い茂っている。

辺りを見回して、木々の隙間から木々の向こう側の空を確認する。

遠くで煙が立っているわけではなさそうだ…

近くで何かが燃えはじめたんだ。

僕の直感がそういう。

こんなところで物を燃やす人間がいるだろうか?

僕は吠えた。

「急にどうしたんだ?ジョーさん」

僕は飼い主のズボンの裾を軽く噛んで引っ張った。

僕は匂いのほうへ向かおうとすると、

飼い主が慌ててリードを強く掴んだのがわかった。

「とりあえずタケノコ俺が持つよ」

タケノコをくれる人が飼い主にタケノコを渡すように促す。

飼い主がタケノコを手放したのを確認して僕は足を早めた。

進行方向は変わらない。先ほど車を停めたほうだ。

飼い主も慌てて追いかけてくる。

匂いに近づいていくと僕が大嫌いな匂いが混じっているのに気づく。

タバコの匂いだ。

誰かがタバコを捨てたんだ。

「焦げ臭い?」

飼い主も気づいたようだ。

「あっ」

まだ小さいが木々の隙間の地面に火がついているのが見えた。

飼い主が慌てて靴で踏み消そうとするが上手くいかない。

僕は軽く吠えてから飼い主が持っているスコップを鼻の先で指し示した。

これで土をかければ消えるんじゃないか、そう思ったからだ。

「そうか、これを使って」

飼い主はまわりの落ち葉をかき分けて土を掘って火にかけた。

かけた瞬間、火が強くなったように見えた。

失敗かと思ったが飼い主は諦めずにどんどん土をかけた。

そうだ、埋めてしまえばいいんだ。

土を覆いかぶせて火は見えなくなった。

良かった、うまくいった。

そう思ってすぐに、タケノコをくれる人が追いついてきた。

怪我をしてないほうの手でタケノコの入った袋を2つ、重そうに持っている。

「悪い悪い大丈夫か?」

飼い主が慌てた様子でいってタケノコの入った袋を受け取ろうとする。

それを無視してタケノコをくれる人はタケノコの入った袋を地面に置いた。

「水持ってくるから、見張っててくれ」

タケノコをくれた人はそういって車を停めたほうへ走っていった。

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